2022年1月15日土曜日

「新しいがん治療時代の夜明けーウィルス療法」スバラシイ!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 がんのスゴイ治療法が開発されたことを知っていただきます。
 それが日本発であることを知っていただきます。
ねらい:
 早く一般に利用できるようになることを期待しましょう!
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本テーマは、學士會会報2022⁻Ⅰ号に掲載されました
東京大学医科学研究所の藤堂具紀教授の寄稿のご紹介です。











がんは、早期発見で対象部位を全摘すれば完治しますが、
脳腫瘍や白血病はそれができません。
現在の手術以外の治療法は、化学療法(薬剤投与)と放射線治療ですが、
ご承知のように効果は限定的です。
















ここに第4の治療法として、ウイルス療法が登場したのです。

ウィルス療法については、同上医科学研究所のホームページに
以下の簡潔な解説がありました。
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ウイルス療法(oncolytic virus therapy)とは、
腫瘍細胞(がん細胞)だけで増えるように改変したウイルスを
腫瘍細胞に感染させ、
ウイルスそのものが腫瘍細胞を殺しながら腫瘍内で増幅していくという、
これまでにはない発想に基づいた腫瘍に対する新しい治療法です。
ウイルスが直接腫瘍細胞を殺すことに加え、
腫瘍細胞に対するワクチン効果も引き起こします。

また手術や放射線、化学療法など従来の治療法とも併用が可能であることから、
近い将来悪性神経膠腫の治療の重要な一翼を担うと期待されます。
現在、第三世代の遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスI型G47Δを用いて
臨床試験を行っています。
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当寄稿にありますが、がん細胞ではウィルスがよく増殖するので、
その性質を利用しているのです。
正常細胞には害を与えないウィルスの開発が課題でしたが、
それをいくつかの遺伝子組み換えの変遷を経て、
この医科学研究所がG47Δというウィルス開発に成功したのです。

本寄稿の最後の部分をご紹介します。
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G47Δはがんの標準治療を根本から変える
G47Δはあらゆる固形がんに同じ機序で同じ治療効果を示すことが判っており、
今後可及的速やかに、
希望する全てのがん患者が選択できる薬となるよう適応の拡大を目指す。

既存のがん治療とG47Δとの大きな違いは、
その安全性とワクチン効果である。
がんに対する治療薬としては初めて、腫瘍内に投与されるが、
脳腫瘍以外のがんでは手術も必要ない。

これまでに判っている副作用は
免疫反応に伴う発熱や腫瘍の腫脹など限定的である。
したがって、G47Δが固形がん患者に使えるようになった暁には
「損をしない治療」として、
がん発見後なるべく早い段階で投与されるようになると予想される。

患者の一部にでもワクチン効果が発揮されれば、
再発や転移の確率が下がる。
高齢でも低侵襲の治療として使える。

もうひとつの違いは、
G47Δのがん効果によって、生存期間の延長だけでなく、
治癒率の上昇が期待できることである。

がんの治療は現在、早期発見と全摘出でもたらされるが、
一部の患者に限られる。
放射線治療や薬物療法の進歩により、
5年生存率が上昇しているがん腫も多いが、
治癒率は必ずしも上がっていない。

G47Δは、どのようながんをも免疫に非自己として認識させ、
その免疫が強く作用すれば、
がん細胞を最後の一つまで駆逐することができる。
但し、このワクチン効果には個体差が大きい。
個体差にどのように臨床現場で対応するかが
今後のウィルス療法の課題である。
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凄いことですね。
がんが治る(治癒)ということです。
しかも簡単な方法で。
費用のことについては触れていませんが、
この方式から想定するとそんなに高くはないでしょう。

すでに、
悪性腫瘍(がん)に対する治療薬として日本で承認されるようです。
それに関して、同医科学研究所のホームページに以下の記載があります。
いつから一般に利用できるようになるのでしょうか?
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東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍外科
(東京大学医科学研究所 附属先端医療研究センター 先端がん治療分野)
の藤堂具紀教授らの研究グループは、
単純ヘルペスウイルス1型(口唇ヘルペスのウイルス)に
人工的に3つのウイルス遺伝子を改変した
第三世代のがん治療用ヘルペスウイルス G47Δ
の臨床開発を進めてきました。

膠芽腫(こうがしゅ、脳腫瘍の一種)の患者を対象に
東京大学医科学研究所附属病院で実施した医師主導治験において
有効性と安全性が確認されたため、
2020年12月28日に製造販売承認の申請が行われ、
間もなく悪性神経膠腫を適応症とした再生医療等製品
(一般名 テセルパツレブ、製品名 デリタクト)として承認されます。
市販後に本品を使用する患者全例を対象に7年以内に
有効性・安全性の再確認を行うという条件及び期限付き承認です。
G47Δは厚生労働省の先駆け審査指定制度および
悪性神経膠腫を対象とした
希少疾病用再生医療等製品の指定を受けていました。

G47Δの開発は、
発明から実用化まで一貫してアカデミア主導で実施されており、
臨床開発は全て東京大学で実施しました。
革新的医療技術の大半がアカデミアから生まれる世界趨勢の中、
日本でもアカデミア主導の創薬を成功させる道筋を示した
モデルケースと言えます。
G47Δは、日本で初めて承認されるウイルス療法製品であり、
国産の遺伝子治療用製品としては2つめです。
世界では脳腫瘍に対する初めてのウイルス療法製品です。
G47Δは全ての固形がんに同じメカニズムで同じく作用することから、
今後脳腫瘍以外のがんにも適応が拡がることが期待されます。

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