少し脱線しましたが、話を戻します。
1986年発売の「天城越え」になると、
本能に目覚めた奔放・情熱的な「強い女性」が登場します。
「誰かに盗られるくらいならあなたを殺していいですか」
「何があっても もういいの」
「恨んでも 恨んでも 躯うらはら あなた…山が燃える」
というセリフが出てきます。
「強い」だけでなく、「怖い」かもしれません。
歌に出てくる天城山隧道。『伊豆の踊子』では、一人旅をしていた青年が、 旅の道中に見かけた旅芸人一座の娘に心を寄せ、このトンネルの脇にあった峠の茶屋で、
はじめてその娘と会話を持った場所として描かれた。
歌手の石川さゆりさんは、
「津軽海峡冬景色」の時が19歳、
「天城越え」の時が28歳です。
この間に結婚もされてますから、強い女性になられたのでしょう。
NHKの紅白歌合戦には、
1977年から2020年まで43回出場されています。
その間1983年に1回だけ欠場しています。
おそらくその時にお嬢さんを産まれたのでしょう。
毎年のように紅白を見ていたのですが、知りませんでした。
2007年の「津軽海峡冬景色」からは、
それと「天城越え」とを毎年交互に歌っています。
それまで、ほかの曲も歌っていたのですが、
視聴者の人気がよくなかったのでしょう。
石川さゆりと言えば、この2曲のどちらかを聞きたいのです。
2019年に紫綬褒章も受けておられますからすごい方ですね。
強い女性は「天城越え」の頃から始まったのでしょうか。
この歌の寿命が長いのは、
その後、バブル崩壊で男の立場が弱くなり、
女性が自己主張を強くするようになった面もありそうです。
別項でご紹介した、男の弱さを自嘲する「サラリーマン川柳」は、
1990年から始まっています。
YouTubeの再生回数をみると、前2曲は400万回台に対して
「天城越え」は1800万回です。
こちらの方が現代の感覚に合っているということなのでしょうか。
私は、この3曲の中では、
「津軽海峡冬景色」が最も心に響きますね。
皆さまはいかがですか?
以下に、3曲の歌詞すべてを掲載します。
北の宿から 1975年発売
YouTube4,168,420 回再生(6/24)
阿久悠作詞 小林亜星作曲 歌:都はるみ
あなた変わりはないですか
日ごと寒さがつのります
着てはもらえぬセーターを
寒さこらえて編んでます
女ごころの 未練でしょう
あなた恋しい 北の宿
吹雪まじりに汽車の音
すすり泣くよに聞こえます
お酒ならべてただひとり
涙唄など歌います
女ごころの 未練でしょう
あなた恋しい 北の宿
あなた死んでもいいですか
胸がしんしん泣いてます
窓にうつして寝化粧を
しても心は晴れません
女ごころの 未練でしょう
あなた恋しい 北の宿
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津軽海峡冬景色 1977年発売
YouTube 4,370,287 回再生(6/24)
阿久悠作詞・三木たかし作曲 歌:石川さゆり
上野発の夜行列車 おりた時から
青森駅は 雪の中
北へ帰る人の群れは 誰も無口(むくち)で
海鳴(うみな)りだけを きいている
私もひとり 連絡船に乗り
こごえそうな鴎(かもめ)見つめ
泣いていました
ああ 津軽海峡 冬景色
ごらんあれが竜飛岬 北のはずれと
見知らぬ人が 指をさす
息でくもる窓のガラス ふいてみたけど
はるかにかすみ 見えるだけ
さよならあなた 私は帰ります
風の音が胸をゆする
泣けとばかりに
ああ 津軽海峡 冬景色
さよならあなた 私は帰ります
風の音が胸をゆする
泣けとばかりに
ああ 津軽海峡 冬景色
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天城越え 1986年発売
17,902,170 回再生(6/24)
吉岡治作詞 弦哲也作曲 歌:石川さゆり
隠しきれない
移り香が
いつしかあなたに 浸みついた
誰かに盗られる くらいなら
あなたを殺していいですか
寝乱れて 隠れ宿
九十九折り 浄蓮の滝
舞い上がり 揺れ堕ちる肩のむこうに
あなた…山が燃える
何があっても もういいの
くらくら燃える 火をくぐり
あなたと越えたい 天城越え
口を開けば 別れると
刺さったまんまの 割れ硝子
ふたりで居たって 寒いけど
嘘でも抱かれりゃ あたたかい
わさび沢 隠れ径
小夜時雨 寒天橋
恨んでも 恨んでも 躯うらはら
あなた…山が燃える
戻れなくても もういいの
くらくら燃える 地を這って
あなたと越えたい 天城越え
走り水 迷い恋
風の群れ 天城隧道
恨んでも 恨んでも 躯うらはら
あなた…山が燃える
戻れなくても もういいの
くらくら燃える 地を這って
あなたと越えたい 天城越え
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6/27追記
たまたま「北の宿から」と同じ1975年発売の似たような曲が
見つかりましたので、掲載しておきます。
こちらは、女性の気持ちを男性歌手が歌った変形です。
この女性も「旅」に出ます。
この中に登場する「大切な純情」は、
当時の男性の願望だったのかもしれませんが、
今やまったく死語ですね。
こうしてみると、
「天城越え」は演歌の中でまったくの型外れですね。
心のこり 1975年4月1日発売
なかにし礼作詞 中村泰士作曲 歌:細川たかし
私バカよね おバカさんよね
うしろ指 うしろ指 さされても
あなた一人に命をかけて
耐えてきたのよ 今日まで
秋風が吹く 港の町を
船が出てゆくように
私も旅に出るわ 明日の朝早く
私バカよね おバカさんよね
大切な 大切な 純情を
わるい人だと 知っていながら
上げてしまった あなたに
秋風の中 枯葉がひとつ
枝をはなれるように
私も旅に出るわ あてもないままに
私バカよね おバカさんよね
あきらめが あきらめが 悪いのね
一度はなれた 心は二度と
もどらないのよ もとには
秋風が吹く つめたい空に
鳥が飛び立つように
私も旅に出るわ 一人泣きながら
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4 件のコメント:
私は上野さんと年代が重なりますので、紹介の歌は胸に迫るものがあります。歌い易いところも、歌い継がれる理由でしょう。また、作詞家の阿久悠氏の才能には驚嘆します。氏は作詞家の中では、空前絶後の才能を持った人だと評価しています。70歳で逝かれたのは、非常に残念です。今回の紹介で、昔を思い出させていただき感謝します。
私はコロナ禍で1年以上カラオケに行ってないので、声が出にくくなっています。残念です!
匿名さん
貴重なご意見ありがとうございます。そのようなコメントがいただけることを期待していました。とても嬉しいです。今後ともよろしくお願いいたします。上野則男
匿名さん追伸です。
早くカラオケに行けるようになるといいですね。
「天城越え」も歌えるのですか?
ジジが歌う「天城越え」聞いてみたいものです。
頑張ってください!!
「天城越え」、歌うことに全く問題ありません。レパートリーは幅広いです。
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