【このテーマの目的・ねらい】
目的:
幼児虐待死事件の1対応策の検討状況を知っていただきます。
児童福祉士の国家資格化が目的になってはいけないという
主張を知っていただきます。
ねらい:
もっと総合的な検討をすべきです。
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幼児・少女虐待死事件で、「脚光」を浴びた児童福祉士ですが、
人数不足が問題になり、
2020年までの大幅増員計画が打ち出されています。
量的拡大だけでなく、質的な補強の必要性も提起されています。
その一環が、「児童福祉士の国家資格化」です。
厚生労働省の専門家会議での検討が始まっています。
おさらいをしておきますと、
現在の児童福祉士は、
以下の条件の人の中から都道府県知事が任命している形となっています。
つまり「児童福祉士」という独自の資格はないのです。
現在の比率
社会福祉士 43%
心理学科などを卒業後に福祉支援の業務に1年以上従事 29%
児童福祉の主事として2年以上勤務して、講習会を受講 8%程度
都道府県指定の学校か研修を修了 7%程度
精神保健福祉士 不明
医師 0%
他の要件と同等の能力 不明
合計2019年4月時点 3817人
私は、以前から児童福祉士の能力強化の必要性を主張しています。
児童福祉士の能力不足が悲劇につながっています。
国家資格化への賛成意見はこうです。
(以下の意見等は、2019年12月2日の日経新聞が出典です)
児童福祉士を含む児相職員は公務員として定期的に異動する。
5年以上の経験を持つ児童福祉士は40%に満たないのが現状。
東京通信大学の才村純教授(児童福祉)
「腰掛け職員ばかりになってしまう現在の仕組みではなく、
資格導入で児童福祉士の知識・技術を培う制度が必要だ」
山梨県立大学の西沢哲教授(臨床心理)
「時間をかけているうちに死亡してしまう子どもがいる。
議論を前に進めたい」
国家資格化への反対意見はこうです。
武蔵野大学の木下大生準教授(社会学)
「資格化は人員確保を妨げる。
現状は人手不足が質の低下につながっている。
まずは量の確保が重要だ」
(上野注:資格化が人員確保を妨げるというのは決めつけです)
日本社会福祉士会の栗原直樹副会長
「社会福祉士が現場研修を積み上げれば、実務能力は培える」
(上野注:この意見は、この範囲では単なる組織防衛論です)
この専門家会議は20年12月をメドに結論をまとめる予定です。
まとめ役の厚労省幹部
「児童福祉士の資質向上を目指す考えは皆同じ。
両論併記ではなく、具体的な方向性を示したい」
(上野注:そのとおりですが、どう捌くつもりですか?)
これらに対する上野意見はこうです。
1)なぜそんなに時間がかかるのか。
西沢教授の言われるように、その間にも犠牲者が出てしまいます。
2)国家資格化が目的となってはいけない。
新たな国家資格創設は、児童福祉士の社会的認知向上に貢献します。
厚労省の縄張り拡大にもなるでしょう。
国家資格であろうとなかろうと児童福祉士は、
どういう能力を持っていなければならないか、を検討し、
そのために、従来の児童福祉士の任用条件では対応できない、
ということであれば、新たな資格制度も必要でしょう。
3)国家資格化よりも有効で即効性があるのは、
児童相談所の運営ルールの改訂・補強である。
幼児虐待の問題・悲劇を起こさないことが目的であれば、
現在の「児童福祉士の判断に実質お任せ」の運営ではなく、
重要事項(児童の一時保護の実施・解除など)については
組織としての判断・決定が明確になるような運営にすべきです。
(この点は、過去の事件の経緯をみて
上野が従来から主張していることです)
この問題解決には、学者だけでなく
組織運営のコンサルタントも参画すべきです。
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