目的:
無駄が多そうな土木事業、特に公共土木事業の生産性について
考えてみます。
ねらい:
低生産性の良さも認めましょうか。
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ねらい:
低生産性の良さも認めましょうか。
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1.東日本大震災の復興にかけた40兆円は有効なのか
3月11日の日経新聞1面に以下の記事が載りました。
東日本大震災10年 公共投資一巡
東日本大震災の発生から11日で丸10年となった。
3月11日の日経新聞1面に以下の記事が載りました。
東日本大震災10年 公共投資一巡
東日本大震災の発生から11日で丸10年となった。
道路や住宅など生活インフラの整備はおおむね完了し、
政府による大規模な公共投資は一段落する。
政府は9日に決めた新たな復興の基本方針で、
2021年度からの5年間を第2期復興・創生期と位置付けた。
有効な投資が行われたのであろうか?と疑問になります。
2.日本の土木事業はどうなっているか
そこで、
日本の土木事業の実態はどうなのかを少し調べてみました。
土木事業は以下の工事を担い、
国のインフラ整備として極めて重要な役割を占めています。
上記40兆円も大半が土木工事関係でしょう。
1.都市計画、防災、環境
1.都市計画、防災、環境
国民所得計算等によりますと、
主要産業の就業者一人当たり年間所得は以下の表のようになっています。
産業別一人当り年間所得
産業 |
年間雇用者報酬(兆円)2019年 |
就業者数(万人)2020年 |
就業者一人当り年間所得(万円) |
卸売・小売業 |
39.7 |
1057 |
376 |
製造業 |
57.1 |
1045 |
596 |
医療・福祉 |
29.4 |
862 |
341 |
建設業 |
23.4 |
492 |
476 |
その他サービス業 |
14.1 |
452 |
312 |
宿泊業・飲食サービス業 |
5.1 |
391 |
130 |
運輸業・郵便業 |
20.0 |
347 |
576 |
日本の2020年の就業者数合計葉6,676万人ですから、
建設業はその7.4%を担っている大産業です。
これでも、土木事業は生産性の高い建築業と一緒になっています。
その建設業の生産性は、
他の産業と比較してそんなに低いとはなっていません。
土木事業がどうなのかは分かりません。
注:この表で「宿泊業。飲食サービス業」の所得が極端に低いのが
気になります。おそらく家族経営が多く、
あまり働かない家族が就業者に算入されているせいもあるでしょう。
そこで、「土木業界の動向とカラクリがよーくわかる本」
(秀和システム刊)を見てみました。
そうしましたら、出ていたのは以下の図です。
建設投資ピークの1992年の投資額は84兆円
(民間52、政府32兆円)
就業者数は619万人、一人当たりの建設投資金額1357万円。
2016年の投資額は51.8兆円(民間30、政府22兆円)
就業者数は492万円、一人当たりの建設投資金額1053万円
24年間で、一人当たり建設投資金額(稼ぎ)は
22%の大幅低下をしていることがわかりました。
これでもやはり建築と土木の内訳が分かりませんので、
次のグラフを見ました。
2016年度の建設投資の内訳は建築が56%で土木が44%、
土木の44%のうち、
民間土木は10ポイント、政府土木が35ポイントでした。
土木工事の大半は、やはり公共工事だということです。
「近代化」の遅れている土木の生産性は低いのではないか
と想定しますが、土木と建築の就業者数が分かりませんので、
それぞれの生産性は不明のままです。
3.土木工事の生産性は低い
私が、土木工事の生産性が低いと思う理由は、
道路工事や宅地整備工事を見ていることからです。
その1:
我が家の前は幅6メートルほどの道路で歩道はないのですが、
ご承知の白線が引かれていて歩行者用の道幅が確保されています。
先日、その歩行者用の部分に緑の塗装をする工事が行われました。
1週間くらいの間隔で2度塗りをしたのですが、
白線部分にテープを貼って緑の塗装がかからないように保護しました。
そのテープを、1回目が終わった時にいったん剥がして
2回目の時にまた貼り直しているのです。
「そのままにしていると部分的にはがれたりするからだ」
と言われそうですが、剥がれたらその部分だけ貼ればよいのです。
部分的に2重に貼ろうが、
じきに剥がすのですから見栄えは関係ないでしょうに。
その2:
別項の「そして誰もいなくなった」でご紹介しました、
家の取り壊しとその後の地面の整地の作業です。
30坪くらいのことなのに、数人でやってきて、
片付けだけする人、
熊手のようなので地面をならすだけのことをする人など、
本当の単純作業だけをする人がいました。
工夫すれば自動化できそうです。
その3:
近所で、横須賀線の下を通る2キロほどのバイパス工事が
行われています。
横須賀線の下をくぐる工事は難事業でしょうが終わりました。
それでも10年も経っていまだに開通しないのです。
民間の事業であれば、長くても2年で済みそうです。
2年と10年では5倍です。
ずっと工事に人が張り付いているのではないので
5倍のコストがかかっていることはないでしょうが、
何倍かにはなっているでしょう。
その4:
道路のアスファルト舗装は、何年かに一度、
新しくする工事が行われます。
掘り返した砕石を一旦どこかへ持っていって
別の砕石を持ってきて敷き詰め、
その上をアスファルト工事をしています。
工夫すれば、その場で砕石を処理する方法ができそうです。
これらはすべて、
生産性を改善しようとする気がないことから起きています。
生産性の改善=雇用の減少となりますし、
発注者がそれだけの金額を払ってくれるなら、
あえて改善する必要はないのです。
公共工事の発注者は、見積り根拠が工数表示してあれば、
「それだけかかるのか?」という追求はしないで
ほぼそのまま認めているのでしょう。
4.土木工事の生産性は改善すべきか
前掲書にこういう記述があります。
「2016年には、
建設業就業者のうち55歳以上が34%を占めるため、
10年後には技能者の3分の1が引退すると見込まれます」
つまり高齢者が多いということです。
私が見ている高齢の単純労働者は、おそらく低賃金でしょう。
しかし、失業したらおそらく再就職の道はなく、
生活保護を受けなければならなくなるでしょう。
したがって、
土木事業の低生産性システムは雇用確保機能があり、
その対象者に多少なりとも生きがいを与えている
ことになります。
生活保護を受けるより自分で働いて収入を得ている方が
精神的にいいでしょう。
そう考えると、
日本の社会全般がその低生産性を許容できるのであれば
改善はしない方がいいのではないか、と思い至りました。
皆さまはどうお考えになりますか?
因みに、高齢者が引退して就業者がいなくなれば、
土木事業の自動化等の生産性改善は
積極的に行われるようになるでしょう。
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