2021年6月22日火曜日

「忠犬タロー」はなぜ実現した?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「忠犬ハチ公」を上回る「忠犬タロー」の物語をご紹介します。
 なぜそんなことになったのか、分析してみました。
ねらい:
 犬の忠誠心はすごいものですね。
  近所のワンちゃんを見直しましょう。
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「忠犬タロー」は、1981年に死ぬまで17年間、
飼い主を探しに毎日駅まで往復していたワンちゃんです。
私は最近この話を知りました。
忠犬ハチ公の主人求めが10年ですからそれを上回っている、
誠に涙ぐましい物語です。

2009年6月19日の朝日新聞DIJITALはこう伝えています。
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タローは石岡駅で誰を待っていたのだろう。
朝夕2回、決まって現れた。
待合室に座り、改札口を通る乗降客をじっと見ていた。
待ちくたびれると、同じ道をまた引き返していった。

茨城県石岡市立東小学校で飼われていた雑種犬。
1964(昭和39)年に、迷い込んできた。
しばらくして駅通いが始まった。

駅までは約2キロ。学校の正門を出て歩道橋を駆け上り、
車の多い国道6号を西へ向かう。横断歩道を渡って坂を下り、
交差点を右折、常磐線の踏切を渡ると駅が見えてくる。
赤と青を見分け、ちゃんと信号を守った。

先生や児童たちみんなに愛されていた。
たいていは職員室の教頭の机の下にいた。
登校時間になると、1年生の教室を順番に回る。
自分で戸を開けて入り、教室の隅で児童を見守った。
昼休みは校庭で「給食」。
好物のマーガリンと飲み残しの牛乳を子どもたちにもらった。

寄り道をして帰ることもあった。
駅前の定食屋とそば屋はなじみの店だ。
よく立ち寄ってはごちそうになった。
そんなときは帰りが夜7時を回った。

いまだったら、たちまち捕獲されて処分されるに違いない。
当時は高度成長期を迎え、人々が豊かになり始めた時代。
社会は寛容さを備えていた。

72年に校長として赴任した橋本千代寿さん(88)は、
タローとの8年間の思い出を大切にしている。
夏休みのある日、
「店の玄関にお宅の犬がいる」と駅前のスーパーから電話があった。
迎えに行くと、店内から流れてくる冷房の効いた風を受けて、
ちゃっかり涼んでいた。

「犬はつないでおいて下さい」と保健所に2度、注意された。
「黙認してほしい」と嘆願した。保健所長は黙っていた。

主人を思って駅へ通っていたというのが地元の見方だ。
「そう思うと不憫(ふびん)でね。
そんな犬を鎖でつないでおけますか」。
橋本さんは保健所の指導に背いたことをいまも後悔していない。

橋本さんが退職した翌81年の夏、タローは死んだ。
20歳近いとみられる。
全校生で追悼式をして土浦市内の寺に葬った。

晩年のタローは一日中、職員室で寝ていた。
しかし、時間になると起き上がり、学校を出て行った。
駅通いは動けなくなるまで続いたというから、
最後まで「主人」が現れることはなかったのだろう。
    ◇
「その犬は多分、45年前に迷子になった愛犬コロです」。
行方市で住宅設備会社を営む成島亮子さん(50)から連絡があった。

コロは63年に生後4カ月で家にやってきた。
当時、成島さんは5歳。
自宅から200メートルの鹿島鉄道(07年に廃線)
玉造町駅で電車に乗り、
幼稚園のある11駅目の石岡駅へ通っていた。

玉造町駅への送迎は、
家業の陶磁器店で忙しい両親に代わって、コロがしてくれた。
毎朝、一緒に電車に乗り込んできた。
成島さんが座席に着いて、頭をなでてやると、
電車を降りて引き返していった。
帰りは駅の待合所で待っていた。

翌64年のある朝、頭をなで忘れたのか、
コロは電車を降りずに、石岡駅まで付いてきてしまう。
「お嬢ちゃんの犬?」と、改札口で駅員に聞かれた。
犬を乗せたことを怒られると思って首を振った。
コロは追い払われた。それが最後になった。

ショックで熱を出し、10日間寝込んだ。
父の良昌さん(85)は石岡駅周辺へ6回も捜しに行った。
コロは教室をのぞきに3度、幼稚園に現れた。
だが、園が捕捉しそこねてしまい、その後の消息はつかめずにいた。

その年、1匹の犬が石岡東小に迷い込む。
しばらくして、朝夕の石岡駅通いを始めた。
一方、成島さんは翌年に卒園すると、
石岡駅を使うこともなくなり、その犬を見ていない。

茶色いオスの雑種、垂れた耳、剛毛。
それに同小創立50周年記念誌に載った犬の写真。
「タロー」と呼ばれたその犬こそ、コロに間違いないと、
成島さんと両親は確信している。

コロは81年の夏に死ぬまで石岡駅に通い続けた。
ずっと自分を捜していたと思うと、胸が痛む。
「あの時、駅員にウソさえつかなければ」。
45年間抱き続けてきた自責の念にさいなまれる。
もっと捜せばよかったと、改めて思う。
「でも、コロがみんなに愛されていたとわかり、
救われる思いがします」
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その後、2017年4月に、東小学校の校長をしておられた先生の発案で
タローの銅像が石岡駅前にできました。
そのことを伝えた2017年6月28日の日経新聞電子版の記事は
こうなっています。
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ハチ公にも負けない、けなげな犬の物語を後世に伝えたい――。
茨城県石岡市で、離れ離れになった飼い主の女の子を捜すため、
1981年に死ぬまで約17年間も駅に通い続けた「忠犬タロー」の銅像を、
市民による顕彰会が今春、市内のJR石岡駅前に設置した。
顕彰会は「銅像が市のシンボルとなり、
地域活性化につながれば」と願う。
JR石岡駅前に設置された「忠犬タロー」の銅像(茨城県石岡市)=共同

顕彰会によると、タローは茶色の雑種。
子犬だった64年、
別の町から石岡市の幼稚園に列車で通っていた
飼い主の女児と石岡駅ではぐれ、市立東小に迷い込んだ。
同小で飼われることになり、児童にかわいがられる一方、
毎日朝夕、約2キロ離れた駅に行き、女児を待った。

駅への往復は81年7月20日に死ぬ前日まで約17年間、欠かさなかった。
有名な東京・渋谷駅の忠犬ハチ公が主人の帰りを待ち続けた
10年間よりはるかに長い。

タローのけなげな生涯を物語として残そうと、
東小で校長を務めたことがある佐藤信夫さん(77)が歴代校長らに相談し、
2012年に顕彰会を設立。
銅像を作るため14年8月からインターネットなどで寄付を呼び掛けると、
全国から500万円以上が集まった。

4月にお目見えした銅像は高さ約80センチ。
市内の彫刻家平田寿一さん(72)が残っていた1枚の写真を基に、
優しく前を見つめる表情を再現した。
佐藤さんの提案で、銅像は、
タローのそばに子ども2人を配置し「みんなのタロー」と命名した。

佐藤さんは「誰にでも愛されたタローを広く知ってもらいたかった。
これから地域を発展させる存在になってほしい」と話している。
〔共同〕
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この物語には感動しました。
ですが持ち前の分析屋根性が沸いてきて、
「なぜ、行方不明になった時に
コロ(タロー)を見つけられなかったのだろう?」と考えてみました。

最近使用している「成功要因分析モデル」を使いました。
大きなことの成功要因は、
「目的意識」「判断力」「技術力」「運」の4つです。
このどれかが欠けていると成功しないというのが、
目下の私の考えです。

本件の場合は、こうでしょう。
コロを探そうという「目的意識」は、家族全員にあったと思われます。

「判断力」はどうでしょうか?
電車で遠くまで行ってしまったので、
コロは嗅覚を頼りに帰ってくることはできません。
「駅で待つという習性からすると、
はぐれてしまった石岡駅にやってくる」
と思わなかったのでしょうか。
父親は、その多忙の中で6回、石岡駅周辺に出かけています。
その際に、どこに行ってそうかという想定をどうしたのでしょうか。
判断力は万全とは言えないようです。

石岡駅周辺にいると考えたとしても、
「技術力」を広く解釈して、
目的を達成するための実現能力と考えると、
両親は子供の送り迎えをコロに頼まなければならないほど
多忙だったのです。
父親は、その多忙の中で6回、
石岡駅周辺に出かけるのが精一杯でした。
もう少し行っていれば会えたかもしれません。
「技術力」は若干不足していました。

それよりも、最大の欠落は「運」です。
彼女は、コロと行き違いになった後、10日間は寝込みましたが、
その後も幼稚園に通っていたのです。
その時に、コロに会わなかったというのは、
なんとも解せない「不運」です。
コロが彼女の通っていた幼稚園に、
3回顔を出したのに会えずじまいでした。
父親が6回も探しに行ったのに会わなかったのも不運です。
そのようなチャンスが10回以上あったのです。

10日間寝込んだ後は、彼女は幼稚園に行っていましたので
毎日会えるチャンスがあったのです。
こんなについていない人たちは珍しいですね。

結局こういうことになります。

成功要因

本件

目的意識

判断力

〇やや不足

技術力

〇やや不足


こうしてみると、以下のような見方も出てきました。
コロは、迷い込んだ東小学校の多くの職員・生徒に可愛がられた
幸せな一生を送りました。
これがコロの「運命」で、
元の飼い主に見つからない「運」があったのです。
毎日の駅通いは、気分転換・健康法だったのかもしれません。

美談を台無しにして申し訳ありませんが、
コロは幸せだったということになります。

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