2021年9月5日日曜日

「『ネコ型』人間の時代」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「イヌ型人間」「ネコ型人間」の類型を知っていただきます。
 これからの社会をリードするのは「ネコ型人間」であるという
 主張を理解いただきます。
ねらい:
 日本としては、イヌ型人間をどうやってネコ型人間に転換するか
 が課題です。
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ある方に勧められて太田肇同志社大学教授著「『ネコ型』人間の時代」
を読んでみました。

基本的な主張点は、これまで多くの論者が指摘していることですが、
それをイヌとネコの類比で説明されているのが、
たいへんユニークでかつ分かりやすくなっています。

大きく変化していくこれからの社会をリードするのは、
ネコ型人間だというのです。

「はじめに」はこういう書き出しです。
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5年ほど前(2013年)のことだった。
秋に紅葉が深まってきたころ、夜の11時過ぎ、
そろそろ寝ようとしていたら突然、
「ギャー」という断末魔のような悲鳴が聞こえてきた。

急いで庭に飛び出すと、
何か小さな物体がイヌ小屋の前に転がっている。
おそるおそる懐中電灯で照らしてみると、
手のひらに乗るほどの子ネコが鼻から血を流し、
仰向けにグッタリと横たわっているではないか。
そばでは愛犬のモモ(雌の柴犬)が牙をむき、うなり声をあげている。
私はあわててモモを子ネコから引き離し、
子ネコを片手でつかんで家の中に入れた。

よく見ると、その子ネコは
数日前から母ネコにつれられて近所をうろついていた、
3匹の子ネコのうちの1匹だったことがわかった。
夜の道で親からはぐれてわが家の庭に迷い込んだところを、
庭の主であるモモに襲われたようだ。

私は身動き一つしない子ネコの姿を目にしたとき、
てっきりかみ殺されたと思い、どう処理しようかと思案していた。
ところがよく見ると、かすかにお腹が動いている。
おそらく助からないだろうとは思いながら、
次男が部屋に連れていって一緒に寝ることになった。
気の重い一夜が明けた朝、次男が起きてきて
興奮ぎみに「ネコが部屋中を走り回っている!」と言う。

子ネコは生後1か月くらいの雄で、雑種だがグレーの長い毛に覆われ、
クリっとしたかわいい目をしている。
そうとう空腹だったのか、イヌのエサをやったらペロリと平らげた。
私は驚きと安堵の入り交じった気持ちで、
妻と次男に「どうする?」と聞くと、
即座に「飼いたい」という一言が返ってきた。

その愛らしさに加え、せっかく家に来てくれたのに、
危ない目に遭わせた責任もある。
私は迷うことなく二人の希望を受け入れた。
妻はさっそく、その特徴的な目にちなんで「クリ」と名づけた。

その日から、クリは家族の一員となり、
私たちと一緒に暮らす生活がはじまった。
イヌを10年あまり飼っていたので、
ネコだって同じように育てればよい。
しかもイヌより小さいし、
散歩に連れていく手間もかからないから楽だ。
そう安易に考えていた。

それが甘かった。
抱っこしてやろうとしたら、いきなり小さな爪でひっかいてきた。
エサの与え方からスキンシップやしつけの方法まで、
イヌにしてきたことがネコには全く通用しないのだ。

「イヌは人につき、ネコは家につく」という。
それだけネコは人に従属しないのである。
気が乗らなければ、飼い主だって平気で無視する。
(中略)
イヌとネコの両方と暮らすうちに、
それぞれの特徴がだんだんとはっきりしてきた。
そしてイヌやネコとのつき合い方が、
人間の世界、たとえば親と子、教師と生徒、上司と部下、
会社と社員の関係に
そのまま当てはまるのではないかと思うようになった。
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これが、本書著述の発端だったのです。
本書では、多数の文献や事例を紹介しながら
分かりやすく読みやすい説明がされています。
以下、その主張点を要約しました。

イヌの特性

    「主人」を意識する。

    飼い主に従順で裏切らない。

    集団的行動を好む。

イヌ型人間

    組織の意向・利益を重視しそれに従う。(「忖度」もあり)

    そのためには「不正」も行う。

    主体的な判断・行動を避ける。

    周囲の期待に応えようと自分を追い込む。

    本心では納得していなくても納得したフリをする。


これからは通用しないイヌ型人間人事管理の5点セット
(これは卓見です)

1.大部屋主義

2.ホウレンソウ

3.減点主義

4.情意考課

5.会社主導の異動・転勤

 ネコの特性

    「主人」は意識しない。

    大事にしてくれる相手を評価する。

    複数の集団に多元的に帰属する。

    気ままで人の言うことを聞かない。

    自分以外(親猫、仲間、人間)の行動を見て学ぶ。

    エサは自力でとってくるし、排泄の後始末もする。

 ネコ型人間

【マイペース型個人主義】

    自発的な行動をする。

    自分の好きなことに積極的に取り組む。

    自分の能力・個性が活かせる道を選択する。

・直感がすぐれている。

 日本でイヌ型が強かった理由

    他国との交流がない世界での競争はゼロサムである。

    誰かが勝てば誰かが負ける。そこで統制が必要になる。

    縛りやルールが必要になる。

    長年かけてそういう社会になった。

    工業社会の物づくりは従順な統制を必要とした。

 AIの時代

    AI全盛になると定型的作業は人間がしなくなる。

    人間に残される仕事は「遊び」だけになる。

    それはネコ型人間の時代である。

イヌ型をネコ型に変える「ネコ転」の方法

    相手の自主性を尊重する(スパルタ方式から自主的・自発的トレーニングに変更したら画期的な成果が出た例が紹介されている。青学の原監督や高校野球の名監督など)

    クラス全員でお互いを褒めあうことをしている小学校(これによって、児童が相手をよく見るようになり、自分の考えを持てるようになり、自己肯定感も高まったという)

    京都の中学校で、地域の保育園と連携し、生徒たちが園児を楽しませるにはどうしたらよいか考え実践する活動を行っている(これにより、イジメ・不登校が減り学力も向上したという)

    ある学習塾では、将来の夢を具体化する合宿をしている(自分の針路を考えることがその後の自主的学習につながる)

    自然や芸術に親しませる、異質な環境を経験させる、なども有効である。(上野の知見では、上司に嫌われたY氏がいくつもの関係会社に放り出さ れましたが、その後、帝人の名社長になった例があります)

上野注:これという決め手はなく、
それぞれが場に応じて工夫していくしかないようです。

ネコ型を育てるフランス・ドイツの教育方針

    パリの幼稚園では、活動や学習を自分で選択できる(ダンス、アート、団体舞踊、歌、スポーツなど9つからの選択)。英語の教育も自由選択である。ロールプレイングなども取り入れている。

    ドイツでは10歳で進路選択させている(大学か専門学校か)。


京都がネコ型社会として紹介されているのは、たいへん興味深いことです。
京都が創造性豊かであることは知られています。
ノーベル賞受賞者数 25人中、京大が湯川秀樹さんを筆頭に8人です
(東大は7人です)。

著者は、そのルーツをこう解釈しています。なるほど!です。
狭い閉鎖社会であるが、基本的には商人の街で、
争いを避けるために「棲み分け」をする工夫をしている、
それには創意工夫が必要である。

【イヌ型人間・ネコ型人間の上野解釈】
上掲の著者によるイヌ型人間・ネコ型人間の定義からすると、
 イヌ型人間=血液型A型人間
 ネコ型人間=血液型B型人間

ということになるのではないかと思います。

上野も「血液型で性格が決まる」と考えているわけではありません。
血液型は、「性格」を決める一つの要因であると考えています。
その根拠は、
 ある職業と血液型との関係に統計的に優位な差がある、
 10分話しているとその人の血液型を当てられる人がいる
という点です。
私はその根拠は、以下のような脳の作動特性にある、と考え、
それを証明する物理仮説を立てています。
 A因子がコントロールする脳は連続処理(シーケンシャル処理)をする。
 B因子がコントロールする脳は不連続処理(ランダム処理)をする。

詳細は、以下をご参照ください。


上野は、本書の表現で言えば「ネコ転」の方法として

要点は、これからの時代を生き抜く(脱ゆで蛙)には、
競争心、創意工夫、共同作業が重要で、
これを幼稚園時代から訓練しましょう、
というものです。
上掲のパリの幼稚園の先を行く試みです。
ぜひご参照ください。

【蛇足】イヌとネコの違い
イヌとネコの違いということでは、
童謡「雪」で歌われている
「イヌは喜び庭駆けまわる、ネコはこたつで丸くなる」
を象徴として捉えている人も多いのではないでしょうか。
大昔、叔父の紹介で医師の美人なお嬢さんとお見合いをして
何度か会ったことがありました。
ある時、彼女が「(今度生まれたら)ネコになりたい」と言いました。
その一言で、「あ、この人はダメだ、
これから何が起きるか分からない人生でそんな楽な思いはさせられない」
とお断りしたことがありました。
こたつで丸くなっているネコを連想したのです。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

早速、本を購入して読みました。
まさにイヌ型⇒ネコ型へ変化させることを
実践し始めました。
経営もウォーターフォール型からアジャイル/スクラム型
ご無沙汰しております。
荒川