2021年11月11日木曜日

コロナ感染者急減の理由

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日本で新型コロナ感染者数が急減している原因を研究します。
 驚くべきその新説を知っていただきます。
ねらい:
 新しい分野では「専門家」の言うことは
  あまり信用しないようにしましょう。
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ドイツなど欧州では新型コロナ感染者が再急増しているのに、
日本の感染者数が急減し、世界の注目を集めています。
因みにインドやブラジルインドネシアでも急減しています。

急減した原因についても話題になり始めています。
11月8日の日経新聞にも「コロナ感染、なぜ急減」という
1頁を使う特集がありました。

そこでの意見は集約するとこういうことでした。

氏名

真の理由

ワクチン

3密回避 マスク着用

集団免疫実現

ウイルスの変異

黒木登志夫氏

 

 

◎?

館田一博氏

 

 

松浦善治氏

不明

 

 

◎自滅

仲田泰祐氏

不明

〇?

 

 


氏名

肩書等

黒木登志夫氏

東大名誉教授。専門はがん研究。

館田一博氏

東邦大教授。長崎大医学部卒、日本感染症学会前理事長

松浦善治氏

阪大特任教授。ウイルス学を研究。日本ウイルス学会理事長

仲田泰祐氏

東大准教授。専門はマクロ経済学。計量モデルでコロナの分析実施


当然ながら、まだ証明はできません。仮説です。
自信を持っている方はないようです。

黒木教授の意見
「デルタ型ウイルスは新規感染者数の増え方も減り方も指数関数的だ。公表データから夏の「第5波」について計算すると、東京では8月下旬から11月1日にかけての下降期に新規感染者数が8.6日で半減のペースで急降下した。減少率は99.9%とあり得ないような数字だ。このまま行けば12月上旬には1人になる」

館田教授の意見
「ワクチン接種が急速に進み、同時にタイミングよく不顕性感染を含めて免疫を持つ人が急増したことで国内で一時的な集団免疫効果が強く表れ、8月半ば以降に感染者が急減した可能性があるのではないか」

松浦教授の意見
「強い感染力を持つ新型コロナのデルタ株はあまりに多くの変異を起こしすぎ、人間に感染した時に増えるのに必要な物質を作らせる遺伝情報が壊れるなどして、自滅しつつあるのかもしれない。以前に優勢だった株は、デルタ株の流行に押されて勢力を弱めた」

仲田准教授の意見
「(感染数に影響を及ぼすいろいろな要因を分析したが決定打に欠ける)追加的な人流抑制をしなくても感染が急速に減少することがあるというのが、この夏の最大の教訓だ。ロックダウンは慎重に検討すべきだ」

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ところが、大和田潔氏(前東京医科歯科大学臨床教授)の
PRESIDENT Onlineへの寄稿にはこのような意見が公開されていました。

日本人やアジア人は、
コロナウイルスに強い体質を持っているというたいへん興味深い主張です。
おそらくそれは事実なのでしょう。

「(専門家は)激減した理由すら説明できないのはおかしい」
(前略)

なぜコロナ被害が国・地域で偏るのか
中国を中心としたアジア・オセアニアの周辺国や
中東、アフリカでは被害が少なく、南北アメリカ大陸、欧州諸国で
被害が大きいことがわかります。
アフリカ大陸では南アフリカの被害が目立ちます。

もし、コロナウイルスがエボラ出血熱のような
どの人類も経験したことのない致死的ウイルスだったとしたら、
世界中の老若男女が死亡したためこのような偏りは出なかったでしょう。これが観察された事実です。

流行当初から私はこの偏りに注目してきました。
アジアの一つである日本で被害が少ない理由は、
守ってくれている“何か”があるからに違いありません。
私は2つ要因を考えています。
ウイルス側の要因と、ホストのわたしたち側の要因です。

まずはウイルス側の要因を見ていきましょう。

私たち日本の町医者には、「コロナウイルス」は
冬季に流行する弱毒ウイルスとしてなじみ深いものです。
そのため、季節性コロナウイルスは注目されることなく、
特別検査することも他のウイルスと鑑別診断することもなく
「冬のカゼ」として対症療法薬の処方で治療してきました。

季節性コロナウイルスは4種類が知られていて、
その流行パターンは地道に研究される対象でした。

私たち日本人のほとんどは、
子供の頃から季節性コロナウイルスに暴露されてきました。
もともとコロナウイルスは変異しにくく、
インフルエンザの10分の1程度であることを
ウイルス学研究者で医師の本間真二郎先生が示されています。

コロナウイルスは、
nsp14というウイルス自身の遺伝子修復を行う部位を持っていて
あまり変化しないのです。
新型コロナウイルスは、
たまたま世界に拡散できるように変異したため
世界流行したと考えられます。

ウイルスには、変異する部位と変異しない部位があります。
季節性コロナウイルスの感染でも、
ある程度の免疫を発揮したのではないかと私は推測しています。

もう一つは、ホスト側の私たちの要因についてです。

人間は、一度入り込んだ外敵を排除する免疫システムを持っています。
ワクチンはそれを利用したものです。

これまであまり知られていませんでしたが、
免疫系だけでないウイルスに対抗する手段も持っています。
それが、APOBEC(アポベック;
apolipoprotein B mRNA editing enzyme, catalytic polypeptide-like)
というヒトの細胞内にある酵素です。
ウイルスが侵入すると細胞は危険信号のサイトカインを発します。
サイトカインで誘導される酵素の一つです。

ウイルスの遺伝子に変異を起こして、
エラーを起こさせウイルスを自滅させる働きを持ちます。
国立遺伝学研究所と新潟大のチームから、
日本人をはじめとしたアジア・オセアニアに酵素活性が強い人が多いことが
報告されました。
アルコール分解酵素と同じように細胞内の酵素なので
先天的に親から遺伝してくる生まれつきのものです。

コロナウイルスの遺伝子にエラーを起こして、
コロナが遺伝子を修復できないようにしていたようなのです。
ウイルスはほぼ最小限の遺伝子とカプセルでできているので、
その遺伝子にエラーが生じて修復できないことは
ウイルスにとって致命的になります。

それでは、なぜアジア・オセアニアにAPOBECの活性が強い人々が
多いのでしょう?そこがまさに面白いところです。

中国のジャコウネコ、中東のラクダ

コロナウイルスは、動物由来の感染症の側面を持ちます。
「過去のコロナウイルスの教訓」という面白い論文があります。
コロナウイルスは、
豚やコウモリ、ラクダから人間に伝染してきた歴史を記した論文です。
豚からの胃腸炎も報告されています。

感冒ウイルスを鑑別することができなかった時代にも、
地域的コロナウイルスの大流行が
過去にも世界的に繰り返されてきたはずです。

通常コロナウイルスが自然界で住処すみかにしているのは
コウモリです。
呼吸器感染症のSARSがジャコウネコ(ハクビシン)を経由し中国発祥、
MERSではラクダ経由の中東発祥であることが有名です。
これらは、
人類がウイルスの遺伝子を分析できるようになったのちのものです。
アフリカのエボラ出血熱もフルーツコウモリが起源です。

森を切り開き
家畜や食糧の元になる野生動物と共に暮らすようになった有史以来、
数々の獣を経てコロナ感染症に人間はさらされてきたことでしょう。
そして、ヒト―ヒト感染するコロナウイルスだった場合に
時折パンデミックとなったのかもしれません。

このように中国周辺国や中東などの地域では、
昔から動物由来のコロナウイルス感染にさらされてきたわけです。
コロナウイルスのエラーを引き起こすAPOBEC酵素活性が強く
病気に強い人が淘汰されてきたと考えると自然です。

逆にウイルスが淘汰される循環

そしてコロナウイルス側も、
いたずらに細胞を刺激してサイトカインによる
APOBEC誘導が起きないように弱毒変化していったのかもしれません。
季節性コロナウイルスは、
動物由来感染症を離れて目立たないようにヒト―ヒト感染することで
生き延びるようになったコロナウイルスだと考えています。

私は、このような地政学的な理由から、
季節性コロナウイルスによる免疫やAPOBEC活性によって
日本の流行被害は小さくなったのではと考えています。

ウイルスの毒性が強くなってヒトの細胞が刺激され
APOBEC活性が強まると
ウイルス遺伝子にエラーが起きて不利になります。
ウイルス側としてはヒトの細胞をあまり刺激しない無毒化したものが
生き延びて淘汰されていくことでしょう。

新型コロナウイルスが流行してエラーを起こして廃れて、
変異型がやってきてまた流行する。
でも、そのたびに毒性が減っていった周期的な流行の繰り返しも
それで説明ができるかもしれません。
5波では、はっきりした「陽性者数と被害のリンク切れ」
が観察されました。
もちろん、それまでの流行波による獲得免疫も追加され
被害を減らしたことでしょう。

これからも新型コロナウイルス(SARS-COV2)が
ヒト―ヒト感染で生き延びるとするなら、
無毒の5番目の季節性コロナウイルスにならざるをないと
私が考える理由です。
2019年末にコラムでお伝えしたとおりです。
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11月7日の日経新聞の「コロナ再流行あるか」という記事内で、
国立遺伝学研究所の井ノ上逸郎教授の意見が紹介されています。
「第5波のウイルスはゲノムの変異をうまく修復できなくなり
自滅した可能性がある。
ただしこれは状況証拠を説明する仮説であり、実証はできていない」

前掲の松浦教授の意見と共通しています。


衆議院選挙の結果総まくり つづき

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 衆議院選挙結果の分析をご紹介します。
ねらい:
 今後のより意義ある選挙の実現に期待しましょう。
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「衆議院選挙の結果総まくり」は、
上野の分析を中心に以下のブログでご紹介しました。

その後いくつかの新聞報道がありましたので、
記録として留めておきたいと思います。

その1:日経新聞11月7日1面トップ記事
   「投票行動分析」「日本に潜む政治の分断」
今回の衆院選について共同通信社の出口調査のデータを用い、
世代別や男女別に選挙を実施したらどうなるかを試算してみた。
全国289の小選挙区について各層別に最も得票の多い候補者を割り出した。
比例代表は全11ブロックの各党ごとの回答数をもとに
ドント方式で階層別に選挙した場合の議席数を算出した。
当記事に基づき表は上野作成

区分

仮定計算結果の議席数と実数との差

自民

5野党

維新

40歳未満

296 +35

95 -26

45 +4

60歳以上

223 -38

    ?

  ?

女性層

230 -31

149 +28

46 +5

 

区分

小選挙区だけの仮定議席数と実数との差

自民

5野党

維新

40歳未満

215 +26

42 -23

17 +1

女性層

15  -56

91 +26

18 +2


自民党の支持は、若い世代に多く、高齢層と女性層で低くなっています。その理由について、以下のように解説されています。
若い世代は経済が成長せず、
社会保障改革が進まなければ将来負担が膨らみかねない。
この危機感が自民支持に傾く背景と考えられる。
改革を強調した維新が近畿を中心に伸びた要因とも言えそうだ。

埼玉大の松本正生名誉教授は
「30歳代は旧民主党への拒否感を持つ層が厚い」と指摘する。
民主党政権下で就職活動を経験した年代にあたる。
20歳代は「そもそも政治への期待値が低い」と話す。

一方で社保改革のあおりを受けかねない高齢者は
分配志向の野党への支持を強めたとみられる。
新型コロナウィルス禍で雇用や生活の打撃が大きい女性、
感染が広がった大都市部は政権不信が根強い可能性がある。
(上野注:掲載省略しましたが、
自民の都道府県別の比例代表の得票率は、
2017年比で近畿他の大都市部で下落しています)

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上野コメント:
投票者層により選択が異なるのは当然のことです。
それが確認できたことはこの分析の意義があります。
問題は、次の「投票に参加しない人たち」です。

その2:日経新聞11月4日 コラム記事
   「政治の危機」「不参画 民主主義危うく」

6割弱の人で日本のかじ取りが決まるようになって久しい。
衆院選小選挙区の投票率は2012年以降、4回連続で50%台だ。
今回は55.93%と前回17年の衆院選より2.25ポイント上がったものの、戦後番目に低かった。
かつては7割前後だった。
低水準が普通になったのは初めて60%を割った1996年からだ。
「候補者よりも政党を選ぶ」ともいわれる小選挙区制を導入した年だ。
党首や公約で選ぶやり方が原因なのだろうか。

中略

日本経済新聞社などの世論調査で、「支持政党なし」と答える無党派層は3割程度いる。
共同通信の出口調査によると、
今回の衆院選で投票した人のうち「支持政党がない」と答えて人は1割だ。
無党派層の多くが投票に行かなかったのが低投票率の理由とみられる。

政治参画に消極的な人が増えれば、
政党は資金力や票を持つ組織しか相手にしなくなる。
あるいは投票率の高い高齢者向けの政策を優先する「シルバー民主主義」か、
トランプ氏のように極端な支持層に訴える分断の政治を招くのか。
民主主義を脆くするのも強靭にするのも有権者の選択だ。
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上野コメント:
そのとおりなのですが、この状況はどうすれば改善されるのでしょうか。


縄文時代はなぜ1万年も続いたのか?つづき

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「縄文時代がなぜ1万年も続いたのか」をご研究いただきます。
 縄文人の自然との共生状態を知っていただきます。
ねらい:
 日本の歴史の素晴らしさを見直す必要があります。
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「縄文時代はなぜ1万年も続いたのか」につきましては、
2021.7.23の以下のブログで私見を述べさせていただきました。
上野則男のブログ: 縄文時代はなぜ1万年も続いたのか? (uenorio.blogspot.com)

このテーマにつきまして、以下の寄稿を見つけましたのでご紹介します。
ダイレクト出版㈱発行Renaissance Vol7掲載 
伊勢雅臣氏寄稿「SDGsは縄文文明に学べ」の抜粋です。
氏は、公益社団法人「国民文化研究会」理事、筑波大学非常勤講師です。
この論考は、広範な見識を基にして、
非常に分かりやすく解説されています。素晴らしい文章です。
したがって、原文のままをご紹介します。

「縄文時代はなぜ1万年も続いたのか」の答えは、
「縄文人の自然と共生する知恵のおかげである」ということです。

前略
【「持続可能性」の世界最古のお手本】
(上野注:そういうことなのですね!!)
しかしSDGsに取り組んでいる多くの方々は
「持続可能性」の世界最古、かつ最も長期間、持続したお手本が、
実はわが国にあることをご存じないようです。
それは縄文文明です。

環境考古学専門の安田喜憲・立命館大学環太平洋文明研究センター長は、著書「森の日本文化」の中で次のように述べています。
ーーーーーー
縄文文化が自然との調和の中で、高度の土器文化を発展させ、
1万年以上にわたって一つの文化を維持しえたことは、
驚異というほかない。
縄文文化が日本列島で花開いた頃、ユーラシア大陸では、
黄河文明、インダス文明、メソポタミア文明、エジプト文明、
長江文明など、農耕に基盤を置く古代文明がはなばなしく展開していた。

東アジアの一小列島に開花した縄文文化は、
こうした古代文明のような輝きはなかった。
しかし、これらの古代文明は強烈な階級支配の文明であり、
自然からの一方的略奪を根底に持つ農耕と大型家畜を生産の基盤とし、
ついには自らの文明を支えた母なる大地ともいうべき森を食いつぶし、
滅亡の一途をたどっていく。

それに対し、日本の縄文文化は、たえず自然の再生をベースとし、
森を完全に破壊することなく、
次代の文明を可容する余力を大地に残して、
弥生時代にバトンタッチした。
それは、共生と循環の文明の原点だった。
ーーーーーー
従来の文明観では、
旧石器時代に狩猟採集による移動生活を送っていた人類は、
1万2千年前ぐらいから世界の各地で農耕と牧畜を始めて
ようやく定住が可能となり、そこから文明が始まったと考えていました。

しかし、古代文明が生まれたチグリス・ユーフラテス川、
ナイル川、インダス川、黄河の流域はいずれも砂漠化しています。
森を切り拓いて畑にすれば、
樹木がなくなることで表面の土壌が失われてしまいます。
牧畜をすれば家畜が草の根まで食べてしまうので、
植生が失われ、土壌が劣化します。
これらの古代文明は自然との和を持たず、
それゆえ持続可能ではなかったのです。
(上野注:なるほどそうなのですね!!!)

この文明観から完全にはみ出しているのが縄文文明です。
約1万6千年前から狩猟や採集のまま定住生活を始めたのです。
そのために農耕と牧畜による自然破壊とは無縁でした。

【なぜ縄文文明は持続可能だったのか】
日本列島では海の水蒸気を含んだ風が高い山にぶつかって、
多量の雨や雪を降らせます。
年間降水量1700ミリは、温帯では世界トップクラスです。
豊富な水量に恵まれて、深く豊かな森林が列島を覆い、
木の実やキノコなどが豊富にとれました。
イノシシやシカ、ウサギなどの動物も豊富でした。

周囲の海は寒流と暖流がぶつかり合う世界有数の豊かな漁場をなし、
しかも急峻な山が複雑な海岸線を作り、
漁や潮干狩りには好適な入り江が各地にできていました。
この豊かな自然の恵みの中で、縄文人は農耕や牧畜などしなくとも、
狩猟や採集だけで定住生活を営めたのです。

とはいえ、何の智慧もなく、
ただ自然の恵みを受けとっていたわけではありません。
それぞれの食材の「持続可能性」をよく考えながら、
その恵みをいただいていました。

縄文時代の貝塚でシジミやハマグリの貝の断面の成長線を調べると、
全体の70%は4月から6月にかけて食べていたことがわかっています。
現代の潮干狩りと同様で、この時期が最も脂がのっているのです。

春にはイワシ、ニシン、
夏はアジ、サバ、クロダイ、秋はサケ.ブリ等々、
季節によって獲れる魚も多種多様でした。

さらに秋にはクリ、クルミ、シイ、トチなどの木の実を集め、
これらを長期保存して食べていました。

冬は脂肪を蓄えたキジ、ヤマドリ、カモなどを狩ります。
イノシシやシカなどの大型動物の骨も出てきますが、
幼獣の骨はあまり見つからず、また歯の分析からは、
冬の季節にしか捕獲されていないことがわかっています。
それらが絶滅しないよう、他の食物の少ない冬に限定し、
成獣だけを獲っていたのです。
ともに生きる自然への深い配慮が窺われます。

縄文遺跡からは獣60種類以上、魚70種類以上、
貝350種類以上の残滓が見つかっています。
これだけの多種多様な食材のそれぞれを絶滅させないように
「どこでいつ、どれだけ獲るべきか」を考えながら狩猟採集していました。

自然の荒廃を無視して森林を切り拓き、麦だけを植え、
羊や牛だけを育てる古代の農耕牧畜より、
はるかに複雑広範な知識を、縄文人たちは持っていたのです。
(上野注:スバらしいことですね!!)

食材の多様性をさらに大きく広げたのが、土器でした。
土器による煮炊きによって、木の実のアクを抜き、
植物の根や茎を柔らかくして食べやすくし、
魚や獣の肉の腐敗を防げるようになったのです。
土器は通気性や通水性によって表面の水分が気化して低温を保つので、
食物の長期保存を可能としました。

実は世界最古の土器は日本列島で見つかっています。
青森県大平山元遺跡から出土した16500年前の土器です。
世界の他の地域では、
南アジア、西アジア、アフリカでの最古の土器は約9千年前、
ヨーロッパが約8千5百年前で、
これらに比べると日本の土器は飛び抜けて古いのです。

【神話、言語、脳に表れた和の自然観】
こうして豊かな自然に抱かれて1万年も過ごしていたら、
人間も自然の一部であるという生命観を持つようになるのも
当然でしょう。

日本画家で日本神話に関する著書も多い出雲井晶さんは、
次のように指摘されています。
ーーーーーー
古代人は、ものをただの物体とは見なかった。
そして、すべてを神の命の現われ、神の恵みと視た。
すべてのものに神の命を視たからこそ、
ありとあらゆるものに神の名をつけた。
例えば、小さな砂つぶにさえ「石巣比売神(いわすひめのかみ)」
木は「久久能智神(くくのちのかみ)」
山の神は「大山津見神(おおやまつみのかみ)」
というように、それぞれにふさわしい名がつけられている
(「今なぜ日本の神話なのか」)
ーーーーーー

縄文人が草花も自分たちと同じ仲間とみなした生命観は、
日本語に表れています。
目と芽、鼻と花、歯と葉、頬と穂など、
人体と植物の間で語源が共通しているのも、
我々の先祖は植物も人体も同じとみなしていたからだ、
と万葉学者の中西進氏は指摘しています。
(「ひらがなでよめばわかる日本語」)

また、西洋人や中国人、韓国人などは、
虫や動物の鳴き声、波や風、雨の音、小川のせせらぎなどを
雑音や機械音と同様に右脳で聞くのに対し、
日本人は言語と同様に左脳で聞いていることを、
東京医科歯科大学の角田忠信名誉教授が発見しています
(「右脳と左脳」)。
日本人は、虫の音、小川のせせらぎを「音」としてではなく、
自然の「声」として聞いているのです。(注)

縄文文明の「持続可能性」を実現したのは、
このような和の自然観でした。

「右脳と左脳」についての上野注:
これは湯川秀樹先生もびっくりされた角田先生の大発見なのです。
自然の音を左脳で聞くのは、
音の意味を解釈しようとしているからなのです。
角田先生の調査によると、なぜかこういう脳を持っているのは、
世界でポリネシア人と日本人だけなのだそうです。
正確には、ここでいう日本人とは、日本語族のことで、
幼児期に日本語で育った人です。
ポリネシア語と日本語に共通しているのは、
母音中心言語だということです。

むすび
縄文人のまさに「生活の知恵」はよく分かりました。
しかしなぜそのような知恵が生まれて、
かつ全国に一般化したのでしょうか?
不思議です。

それと自然との共生は素晴らしいことですが、
生存持続能力としては限界があったことも確認しておく必要があります。
縄文時代人は、日本全国で、2万人からスタートし
縄文中期に26万人に達しましたが、縄文晩期に8万人に急減しています。
寒冷化によって、
この生活様式ではその程度の人口しか維持できなかったのです。
かろうじて生き延びた状態でした。
生き延びられたのは、
寒冷化の終了とかも含め、奇跡に近い状態だったのかもしれません。

「ペーパレス」論と「ペーパ賛成」論

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 ペーパレスについて考えてみましょう。
ねらい:
 印刷物としては最後は何が残るのでしょうか?
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11月7日の日経新聞の文化面に
直木賞作家篠田節子さん(1955年生まれ)の「ペーパレス」という
寄稿がありました。
なるほど、と思いましたので、その一部をご紹介いたします。

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令和の時代にあってアイデアの出所も取材もネットで、というのは、
大いなる誤解で、テレビや新聞でさえなく、情報が古びているとはいえ、まずは単行本となるのは、おそらくい吟味され、検証され、秩序立てられた内容が、記憶に残りやすく理解しやすいという理由だろう。
(上野注:これだけ長い1文章なのにすんなり読めるのは、
さすが直木賞作家の腕なのでしょう)

とはいえ、本は場所を喰う。それだけではない。
年老いた目に小さな活字は過酷だ。
もともと強度近視なので、ごく緩い度数の読書用眼鏡を作ったが、
それでも小一時間で目の奥が締め付けられるように痛み出す。

そうした紙媒体の欠点を電子書籍が容易く解決してくれる。
読書用端末を入手したこともあり、目は格段に楽になった。
採光の良くない場所でも快適な読書ができ、持ち歩きに適し、
もちろん本棚を壊され空間を占領されることもない。
(上野注:前段で、本があふれて本棚が崩れたことが紹介されています)

ところが、どうやっても資料本には使いないのだ。
しおりや検索の付箋や様々な機能が付いているというのに、
蛍光ペンや大小色とりどりの紙付箋、書にしがみつくのは
紙読書にしがみつくのは、物霊に呪縛された旧人類の限界か?
ツールは進化しても、情報を整理し理解し思考する人の頭は、
時代やツールに適応して数十年単位では進化してくれない。

導入部から起承転結を追って読み終わる、
小説のような「線の読書」はともかくとして、
構造を理解し情報を吟味する「面ないしは立体の読書」となると、
電子書籍は甚だ使い勝手が悪い。

論旨のまとまりを捉えるのに、たとえば提示された事例が、
本の厚みのどのあたりのページ、どのあたりの面に位置しているか、
といった空間的な記憶が、理解することに関係しているようなのだ。
理解や思考のための脳内の3次元地図と紙媒体の特定の活字の位置が緩く、しかしかなり確信的に結びついている気がするのだが。
(上野:それはよく分かります。毎日読む新聞だって、
1枚ずつバラバラにしてしまうと、読む頭が壊れます)

内容の空間的把握はそのまま、
救いがたく乱雑で本棚を壊して書籍が溢れている書庫にも持ち込まれ、
四半世紀も昔に読んだ本を動物的な勘で探し出すことを可能にしている。
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この後、電子媒体の良さにもう一度触れ、
でもそれが、何らかの事故で一挙に失われたら大変なことになる、
ということを述べています。
これは付け足しで、言いたいことはそれまで述べたことです。

要するに、紙媒体と電子媒体は一長一短で、紙媒体の有効性は残る、
という主張です。

篠田さんの言われる紙媒体の有効性は、
思考や発想の仕組みが紙媒体に結びついてできあがったからなのです。
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若干脱線です。
昔、私は画面で文字入力が可能になった頃、
「発想、構想するときには、紙でランダムにメモ書きしないとダメだ」
と富士通に勤めていた弟に言うと、
「自分は画面でできる」と言われました。
「そんなことあるか」と思いましたが、
今は画面で構想ができるようになりました。

上野が画面で新構想の検討をした例

【当初テーマ:マイクロサービスシステムの利用促進】

【構想検討】
以下のように考えを進めました(画面のメモ)。

保守業務の低生産性原因
テスト工程の肥大化である。証明する。
その原因は影響範囲が広いからである。

脱低生産性の道が見えてきた
ネックはあるが、それを突破する気があるかどうかである。

 ネック

ニコンシステム

米国Staple

「外部委託」責任不明

✖ 不問

✖(内製している)

「ブラックボックス化」

✖ 見える化

「現場任せの風潮」

✖ 介入

「現場の抵抗」

✖ 突破

✖ 米国ではありえない


野村證券の再構築の効果は?NRI事業本部人員が半減したのではないか?

そもそもは、日本の外部依存体制が原因。
これが根本問題。

受託企業には改善のメリットがない。どうするか?
発注企業に焚きつけるしかない。
しかし、火中の栗を拾おうとするか?

改善の手順
 診断 簡易診断は?経済産業省のDX審査は?

システム部門または情報子会社で
業務量調査の実施または分析実施
 保守業務のウェート把握  問い合わせ対応をどうするか?除く方向
 部門・チーム間比較
 まずはテスト工程比率 
 できれば影響調査工数も 複雑な影響のせいで仕様も複雑

生産性の測定 
 これは省略 実施すれば改善効果の予想ができる。
 実施しなくても「半減」で効果想定可能。

対策は保守業務の改善ではなく再構築
現状の低生産性は不問とした方がよい。
再構築手順を提示する。これが2025年の崖対策である。

ここまでの検討で、提案書作成に着手しました。

【作成した提案書】
以下に検討結果作成した提案書の項目を示します。
テーマ:
 「2025年の崖」対策としてのマイクロサービスシステムの勧め
1. MSSが新システムアーキテクチャーの本命
(1)米国の先進事例
(2)MSSが生産性改善の有効な手段になる根拠
2. MSSの有効性
(1) MSSとは
(2) MSSの有効性
(3) 影響調査・テスト工数削減効果

3.MSS有効活用の課題
4.MSSへの移行手順
5.MSSでも必要な保守業務運営手法
 これをお客様にアピールしたいのです。
(1)システム構造の見える化手法(随時変化していく見える化)
(2)見積り手法(変更機能規模の把握手法)
(3)要件定義手法(影響範囲の見極めを含む)
(4)変更仕様作成手法(ノーコード方式でもこれは必要)
(5)テスト手法(MSS適用効果の源泉であり熟慮が必要)
(6)保守業務の生産性把握手法(これのないビジネス業務はありえない)
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本題に戻ります。

したがって、初めから電子書籍で育った人は、
電子書籍で、篠田さんの言われる「面ないしは立体の読書」
もできるようになるのでしょう。

しかし私は、別の面で紙媒体・印刷物の利用を
前提としていることがあります。
それは、研修の副教材で「MIND-SA基本手法ハンドブック」や
「目的達成手法コンパクトガイド」というものです。
前者はA4版46頁、後者は同じくA4版で20頁の冊子です。
手法の詳細がギッシリ印刷されています。

これを参照しながら、研修し、事後実務でもこれを参照するのです。
先日リモート方式で研修した際に、この冊子の良さが判明しました。
この副教材は電子化もされているのですが、
画面では主テキストか演習の成果物を表示しています。
そのときに副教材のガイドの画面と行ったり来たりしないでも、
手許で副教材を開いていればよいのです。
画面と紙媒体の同時併用なのです。
今のところ、自由に書き込みのできる点も紙媒体有利です。

しかし考えてみれば、
これらもだんだんにペーパレスの方向に行くのかもしれません。

本項の結論は、「何が何でもペーパレスではない」
「その時々で自分がいいと思う方法を選択すればよい」
ということです。

印刷物としては、最後まで残るのは何なのでしょうか?

2021年11月2日火曜日

衆議院選挙の結果総まくり!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 今回の衆議院選挙の結果を振り返ります。
 いろいろなことが分かります。
ねらい:
 この結果は、今後にどう生かすのでしょう?
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1.全般の状況














維新の会が増えた分、自民と立民が減少した形になっています。

立民は、小選挙区では、野党共闘の効果で9議席増でしたが、
党の人気投票である比例で大幅減となってしまいました。
アンチ自民の象徴で、票を集めなければならないのに、
国民にアピールする政策を打ち出せなかったのです。
枝野代表の偉そうな態度も、
「大衆」の支持を得られなかった原因なのかもしれません。

公明と国民は善戦で、国民は大組織基盤の共産を上回ったのは
スゴイことです。
共産党の小選挙区1人を守ったのは、
沖縄1区で野党統一候補となった共産党の赤嶺政賢氏です。
伝統的労働者政党社民はかろうじて1名確保した
という状況です。

自民が善戦したのは、コロナの感染者数激減が貢献したと思われます。
感染が拡大していれば、野党はここぞとばかりに叩けたのです。
代わりの争点は、「分配」論になり、消費税軽減や撤廃論では
「大衆」はなびきませんでした。

大きな争点がなかったことは、戦後3番目に低い投票率55.93%
となって表れています。

2.日本維新の会の大躍進
今回の選挙の勝者は唯一「日本維新の会」です。
維新の会は11人が41人になりました。
地元近畿では自民と対決の15選挙区で全勝しました。
スゴイことですね!!
因みに、近畿の残り4選挙区の勝者は公明党で、
この選挙区には維新は候補者を出していません。
近畿では、自民・立民は一人の当選者もいないのです。

しかし、以下のグラフでご覧のように、
維新の会は近畿だけでなく全国的に票を集めています。
なぜか、東北は波に乗っていませんね。

【各ブロックの比例代表得票率】 上野作成



全国的人気の背景は、分かりやすい明確な主張があるという以外に
橋下徹さんがテレビで大活躍していることも
貢献しているのではないかと思います。

3.女性当選者の年齢分布
1.でご覧のように、残念ながら女性の当選者率は1割以下です。
2017年選挙の10%を下回っています。
2009年くらいから横ばいで、女性の比率向上は進んでいません。

 この図の出典;HUFFPOST




女性当選者の年齢分布を見てみました。

60代が最多で50代後半がそれに次いでいます。
党派別の傾向はみられません。
30代は3人ですが、最年少は自民の鈴木貴子さん35歳です。

鈴木貴子さんは、
北方領土関係の収賄罪等で起訴された鈴木宗男氏の令嬢で、
2012年、NHKのディレクターを辞職して、
公民権停止の父に代わって衆議院選挙に臨みました。
その時は落選しましたが、2013年に繰り上げ当選となりました。
その時点で、最年少議員でした(27歳)。





父親に似ず美人ですね。



立民の30代2人は、民放記者と民放アナウンサー出身です。
30代の女性議員はなぜかみな放送関係出身です。

最高齢は、立民の73歳阿部知子さんですが、
東大出の医師です。なぜ議員になられたかは分かりません。
徳洲会の病院長をされたことがきっかけになったのかもしれません。

この状況からすると、
今後女性議員が増えていきそうな傾向はみられません。

4.最多得票数と著名人の得票数
得票数の多い人を確認してみました。
全国トップは河野太郎さんでした。
20万票を超えているのは河野さんだけです。

著名人以外に、15万票以上の人は掲載しました。
15万票以上獲得者は河野さん以外に5人です。
野田さん以外は自民党で当選数回のベテランです。
最高は、鈴木俊一さんの当選10回です。





































単純に票の大小を比較することはできません。
「1票の格差」問題で、その選挙区の大小があるからです。
安倍さんや、玉木党首、前原元党首が10万票に達してないのです。

甘利さんは、5500票差で敗れ、幹事長退任となりましたが、
枝野さんは、時点との差6千票で何とか面目を保ちました。
神様の采配でしょうか。

5.石原兄弟
石原伸晃さんが東京8区で、宏高さんが東京3区で落選しました。
長兄の伸晃さんは、自民党の幹事長や大臣も歴任された「大物」なのですが、
立民の吉田晴美さんに敗れました。
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Wikipedia
◆吉田 晴美(よしだ・はるみ) 立教大学文学部卒業。
英国立バーミンガム大学大学院にて経営学修士号(MBA)取得。
投資・証券会社の会社員として、東京・シンガポール・ロンドンで勤務。
中小企業の発展に注力してきた。
その後、小川敏夫法務大臣の大臣秘書官を務める。
民主党(当時)の国会議員候補者公募に応募し政治の世界に。
現在では、経済・経営を専門として、
早稲田大学エクステンションセンター、法政大学兼任講師、目白大学准教授、
青山学院大学非常勤講師を歴任。現在は神田外語大学特任教授など、
教育に従事している。
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伸晃陣営はこういう新人相手に負けるわけはない、と
はじめは高をくくっていたのでしょう。油断ですね。
比例でも、接戦率が低く当選できませんでした。
残念なことです。

宏高さんの方は、油断ではありません。
相手の立民松原仁氏は、地元で強い地盤を持っていますから、
接戦は予想していたでしょう。
10月30日、最後の夜、地元の大井町駅前に
岸田さんも駆けつけて応援するくらいでしたから。
地元では「宏高さんは、何もしていないじゃないか」
という評価もあったようです。
残念ながら8千票差で敗れました。
しかし、こちらは比例で復活しました。

6.海外論調
各国とも概ね無難な評価で、上げも下げもしない論調のようです。
そういう結果でしょうね。
中国・韓国の一部に、維新の会は右翼政党でその躍進は懸念材料である、
という意見があるようです。

2021年11月1日月曜日

「アイデア資本主義」とは何?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「アイデア資本主義」の内容をご紹介します。
 少し、その批判もさせていただきます。
ねらい:
 その着眼にご関心を持たれましたら、
  ぜひ本書をお読みください。
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「アイデア資本主義」とは、若干32歳の英才(かつ美人?)
国際大学GLOCOM主任研究員大川内直子さんの著書名です。



この著書では、
これまでの人類の歴史での「資本主義」がどう変遷してきたか、
とこれからは資本主義はアイデア資本主義になる、
という2点の主張をしています。

32歳の若さで、こういう主張がおできになるということは驚きです!!

検討の前提として、著者は、資本主義を以下のように定義しています。
「将来のより多い富のために現在の消費を抑制し投資しようとする心的傾向」
したがって、その定義の資本主義は、農耕時代から始まるのです。
収穫した穀物を全部食べてしまわないで、
来年以降の収穫の種として保存(投資)するからです。

この定義は、一般の用語法とは異なり、
言うなれば、一般用語法よりも広い定義となります。

1.資本主義の変遷と限界
著者の定義の資本主義の投資対象は、
空間的、時間的、生産・消費のいずれの面でも、
その限界に達していて拡大余地がない(フロンティアがない)状態である、
とされています。

1)空間的
 全地球を網羅してしまい未開の地はない。
2)時間的
 日、年単位の先を超えて、法人は未来永劫を目指すようになっている。
3)生産・消費
 現状では、ほとんどのものが需要超過になっていて、
 生産・消費の拡大余地(フロンティア)はほとんどない。

この点について、ポイントをついた論旨展開をされています。
著者の専門は文化人類学で人文科学系なのですが、
本書の展開は、非人文科学的で素晴らしいものです。

第1部 資本主義のフロンティアの消滅
第1章 資本主義の歴史の紐解きかた
 資本主義の再定義
 資本主義と計算と時間
 資本主義は拡大を志向する
 フロンティアの開拓と消滅の歴史

第2章 空間のフロンティアとその消滅
 資本主義の発生
 フロンティアとしての地中海(12-15世紀)
 フロンティアとしての大西洋・新大陸(16-18世紀)
 フロンティアとしての太平洋。アジア(19-20世紀)
 フロンティアとしてのアフリカ(21世紀)
 新たなフロンティアとしての宇宙

第3章 時間のフロンティアとその消滅
 時間的射程とは何か
 時間的射程の拡大:1日から1年へ
 時間的射程の拡大:一生、そして子孫へ
 時間的射程の拡大:ゴーイング・コンサーンへ

第4章 生産・消費のフロンティアとその消滅
 生産・消費のフロンティアとは何か
 生産・消費と資本主義
 産業革命と資本主義
 イノベーションとコモディティ化のサイクル
 消費のフロンティアとその消滅
 労働力のフロンティアとその消滅
 資源のフロンティアとその消滅

要するに、資本主義は過去の延長では拡大の余地がない、
というご託宣です。

第2部 アイデア資本主義の到来
そこで、これからは、アイデアが資本になる、
資本主義の投資対象がアイデアになる、という論の展開です。
著者はアイデア資本主義を以下のように定義しています。
「(アイデアが生産手段の前駆体としての位置づけを脱して)アイデアそのものが独立した投資対象になっている状況」

アイデアが、空間・時間・生産・消費面で限界に達した投資対象の
新たな投資対象となる、ということです。

アイデアが重要になるという発想自体は、目新しいものではなく、
堺屋太一さんの「知価社会」とも同じです。
工業社会が終わる・知価社会が始まる」1985年刊行。
この考え方に反対する人はいないでしょう。

著者は、その事象を資本主義の発展形として捉えているところが
新しい発想なのです。
この点については、批判する点はまったくありません。

第2部の最後の第4章である「資本主義のこれから」では、
どのような主張をしているのでしょうか。

資本主義を脱すべきとする議論の背景には、
経済成長に対する懸念の他に、
資本主義自体が悪であるという考えがあります。

たしかに、資本主義が成長と効率を志向した結果として、
環境破壊や公害、経済格差の拡大などが引き起こされてきたのは
紛れもない事実です。
こうした負の側面を解決していくのは
私たちに課せられた使命に違いありませんが、
だからといって欠点があるからシステムごと取り替えようというのは
いささか安易な考えであるように思われます。

それというのは、
第一に資本主義は一方で経済格差や環境破壊といった
諸問題を引き起こしてきましたが、
他方で様々なメリットももたらしてきており、
私たちは日日々その恩恵に預かっているのです。
(中略)
あくまでも強調したいのは、
物事の正負の両面を正しく評価する必要があるということ、
そしてそれは資本主義においても例外ではないということです。
資本主義自体は善を志向しているわけでも、
悪を志向しているわけでもありません。

とありますが、ここでの「資本主義」は、著者の定義の資本主義ではなく
(著者の定義の資本主義であれば、人類の生存の知恵ですから、
それが問題を引き起こすということはありません)、
民間資本が経済活動の主体となる経済体制のことを指しています。
民間資本のやりたいままに放っておくといろいろな問題を引き起こす、
ということです。

したがって、この論考の「資本主義」は
「民間資本が経済活動の主体をなす資本主義」
あるいは「民間資本が活動の主体となる経済体制」
とでもすべきです。
ということは、この議論に入る前に、
「現代の資本主義 民間資本が経済活動の主体をなす資本主義」
という章を設けて、その解説をすべきなのです。
そうしないと読者は、頭の中が整理できません。

そうであれば、この論考の続きとして、
以下の記述はすんなり理解できます。

例えば、環境問題への解決策として、
地球の資源をコモンズ(共有財産)として共有し、
自治的に管理することが提案されています。
漁業において漁場がコモンズ的に管理されている例もあることですし。

より一般的なのは、
ガイドラインを制定したり排気ガスの量を制限したりするアプローチ
かと思いますが、これも経済活動を市場の外から規制するという点で、
資本主義に対して抑制的な手法です。
一方で市場原理を活かしながら
環境問題に対応しようとするアプローチも有効です。
例えば環境税のように外部不経済を内部化するやり方は
経済的手法と呼ばれます。
(中略)
個人一人ひとりが環境意識を高め、
より環境負荷の低い製品を選択することは、
企業が環境負荷の低い製品開発に取り組むインセンティブとなります。

このように、環境の汚染を防止する方法は一つではありません。
資本主義が続いていく中でも、
最大多数の最大幸福や持続可能性を実現するような
多元的なアプローチをバランス良く組み合わせていくことが重要であり、
これによって
資本主義を適切にコントロールしながら発展させていくことが、
資本主義を良い方向へアップデートするための
建設的かつ現実的なアプローチです。

あらためてそういう目で、
上記の論考「資本主義のこれから」を確認してみますと、
特に新しいことを主張しているのではないことが分かります。

本書の価値は、以下のとおりであると理解いたしました。
(◎、〇、△は私なりのその評価です)
◎1)「将来のより多い富のために現在の消費を抑制し投資しようとする心的傾向」
   が歴史的にどう発展してきたのかを明らかにした。
〇2)これからは、アイデアが資本になる、という主張。
△3)現在の資本主義は、
 「将来のより多い富のために現在の消費を抑制し投資しようとする心的傾向」
 という観点から見て、自然の発展形であり、
 手を加えて有効化が可能である、という見解。
 
3)の掘り下げはもっとすべきです。
現在話題になっている「新しい資本主義」もその検討の一環です。
そのテーマは、本書の手には負えません。
著者の今後の検討にも期待いたしましょう。

「新しい資本主義」とは何?

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 「成長と分配の好循環」を実現する「新しい資本主義」は
  どうあるべきなのかを検討します。
ねらい:
 「人の言うことをよく聞く」と自慢する岸田総理には
 こうと決めたら信念を持って突き進んでいただきたいですね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「新しい資本主義」は岸田総理が打ち出している言葉です。
現在のところは、言葉先行で一切その中身は見えていません。
写真の出典:東洋経済オンライン 












ネットでは、このような揶揄もされている始末です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
山崎 元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
岸田首相の「新しい資本主義」がキモいとしか言えないこれだけの理由

気持ちの悪さには複数の要因があるのだが、
一番不気味なのは、「新しい資本主義」という言葉を唱えている本人が、
その内容を分かっていないのではないかと思われることだ。
しかも、その当の人物が、わが国の首相なのだ。国民は不安になる。

岸田氏は、新しい資本主義について、さまざまに表現してきたが、
まず、言っていることが意味不明だし、
次には、言っている内容がブレている。
つまりは、何をしようとしているのかが分からない。
しかし、やみくもに何かを変えようとしている。

「新しい資本主義実現会議」は中身がないと断言できる根拠
岸田氏が、
「新しい資本主義」について確たる具体的な内容を持っていなかったことは、
「新しい資本主義実現会議」という何とも奇妙な有識者会議が、
総選挙を前にした内閣府の下に設立されたことに如実に表れている。

内閣府が10月15日に発表した文書を見ると、会議の開催について、
「新しい資本主義実現本部の下、
『成長と分配の好循環』と『コロナ後の新しい社会の開拓』
をコンセプトとした新しい資本主義を実現していくため、
それに向けたビジョンを示し、その具体化を進めるため、
新しい資本主義実現会議を開催する」とある。

中身が何もないので、「それに向けたビジョン」などという、
この種の文章としては世にも情けない言葉を使う以外に
書きようがなかったのだろう。

成長と分配の好循環を「これから検討」それでは絶望的に中身がない

そもそも、「新しい資本主義」などという偉そうな言葉を使う以上、
そのビジョンは言っている本人が明確に提示して方向性を示すべきだ。
「成長と分配の好循環」にも「コロナ後の新しい社会の開拓」にも、
願望はあっても中身がない。

「成長と分配の好循環」は与党も野党も望んでいることであり、
「どう実現しようとするのか」を論じる以外に
お互いを区別するポイントはない。
それをこれから有識者会議で検討しようというのだから、
岸田首相自身には絶望的なまでに中身がない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
では、岸田総理の代わりに、ここで考えてみましょう。
今回は、まだその第1版です。

そもそも資本主義は、
「資本制企業が
物財やサービスの生産・流通の主体になっている経済体制」
のことを指しています(ネット「コトバンク」)。

目指すべき目標実現のために、
その経済体制を変更する「新しい」資本主義としては、
以下の3つの方向が考えられます。
1.資本による自由な活動の制限を強化する。
2.資本による自由な活動をより積極的に支援する。
3.その双方を並行実施する。

目的が『成長と分配の好循環』だとすると、
「1.資本による自由な活動の制限を強化する」ことは考えられません。
「2.資本による自由な活動をより積極的に支援する」
の対策によることになります。

この目的では、成長の実現が優先します。
そのための施策を検討します。
分配は、資本の行動による面よりも国の施策による面が大きいものです。
今回はこの点の検討は除外します。

1.規制の解除
日本で成長を阻害している要因は、各種の規制です。
その規制を原則廃止します。

(1)解雇規制の解除
最大の規制は、解雇規制です。
原則として解雇に対する規制を撤廃します。
解雇規制があるために、
経営者は不必要な従業員を抱え込んでいるのです。
収入が限られていますから、分け前としての給与は低くなります。
解雇を原則自由にする代わりに、セーフティネットを大強化します。
1)転職のための再教育制度の強化
2)会社都合解雇の場合の失業保険支給期間の再教育機関内延長

この論点につきましては、以下のブログで多少敷衍しています。

(2)出店規制の解除
現在も、大規模小売店舗の出店規制があります。
考え方としては、出店の規制は完全になくし、
その出店により影響を受ける地元の中小商店は、
救済ではなく、転廃業を支援するようにします。
 転業のサポート、廃業支援金の支給、
 廃業の場合に年金の割り増し支給、などを行います。
他の業種の場合も同様とします。

(3)新規事業の規制撤廃
過去にヤマト運輸の宅急便は長く認可されませんでした。
タクシーの相乗りは、
ようやくこの11月から認められることになりました。
まだまだ、本来は利用者・消費者のためになる事業や事業方法が、
許認可されないということが起きているようです。

現在何が許認可されていないかを調査して、
その撤廃の計画を作るべきでしょう。

影響を受ける企業の救済はしません。
従業員は前述の解雇対策で対応し、
事業者は転廃業支援で対応します。

2.成長産業の基礎技術の開発支援
民間の資本では、手に負えない基礎技術の開発に対して、
従来以上の人材・国家資金投入をします。

岸田構想では、以下の3分野が挙げられているようです。
1)先端科学技術
2)クリーンエネルギー
3)デジタル分野

こういうことは、今までも行われてきているのですが、
新資本主義というなら、積極的な工夫が必要です。

基礎技術の研究開発をいかに実用的な応用開発に結び付けるかが
知恵の絞りどころです。
成功している「資本」の知見をどうすれば活かせるかが課題でしょう。

2011年10月の日経新聞「私の履歴書」で発表された
吉野彰さんの旭化成における成功例などが参考になります。
 ・研究開発の目的を明確化する。
 ・研究は2年間で成果がでなければ打ち切りとする。
 ・研究では常に実用を意識する。
 ・応用開発は用途を絞り込む。
 ・応用開発では他社とも連携する。
 ・他部門の協力を受ける。