目的:
日本の医療の現状を確認いただきます。
ねらい
国民一人ひとりが適切な医療対応を行いましょう。
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本項は、學士會会報2021ーⅤ号に掲載された
永井良三自治医科大学学長寄稿「日本の医療提供体制の課題と展望」
のご紹介を中心にした解説です。
(3)日本の医療提供体制の基本型
(4)医療システムの制御
(5)医療体制の国内地域格差
(6)医療費の大小の要因
(7)日本の外科医師の生産性の低さ
2.コロナ対応が十分できない原因
3.今後の医療体制の課題
(1)地域医療構想
(2)医療体制整備の課題
1)地域医療体制の整備
2)医療施設間の連携強化
3)治療のチームワーク化
(1)医療費の現状
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総額 |
保険料 |
患者負担 |
公費投入等 |
2018年度総医療費 |
43兆4千億円 |
49.4% |
11.8% |
38.1% (約12兆円) |
2020年度後期高齢者医療費 |
18.1兆円 |
7.7% |
8.2% |
約5割、残は他の保険料から |
後期高齢者一人当たり医療費 |
百万円超 |
13万円 |
90万円近く |
|
総括:公費投入が膨大で国家財政破綻の要因になる。高齢者の医療費を非高齢者が負担する図式も破綻する。 |
(2)日本の医療体制
日本の外来受診回数 |
|
欧米の2倍 |
人口千人当たりの病床数 |
13.1床 |
英米の5倍、独仏の2倍 |
人口千人当たりの医師数 |
2.4人 |
OECD平均は3.5人 |
人口千人当たりの看護師数 |
11.3人 |
OECD平均並み |
病床百床当たりの医師数 |
18.5人 |
米の5分の1、欧の2分の1 |
病床百床当たりの看護師数 |
86.5人 |
|
総括:病床数は多いがそれに見合う医師・看護師がいない。 |
筆者によると、医療体制は、以下の3点で評価することができます。
底辺=医療のアクセス
高さ=医療の質
面積=医療資源(コスト)
日本が目指してきたのは三者の共存で、以下の図の(平時)の状態です。
この体制は
(4)主要国の医療システムの制御 一長一短あり。
米国 (民営) |
民間主体。公的医療制度は高齢者や低所得者向けがあるがそれ以外は対象外で無保険車も多い。民間病院は、救急救命を除いて無保険者の診療の義務はない。保険会社の影響力が強い。 |
英国 (官営) |
国民皆保険制度がある。病院は公営、医療従事者は公務員。医療費は原則として無料。家庭医制度があり、どんな病状でもまず家庭医にかからなければならない。家庭医も専門医も不足し非常に多くの治療待ち者がいる。 【現実が理想に追いついていない】 |
日本 (併営) |
病院の8割は民間経営、公的病院は2割。医療財政・制度は国が管理している。明治維新後は公立病院中心であったが、財政難で公立病院への支援が亡くなり、私立病院が増加。民間病院のレベルも次第に上がり、大学と民間病院の医師間に階層分離は起こらず、専門医制度も発達しなかった。 総括:従来は医療体制の実質的制御が不十分であった。それを「地域医療構想」で挽回しようとしている。 |
(5)医療体制の国内地域格差
2012年データ |
全国平均 |
最多 |
最少 |
人口十万人当たりの一般病床数 |
704床 |
高知県 1059床 |
埼玉県 489床 |
人口十万人当たりの療養病床数 |
258床 |
高知県 905床 |
宮城県 132床 |
一人当たり医療費 (外来・入院計、年) |
49万円 |
高知県 63万円 |
千葉県 40万円 |
一人当たりの入院医療費(年) |
22万円 |
高知県 34万円 |
千葉県 16万円 |
75歳以上の糖尿病患者外来医療費(年) |
|
広島県 熊本県の1.5倍 |
熊本県 |
総括:地域間格差が極めて大きい。医療が重要な産業になっている県もある。 |
(6)医療費の大小の要因
65歳以上の一人当たり医療費 |
高齢者の就業率が高いと医療費は低い |
〇長野県、山梨県、静岡県 ✖北海道、沖縄県、長崎県、福岡県 |
医療以外の産業の有無 |
医療介護費の県GDPに占める比率が高いと医療費も高い |
最高が高知県(GDP比18%) 最低が東京都(GDP比6%) 徳島県は、全産業中医療福祉間関係の就業者が最多。特に女性の就業が多く男性の2-3倍である。 |
(7)日本の外科医師の生産性の低さ
人口十万人当たりの脳神経外科医数 |
4.7人
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欧米は1-1.5人 |
人口十万人当たりの脳外科医数 |
5.4人 |
米国1.2人 |
一人の医師が担当する脳外科手術件数 |
27.8件 |
米国620,3件 |
人口十万人当たりの胸部外科医数 |
4.5人 |
米国は1.6人 |
一人の医師が担当する胸部外科手術件数 |
18.2件 |
米国は56.1件 |
開胸心臓外科手術件数(年間) |
日本の大学病院300件程度 |
米コロンビア大学 1500件(注) |
注:外科医6人、フェロー5人、30人以上の医師補助士の体制
日本の外科医師の低生産性の要因(上野意見)
1.チームでの取り組みが遅れている。 2.日本は専門医制度が遅れていて医師数算定が甘い(上野想定)。 3.(可能性)日本の方が困難な手術が多い(この要因はなさそう)。 4.(可能性)日本の方が丁寧な手術をしている(実態は不明)。 |
地域医療構想の基本目的
こうなります。
(高齢化に伴う医療需要の変化への対応を含む) 医療体制の地域間格差の縮小 |
地域医療構想の施策
こうなります。
医療機関の役割機能の明示(高度急性期・急性期・回復期・慢性期対応の区分) 医療機関機能の需要予測と機能変換に対する制度的支援 医療職種の役割分担の見直し(看護士の役割強化、等) 医療データの活用 2次医療圏(一般の入院に係る医療の提供を行う)の見直し |
国民の責務についても以下のように明記しています。
国民は、良質かつ適切な医療の効率的な提供に資するよう、 医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携の重要性 についての理解を深め、医療提供施設の機能に応じ、 医療に関する選択を適切に行い、 医療を適切に受けるよう努めなければならない。 |
上野要約: 「なんでも大病院」ではなく病院を適切に使い分けなさい。 過度な治療はやめなさい。 |
(2)医療体制整備の課題
当ブログの重点課題の観点から整理すると以下のようになります。すでに着手されています。
1)地域医療体制の整備
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