2019年12月19日木曜日

共通テストの記述式は誰が希望した?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 記述式の共通テスト実施計画はなんであったのかを
 解明しましょう。
ねらい:
 お役人は現実無視でろくなことを考えませんね。
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12月17日萩生田文科省は、
共通テストの記述式の2020年度試験採用の見送りを発表しました。
2017年7月に、この実施を文科省が決定したのです.。
その責任は萩生田さんではないはずですが、
発表当日の萩生田さんは苦渋の表情でした。


そもそも、記述式テストは、
丸暗記が通るマークシート式テストでは測れない表現力・思考力を測り
高校までの学習をあるべき方向に持っていこうという、
正しいべき論に基づいています。


それを全国一律の「共通テスト」で実施しようとしたのは、
以下の背景がありました。あるいはあったと考えられます。


1.多くの大学で記述式テストをしていないので
 補強する必要がある。
 
 その根拠は2016年8月に発表された文科省データで、
 「国立大学の2次試験で、国語、小論文、総合問題の
 いずれも課さない学部の募集人員は全体の61.6%」
 というものです。


 ところが、東北大学が調査では
 「国立82大学のうち81大学が記述式を実施し、
 一般募集人員の約88%が記述式問題を課されている」
 となっています。


 前者のデータは国語に限定したものを全体であるかのように
 歪曲して使用されたのです。
 記述式テストありきの誤用です。


 2015年のOECDの学力調査で日本の15歳の読解力が、
 大きく低下している、ということも背景にあったでしょう。


2.文科省が自己の影響力を拡大しようとした。
 自分の直接支配下で、あるべきテストの方向を実現したい、
 というお役人根性です。


3.仕事を拡大したい民間業者が後押しした。
 2020年分だけなのか、数年分なのか分かりませんが
 ベネッセの子会社が
 61億円でそのテスト実施を受けていたそうです。


ところが、
そもそも50万人が受験するテストで記述式を採用するとなると、
20日間かけるとしても8千人から1万人の採点者が必要で、
かつ採点の公正性・客観性を維持するのは至難です。
そんなことはできそうにないことです。


採点の公正性・客観性を確保しようとすると、
出題内容・方法を絞り込んで
誘導尋問に答えるような形をとるしかありません。


これでは思考力をテストするという目的からすると
まったくの本末転倒です。
「何を考えているのだ!!」ということになっていたのです。


私は、国家資格プロジェクトマネージャ試験に10回も落ちました。
論文式がダメなのです。
私は、会社で開催していた
多くの有識者に講師をお願いしたプロマネ養成講座を
束ねるほどの「有識」者だったので、
裏まで考えるような独自の解答を書いていたのでしょう。
これは、模範解答と一致しません。


あるとき受験参考書に、誘導尋問に答えるように書かなければいけない、
と書いてあるのを見つけました。
そのようにしましたら1回で合格しました。
記述式のテストはそんなものです。
それでも少しは考えるのでしょうが。


2019年12月18日の日経新聞には、
日本テスト学界副理事長で、
大学入試改革の有識者会議委員も務められた
南風原朝和東大名誉教授の以下のご意見が載っていました。


「記述式は
専門性が高い採点者が一貫した視点で採点して初めて生きる。
そもそも数10万人が受験する共通テストにはなじまない。
将来的にも導入は断念すべきである」


そのとおりでしょう。
そんなことはじめから分かっていたのではないですか?
ずい分無駄な検討をしましたね。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

記述式テストの導入は、業務システムのシステム設計で言えば、機能ばかり追求して運用用設計をおろそかにし、導入してみたら運用が付いて行かないという典型的なシステム導入失敗の例に当てはまります。
有識者がそろってこの程度の設計しかできないのでは、教育行政の劣化が甚だしいですね。
むだなお金を使わないで欲しいものです。