【このテーマの目的・ねらい】
目的:
日本軍の敗因を招いた日本人の思考法の弱点が、
今後の日本の没落停止の阻害要因になっているのかを
分析します。
ねらい:
決して楽観視はできません。
ラグビーWC戦のように、日本中が熱くなって
日本の没落停止に取り組まなければなりません。
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新しいカバー
元のカバー
ご存じ「失敗の本質」は、野中郁次郎先生が編著をされた
日本軍の失敗を分析している不朽の名著です。
今回、再度読んでみました。
再読の目的は、別項のようにイギリス人、アメリカ人に
日本の国民性や国の施策を評価されているのですが、
それはどこから来ているのかを
あらためて振り返ってみる材料にしようということです。
当書は、日本軍の以下の敗戦原因を分析しています。
ノモンハン事件
ミッドウェー作戦
ガダルカナル作戦
インパール作戦
レイテ海戦
沖縄戦
その結果の共通項を以下のように整理されています。
(順番や表現は上野の編集です)
1.作戦目的があいまいで多義性を持っていた
2.基本戦略が成功例を受けた前例踏襲型である
陸軍は白兵銃剣主義(戦車軽視)
海軍は艦隊決戦主義(空力軽視)
3.意思決定方式が曖昧である
トップが明確に指示をせず、現場に委任している面がある。
4.戦略策定の方法論は科学的合理主義ではなく
精神論重視である
5.人事評価は年功序列・プロセスや努力重視型である
6.技術体系は1点豪華主義でバランスに欠ける
上野注:資源小国としては
重点志向をせざるをえなかったでしょう。
この1~5は、上野が「価値目標思考のすすめ」で提起した
日本人の伝統的思考法に準拠しているものです。
こういうことです。
日本人は、長い農耕生活と他国との孤立性によって、
以下のような思考法を基本としている(基本としていた)。
1)ほとんどの日常生活が目的自明となって
あらためて目的を考えない習慣ができた。
2)農耕生活は土地に留まり隣人・部落との関係が重要で、
和重視・前例重視の「前例・みんな主義」となった。
右の方にそのことを表す多くの言葉を示しています。
あうんの呼吸、あつれきを避ける、などです。
この点から、日本軍の敗因を見るとこうなっています。
1.作戦目的があいまいで多義性を持っていた
日頃、目的が自明ですから、
目的を設定することが苦手です。
2.基本戦略が成功例を受けた前例踏襲型である
前例・みんな主義の前例重視です。
3.意思決定方式が曖昧である
和を重んずる結果、
その場の雰囲気の全員一致で決定します。
本書の副題に
「なぜ日本人は空気に左右されるのか?」とあります。
この3.項がその答えです。
4.戦略策定の方法論は科学的合理主義ではなく
精神論重視である
意思決定方式が議論を重ねて結論を導き出すというよりは、
和の重視でものごとが決められますので、
科学的合理主義とは遠くなります。
5.人事評価は年功序列・プロセス努力重視型である
この方式が和を重んずることにつながります。
ギスギス功を焦ったりしないのです。
つまり、日本軍の敗因は基をたどれば、その多くは、
日本の伝統的思考法のせいだったのです。
それでは、両外人が評価をしている日本または日本人の課題は
この伝統的思考法とどういう関係にあるのでしょうか?
「日本への警告」で挙げられている課題は以下のとおりです。
1)女性の活躍の場を広げる
2)外国人に対する差別意識をなくす
3)日本の学校を外国人に開放する
4)子や孫に中国語を学ばせよ
5)昔ながらの高品質を武器にせよ
6)マニュアル主義を見直せ
7)農業を強化せよ
8)アジアから押し寄せる観光客に勝機を見出せ
9)未来を読むために歴史を学べ
10)世界を旅し変化を肌で感じよ
2)3)は、
先祖伝来の土地に留まる村社会思考が関係しています。
6)も「お上のお達しには逆らわない」という
「お上」思考が関係しているのかもしれません。
それ以外は、伝統的思考法とは関係がないようです。
現実・将来を見据えた対応をしなさい、
という前向きのアドバイスです。
こちらのウェートの方が高くなっています。
「日本人の勝算」は国としての施策の提言で、
直接、日本人の思考特性とは関係ないようです。
最低賃金を上げる
企業規模を大きくする
輸出を増やす
人材育成トレーニングを強制する
強いて言えば、
企業規模を大きくすること(「一国一条の主」意識が壁)
と人材育成の強制
(「仲間意識」で「分かっているだろうに」と考えていること)
が伝統的思考法と関係しているのかもしれません。
ということは、
日本軍の敗因を招いた日本人の伝統的思考法は、
今後の日本の発展のための大きな制約にはなっていない、
という、ある面で嬉しいことになるのですが、
本当にそう考えていいのでしょうか?
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