目的:
米国研究者による「中国脅威論」を確認いただきます。
習近平の戦略は歴史的にみると行き詰まりつつあることを確認します。
バルト海諸国や東欧諸国も中国との取引を抑制しだしている。
ねらい:
早く、「無法者」がいなくなることを期待しましょう。
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「ラストエンペラー 習近平」は、
米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問である
「ラストエンペラー 習近平」は、
米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問である
エドワード・ルトワック氏の近著です(文春新書2021年7月刊)。
国際戦略家から見ると、中国は危機的状況であると主張しています。
その論を以下のように展開しています。
1.前提の確認
習近平は2012年に党の総書記に就任
国家主席、党中央軍事委員会主席、国家軍事委員会主席を兼務。
すべての国家権限を集約している。
2018年3月に国家主席の任期を撤廃し、
終生国家主席であることを可能にした。
2.2000年代から、中国は外交政策をころころと変えている。
これは弱みを抱えている証拠である。
その外交政策は、以下のように変遷している。
1)チャイナ1.0 平和的台頭 2000年~
2001年、WTO(世界貿易機関)加盟を始めとして、
世界の一員として国際法を順守して経済発展する姿勢を示していた。
そのため、先進諸国から多くの支援を受けることができた。
2)チャイナ2.0 対外強硬路線 2009年~
リーマンショックを機に各国が景気後退するなかで、
中国は強大な独裁力でいち早く立ち直った。
その結果で自信を持ち、
「小国は金で黙らせたり言うことを聞かせることができる」
と過信した。
領土や領海で、それまでの国際的な取り決めを覆す主張を開始した。
その最たるものが、「南シナ海は中国のものだ、
小国は大国の言うことを聞け」という理不尽な主張である。
日本に対しても尖閣諸島の領有権についての主張を行った。
これに対して、周辺国は当然ながら反発し、
日本、インド、オーストラリアを含む反中国ネットワークが形成された。
3)チャイナ3.0 選択的攻撃 2014年秋~
チャイナ2.0の失敗に気づき、全面対決ではなく
「抵抗の強いところでは攻撃を控え、
抵抗がないところには攻撃を加える」戦略に転換した。
日本やインドに対しては、矛先を収め、
フィリピンに対しては、南沙諸島近辺で埋め立てや基地建設を続けた。
これによって、フィリピンを敵に回すことになってしまった。
また、米国とは2015年9月に開かれた米中首脳会談で、
「二つの大国」で世界を仕切ろうという持ちかけたが拒絶されている。
しかし、そのままの路線で選択的攻撃を継続した。
4)チャイナ4.0 全方位強硬路線 2020年~
スウェーデンと、スウェーデン国籍の書店経営者に対する対応でもめて
スウェーデンは中国との取引を行わない決定をするまでに関係が悪化した。
インドに対しては、国境で紛争を起こしインド兵20人を殺害した。
インドはこれに対して、全面的に中国排除方針を打ち出した。
ベトナムに対しては、中国の主張する海域でベトナム漁船を沈没させている。
オーストラリアに対しては、
香港やウィグルの人権問題に言及することに対して
豪州産品に対して高関税をかけるなどをした。
また、「香港国家安全維持法」(国家からの離脱、
転覆行為等の犯罪を犯した場合、最低3年、最高で無期懲役が科される)では、
香港人以外の世界のすべての人間を対象にしている、
とんでもない法律なのである。
「内政干渉するな」というのは「中国のルールに他国も従え」
と言っているのである。
この強硬策の背景には、中国がいち早く強権によってコロナの拡散を防いだという自信があったのではないか。
3.全方位強硬路線の結果、世界の過半の国を敵(非友好国)に回すことになった。
オーストラリアは中国との戦いの最前線にいる
(輸出の3分の1が中国なのに)。
インドには、米国が各種の軍事力強化支援を行っている。
米国、インド、日本はベトナムの支援を行っている。
クアッド(日米豪印戦略対話、2006年の安倍総理の発案)の活動も活発化し、
海軍の連携を強めている。ここにカナダ海軍も加わりつつある。
フランスも、クワッド4国との海軍合同演習をインド洋北東部で実施した。
フランスのフリゲート艦は台湾海峡を通過している。
(中国はこれに対して抗議を行っただけで、制止する能力はない)
ドイツの戦艦も南シナ海にやってくる。
ロシアは中国と紛争を起こしているインドやベトナムに兵器を供給している。
なぜこのような稚拙な戦略を取るのか、について著者はこう述べています。
中国は「大国は小国に言うことを聞かせることができる」と考えている。
実際はそうではなく「大国は小国に勝てない」のである。
それは、大国と小国が争うと、他の国が小国側に立つからである。
他の国は、自国に対抗してその大国が強くなってもらうと困ると思う国と
「明日は我が身」と心配する周辺国とである。
ナポレオンに対抗したワーテルローの戦い、
アメリカ独立戦争、にその例がある。
そのことが分かっていない中国首脳部である。
香港への弾圧は、中国と他のすべての国との対決の様相を示している
(中国を支援するのは、ベネズエラ、パキスタンぐらいだろう)。
4.米中、どちらが強いか。
1)軍事力
実際の戦闘能力としての海軍力は圧倒的に米国優位である。
中国軍は海軍も陸軍も実際の戦闘経験がない。
2)製造業の能力
中国の企業はチームワークにより開発・製造する能力が弱い
ジェットエンジン開発の後退などがその例である。
3)テクノロジーの能力
戦略分野への集中投資と壮大なスパイ戦略によって急速に強化している。
米系企業は、技術流出よりも目先のビジネスを優先させた
(本書では触れられていないが日本企業も同様である)。
しかし先進企業でも昨今はようやく事の重大さに気がつき、
対応を始めている。
4.習近平の分析
経歴:
父親は、中国共産党軍が逃げ込んだ中国きょう西省を守っていた勇士だった。
中国建国後、国務院副総理の要職に就いたが、
毛沢東の主導権争いに巻き込まれ、16年間も投獄や拘束を受けた。
文化大革命では、その子習近平も糾弾され、4回も投獄の目に遭っている。
その後寒村に下放され、洞窟に寝泊まりさせられた。
姉は餓死している。妹も下放され食うや食わずの生活をした。
習近平は、共産党に忠誠を尽くすことで認められ頭角を現し、
順調に出世し、2012年11月に総書記に就任した。
分析:
習近平の一家をひどい目に遭わせたのは毛沢東一派であるのに、
毛沢東を崇拝しているのは、常人の感覚では理解できなません。
その理由を筆者はこう見ています。
幼児虐待の専門家は、こう言っている。
幼児虐待を受けた子供は、自分が間違っていたから親に叱られているのだ、
と考え、今よりももっといい子になろう、親の言うことに従い、
「正しい行い」をすることで許しを得よう、と考えてしまうのである。
習近平の場合はまさにこれに当てはまる、
彼にとって毛沢東こそが「虐待する父」なのだ。
しかしそうだとしても、普通の感覚であれば、
「自分はひどい目に遭って大変だったので、
自分はそういうひどいことはしないようにしよう」
と思うのではないでしょうか。
それなのにもっとひどいことをしているのですから、
まったく異常な精神の持ち主です。
チャイナ4.0の異常さを見れば、その非常識な精神が分かります。
これには、遺伝子レベルの異常さを感じます。
関裕二著「縄文の新常識を知れば日本の謎が解ける」
にこういう記述がありました。
中国の場合,Y染色体はそのほとんどがO3系統で、
男性は単純な構成になっている。漢民族はO3(だけ)なのだ。
(一般的には民族は多様な遺伝子構成を持っています)
ということは、O3が力づくで他者を追い出し、
あるいは征服して先住の男性を殲滅して女性を奪い、
子孫を増やしていった可能性が高い。
そして共存を拒否する漢民族を恐れ、
多くの人が周辺に逃げていったという歴史が再現できる。
やはり漢民族の男性は、
遺伝子的に敵を許さず、敵を徹底的にたたく、
自己保身的な思考を持っているのです。
その点から見ますと、毛沢東を祭り上げるのは戦術で、
国の開祖毛沢東を自分の威信形成に利用している
ということなのではないでしょうか。
いずれにしても、習近平は人類の常識からすると狂人の部類に入る
危険人物です。
5.習近平をつまずかせる」にはどうしたらよいか
強力な独裁者を引きずり下ろすには、
独裁者のメンツをつぶし国民からの信頼をなくさせ、
反乱を起こさせるしかない。
それは、安倍総理が尖閣に対する中国の要請を拒否したように
すればよいのである。
「台湾は中国固有の領土である」と主張しても
事態はまったく膠着状態で打開できない、ことも弱みである。
中国が期待し国内にも喧伝したEUとの投資協定は、
欧州議会がウィグルや香港問題を批判したことに対して
中国が制裁を課したことで、協定締結は宙に浮いてしまった。
バルト海諸国や東欧諸国も中国との取引を抑制しだしている。
2012年から継続している旧共産圏16か国とのグループにも
綻びがでてきている。
インドネシアも中国対抗の動きをしている。
こういうように、中国が小国とみている国々から反逆されることが
「メンツをつぶす」ことになる。
これを拡大していけば、いつかは周政権は崩壊するだろう。
本当にいつそうなるのでしょうか???
著者は、5年後か8年後か、50年後か80年後か、わからない、
と言っています。
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