【このテーマの目的・ねらい】
目的:
世界を熟知した著者の日本への提言を受けとめます。
中国を重視せよ、という点が最大の特筆事項です。
ねらい:
何とか日本の没落を阻止したいですね。
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著者のジム・ロジャーズさんは、たいへんな方です。
世界的投資家で大富豪なだけでなく、自動車・バイクで何度も
世界一周をされています。
そうして、現地で得た感覚・情報に基づいて投資して
大成功されているのです。
その方が日本に対する警告を書いてくださっています。
その要旨は以下のとおりです。
1.日本がダメな点
1)子どもを作らない
2)移民を積極的に受け入れない
3)後世に残る巨大な財政赤字
4)日銀の金融政策
この内容自体は広く取りあげられていることです。
それを著者の見識で力強く解説しています。
2.日本人が今克服すべき課題
1)女性の活躍の場を広げる
2)外国人に対する差別意識をなくす
3)日本の学校を外国人に開放する
4)子や孫に中国語を学ばせよ
5)昔ながらの高品質を武器にせよ
6)マニュアル主義を見直せ
7)農業を強化せよ
8)アジアから押し寄せる観光客に勝機を見出せ
9)未来を読むために歴史を学べ
10)世界を旅し変化を肌で感じよ
別項の「日本人の勝算」では、
日本が没落しないための基本対策として
以下を挙げていました。
最低賃金を上げる
企業規模を大きくする
輸出を増やす
人材育成トレーニングを企業に強制する
これは国の産業・経済施策として実施すべきものです。
これに対してこちらの「警告」は、概ね
より具体的な、国民一人ひとりに対する提言になっています。
どちらもせっかくのご提言です。
真摯に受け止めなければなりませんね。
上記の10項目の中から特別なご意見をご紹介します。
3)日本の学校を外国人に開放する
日本の学校は少子化で余ってきている。
インドや韓国、中国は大学が足りない。
それなら、まずは大学が留学生受け入れを積極的に行う。
そのため、英語による授業を提供する。
世界各国の多くの大学で
受験資格や入学資格として認められている「国際バカロレア」
のプログラムを実施するなど、教科内容も刷新する。
小学校のクラスに外国人が多いという状況になれば、
日本人の国際感覚も変わってくるはずである。
4)子や孫に中国語を学ばせよ
いずれ世界の言葉は、英語、中国語、スペイン語に収れんする。
中国語が生き残るのは間違いない。
著者は娘に中国語を学ばせるために
2007年からシンガポールに居を構えている。
日本語はいずれ誰も話さなくなるので
日本の子供は第2言語を学ばせるべきである。
6)マニュアル主義を見直せ
マニュアル主義はアメリカの特技で
日本はそれができなくてダメというのが通説で意外なご意見です。
この背景は、こういうことでした。
1998年末から2001年末にかけての世界旅行の途上で
富士山の近くでレストランに入ったとき
「ライスだけ食べたい」と注文すると、
「メニューにないものはお出しできません」と断られた。
仕方なくたくさんのマグロの寿司を注文して
マグロをどけて茶碗に入れて食べることにした。
ウェイトレスに「見ろ、ライスはあるじゃないか」と言ってみたが、
彼女は「ライスはメニューにありません」と繰り返しただけだった。
私は、この問題は
そのウェートレスの「アタマ」の問題だと思います。
現場の1作業員としては
メニューにないものは対応できないのです。
しかし、お客様が望んでいるということであれば、
権限のある店長に相談しようとすればよかったのです。
そうしなかったのは、その彼女が「バカ」なせいであって、
日本人がマニュアル主義なのではないでしょう。
と、思いましたが、よく考えてみると、
「今の学校教育の弊害かもしれない」と思いました。
日本の学校教育は、「正解を覚える」教育偏重で、
判断力を養成する教育をあまりしていませんでした。
「マニュアル主義」は当らないにしても、
画一性、融通性不足、という点は当っているかもしれません。
著者も、日本の伝統旅館がマニュアルなしでも、
素晴らしいサービスを提供していることは認めています。
こう書かれています。
1980年代の日本は違った。
当時の日本人はできるかできないかにかかわらず、
何かを頼むと元気よく「はい!」と言ってくれたものだ。
営業時間が多少過ぎても一所懸命に対応してくれる
「ファーストクラス」の国だった。
(中略)
日本では、電車は時間どおりに来るし、
いつでもコンビニエンスストアには生活に必要な商品が並んでいる。
戦後の日本人が切り開いた時代とは全く違い、
すべてがオートパイロットになっているわけだ。
こうした便利な環境も
日本人から判断力を失わせる原因になっているのでは
ないだろうか。
なるほど、そういう面もあるかもしれません。
3.アメリカ、中国、朝鮮半島、ロシアはどうなる
1)トランプの米中貿易戦争の政策は自らの首を絞めるものだ。
2)貿易戦争は本当の戦争につながる可能性もある。
3)中国経済は資本主義であり、
優秀な国民が大きな成果を上げている。
4)自分は1988年にバイクで中国を横断したときに
中国の可能性を自らの肌で感じ初めての投資をした。
5)日本が10年後に中国から支配されるといったことは
考えにくいが、
覇権国家による支配は歴史における事実として
認識しておくべきだ(上野:極めて客観的コメントです!)
6)北朝鮮の経済はそれほど落ち込んでおらず活気に溢れている。
7)金正恩はスキーリゾートを作っている。
8)南北統一はいずれ実現する。
9)その際、大きなビジネスチャンスがある(例示あり)。
10)ロシアは米国の経済制裁のおかげで農業が発展している。
11)プーチンが力を入れるシベリア開発は魅力的である。
著者の意見は純粋経済人としての見解です。
たとえば、中国は国民の数が大きく国民も情熱を持っている、
したがって中国は覇権国家として発展するだろう、
というのです。
世界を旅しているのに、
チベットやウィグルのことを知らないのでしょうか?
政治のことは知らん、というスタンスなのでしょうか。
もう一つの例はこれです。
日本の防衛予算は何の生産的価値も生み出さない、無駄だ、
削って国の借金を減らせ、と仰います。
1980年頃にバイクで世界一周したときに、
「共産主義と資本主義の戦いは終わったが、
これからは宗教や民族主義に基づく戦いが始まる」
と予想しそのとおりになっているにも拘らず、です。
その戦いは武器なしで行う
と考えているのではないでしょうが。
いずれにしても、経済人としての見方は卓越で、
著者が大成功していることでその点は証明されます。
見方の基本原理はこういうことのようです。
人間の本性からして常に上の生活を目指す。
そのため、
小さいものは大きくなる
ダメなものはよくなる
そうなるものかどうかの判断は目利きである。
目利きを得るために歴史と他国を学ぶ必要がある。
私は著者の提言をこう受けとめます。
日本が活気のない国になったのは、
あるレベルの生活ができるようになり、
多くの国民が「頑張らなく」なったからです。
これは、日本だけのことではなく、
イギリス、ヨーロッパ等「先進国」共通です。
アメリカは一部の開拓者魂のある人たちが
何とか國を引っ張っていっています。
意欲ある新興国がこれから発展するのです。
以下のような日本独特のマイナス要因もありますので、
それは何とか緩和または克服したいものです。
事なかれ・穏便主義
付和雷同主義
漸進主義
4.家族とお金を守るために私が学んだ9つの成功法則
著者は、こういうおまけもつけてくださっています。
これも非常に役立つ人生訓ですね。
人生を成功させるために「これをしなさい」という単純な答えは
存在しない。
しかし「やってはいけない」ということであれば、
いくつか思い浮かぶため、紹介したい。
として、以下を開陳されています。
1)人の言うとおりにしてはいけない
上野注:成功者の共通言です。
1970年頃、当時の石油は1バレルたったの3ドルで
だれも見向きもしなかった。
皆が「原油に投資するなんて最低だ!」と言っている頃に
私は積極的に原油に投資をした。
当時の原油市場を私が調べた限り、
原油の需要に対して供給がまったくおいついていなかった。
だから価格が上がることは必然だったのだ。
原油価格は高騰し大きな利益をえた。
その後、原油市場の過熱を感じ原油を売って
またしても大きな利益を得ることができた。
2)故郷にとどまるな
結婚する前に若い頃は少なくとも2年間は自国を離れて
自分自身や世界について学ぶべきと私は考える。
3)結婚・出産を急ぐな
自分のことが分かっていない時に結婚するのは愚行である。
自分は娘には28歳まで結婚するなと言っている。
自分自身が子供を作ったのは60歳である。
しかし、子供によって人生の喜びが変わった。
4)自分の能力を過信するな
得手不得手・限界を知りなさい。
5)情熱を無視するな
お金持ちになるために最も大切な資質は情熱だ。
何歳になっても必ず突破口は見つかる。
どんなことがあっても情熱を失わすに続ければ、
やがて多くの利益を得ることができるだろう。
6)お金のことを気にするな
お金のために働くな。
好きなことを仕事にできれば、毎日が幸せである。
打ち込んで仕事をしていればお金は後から付いてくる。
7)子どもの情熱も尊重せよ
子どもを親の考えで引っ張るな。
8)お金について学ぶことを怠るな
「お金のことをきにするな」と言ったが、
お金のありがたみを分かっていなければならない。
自分の子供には贅沢させずそういう教育をしている。
9)何のために稼ぐのかを忘れるな、
目的のない人生は無意味である。
この後、「これからの時代に勝つ投資」として
「情報源は今も新聞と年次報告書」
「情報を疑う」
「安全という言葉を信じない」
「好機は危機に潜む」
などを解説されています。
ご関心のある方は、是非本書をご覧ください。
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