2019年12月23日月曜日

経営におけるPurpose重視思考を研究してみました

{このテーマの目的・ねらい}
目的:
 経営におけるPurpose探求論を少し解析してみました。
 ここでも「目的・ねらい」の考え方は有効である、
  ということを知っていただきます。 
ねらい:
 僭越ながら、ビジネス界で上を目指す方は、
 Purpose論を研究なさってください。
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ある方から、
「こういうセミナがあるようですよ。
上野さんの言っておられる「目的重視思考」そのものではないですか」
というメールをいただきました。


そのセミナ案内を見てみました。
「Purpose」の探求というテーマのようです。


以前、
「当社の『目的・ねらい』を英語で言うと何になるのだろう?」
と検討したことがあり、
「Purposeが一番近いな」という結論だったことを思い出しました。


そのセミナ案内に載っていました2019年3月号の
ダイヤモンド ハーバード・ビジネス・レビュの
Purposeに関する特集記事を読んでみました。


その特集では、
Purposeは企業経営の場合にしか使っていませんでした。


概ねこういうことです。
Purposeは、
企業のミッション、ビジョン、バリューを補完するコンセプトである
(同上特集の一つの著者佐宗邦威氏による)。

経営目標概念の定義と目的

 

定義

目的

ミッション

組織の存在意義を定める

求心力を高める

 

ビジョン

組織が目指す理想の状態を定める

人を動かす

バリュー

 

組織の構成員が共有する価値観を定める

組織文化をつくる

Purposeはこれらに並ぶものではなく、ミッションの内容に関わるものである。
ミッションには以下の2類型がある。


     ミッションの2類型

 

視点

表現型

パーパス型

ミッション

新しいタイプのミッション

「自分たちは社会に何を働きかけたいのか」を示し、外側にある終点に重心が置かれている。

「我々は○○を欲す」と社会変革を志す。

DO型ミッションとも言える。

アイデンティティ型ミッション

従来型ミッション

「自分たちは社会の中でどうありたいのか」を示し、内側に重心が置かれている。

「我々は○○であり続けるべし」と社会の中で文化の創造や保全を目指す。

BE型ミッションとも言える。


ミッションの2類型の事例は、前掲特集等からするとこういうものです。
日本の従来型のミッションの場合は、そもそもミッションとは言わず、
経営理念とかと称しています。


        ミッションの2類型の例

 

企業名

内容

パーパス型

ミッション

 

クックパッド

毎日の料理を楽しみにする。
ネスレ

生活の質を高め、さらに健康な未来づくりに貢献します。


テスラ

持続可能なエネルギーへのシフトを世界中で加速させる。

アイデンティティ型ミッション

 

パナソニック
(「綱領」と称しています)

産業人たるの本分に徹し社会生活の改善と向上を図り世界文化の進展に寄与せんことを期す。



オムロン
(「企業理念」と称しています)

社会の変化をいち早く捉え、事業を通じて社会的課題を解決してゆくことで、よりよい社会、人が輝く豊かな社会に貢献していきます


 パーパス型ミッションが重視されるようになってきた背景は、
佐宗氏によるとこうです。
ビジネスのあり方が変わってきたということです。


21世紀型の組織は、「呼び込み」を拠り所とする。
グーグルやフェイスブックのような

インターネット上のプラットフォーマーが、
代表的な存在である。
世の中のニーズに即座に適応して
新しい製品やサービスを生み出し続けるために、
組織の内と外を隔てる障壁は低く、
組織外への求心力を基点とした持続的な知識創造が
価値創造の鍵を握っている。
それを明示するのがパーパス型ミッションである。

それでは、ミッション、ビジョン、バリューと、
経営のWhy,What,Howの関係は

どうなっているのでしょうか。

サイモン・シネックの「Whyから始めよ」によると(佐宗説)、
 Why:経営理念などを通じて表現される

     組織の存在意義
 What:組織の価値創造を規定する戦略や

      コンセプト
 How:ファイナンス、マーケティング、デザイン

     など、組織の価値創造を実現する手段
念のため、自分で「Whyから始めよ」に当たってみました
(著者は米国のサイモンシネック氏。原著は2009年刊)。


そうしたらこういうことでした。
 Why:(簡単に言うと)目的、大義、理念
             (自分たちが目指すこと)
 How:自分がしていることの手法(その特徴)
 What:自社が扱っている製品やサービス


WhatやHowは、みな自分たちのことはよく分かっている、
しかし他人を感激させ、
やる気を起こさせる(インスパイアする)のはWhyだ、
だからまずWhyを明らかにしなさい、という主張です。


こういうフレーズが書かれていました。
 Whyを明確にする
 Howを訓練する(「徹底する」の意味)
 終始一貫したWhatを貫く


このWhyについては、わが社の提示している「価値目標思考」が
何かの検討を行う時に「まず『目的・ねらい』を明らかにせよ」
と主張しているのと同じことです。


佐宗氏はこう言っています。


  佐宗説によるWhy、What、Howの変化

 


20世紀型組織の場合


21世紀型組織の場合


Why


ミッション、バリュー


ミッション、ビジョン


What


ビジョン


創発的戦略


How


オペレーション改善


バリュー



これの説明はされていますが、私には理解不能な面もあります。
21世紀型の場合のWhyが、
ミッションとビジョンであるという点は納得できます。
当社の提示している「価値目標思考」では、
Whyを以下のように「目的」と「ねらい」に分けています。

これが、
価値目標思考の他の手法と比較してのWhyの最大の特色です。


 「価値目標思考」における目的とねらい
                               


 


定義




目的


対象案件の中で実現しようとする成果目標


1)研修で技術を習得する。

2)要求されたシステムを開発する。


ねらい


目的の達成後に実現を期待する成果目標


1)習得した技術を使って効果(=価値)を実現する。

2)開発されたシステムを使って効果(=価値)を実現する。



佐宗氏の言われる21世紀型組織の場合の
ミッションは「目的」(直接実現しようとしている)であり
ビジョンが「ねらい」(目指すもの)である、ということになるのです。



そう考えると、ミッションとビジョンがよく理解できるようになります。

因みに、私が考える経営のWhy、What、Howはこうなります



経営のWhy、What、How(上野方式)

Why

ミッション(経営目的)

ビジョン(経営のねらい=価値)

What

定款で定める事業内容

 

How

バリュー(共有すべき価値観)

 


以上で、私としましては、
Purpose理論の全解明ができた気になりました。



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