2020年4月22日水曜日

「シロクマのことだけは考えるな!」

[このテーマの目的・ねらい]
目的:
 改めて心理学を学びます。
 植木理恵さんの素晴らしさを再認識いただきます。 
ねらい:
 周りの人の心理・行動がより分かるようになると良いですね。
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このテーマ名は、人気心理学者植木理恵さんの初期の代表作です
(2008年8月マガジンハウス刊)。
現在の版は新潮文庫で200頁弱のものです。


あらためて今回勉強してみました。


著者が「おわりに」でこう書いています。
 いつの日か、とことんカジュアルなテーマを用いながらも、
 [本物の心理学]をエッセイのような形でまとめておきたいなあ。
 学術論文クラスの理論を織り交ぜながら、
 身近なことだけにフォーカスを当てた心理学の書籍を作ってみたいなあ。
 これは一人の心理学者としての、私の長年の夢でした。
 本書は、それがほぼ完璧に近い形で具現化されたのではないかと、
 ひっそりと自負しています。


私も、そのとおりになっているのではないかと思います。
本文もこのような女性らしい文体で分かりやすく書かれています。
著者33歳の作品です。すごいものです。


本書はこういう構成です。
薄くてコンパクトな本ですから、読まれていない方はぜひお読みください。

本書の構成





内容例
タイトルの付け方もたいへんよくできています。

第1章 元気になる心理術

 

・忘れようと努力するほど鮮明に思い出してしまう
 [シロクマ実験とトラウマ克服法]

・アタマが真っ白!パニクる気持ちはこう抑える
 [回避的コントロールの限界とパニック解決法]

 

第2章 頭がよくなる心理術

 

・合コンで出会った相手とはなぜすぐに別れてしまうのか?
 [脱・フォールス・メモリーで人を見抜け!]

・火のない所に煙をモクモク立ててしまうのは「コトバ」
 [口ゲンカは、全部言語的隠蔽だった!]

・三人寄れば文殊の知恵は湧かない[
 集団的手抜きの恐ろしさ]

 

第3章 人をコントロールする心理術

 

・思いどおりに人を育てる超カンタン人心コントロール術
 {調教上手はアメとムチではなくアメとムシ}

・「ズバリ言うわよ」と言われたことはなぜ感動するほど当っているのか?
 [ファウラ―効果で占い師になれる?]

 

第4章 人をトリコにする心理術

 

・最強の人間関係を作るほめるテクニック[トクベツな人に大昇格。「ジョハリの窓」の叩き方]

・なぜ不倫カップルは長続きするのか?
 [心理的リアクタンスを煽って魅力倍増]

・フシギちゃんはどうして人気者なのか?
 [認知的不協和が人を夢中にさせる]

 

 
心理学は、人間とはこういうものだということを主張するのですが、
極端に言えば、いかような説も可能です。
学であるためには客観的な証明が必要です。


そこで今回私は、
この本の中から実験の紹介がある「理論」を取りあげて整理してみました。
著名な理論であっても残念ながら実験の紹介がないものもあります。
それも一部取りあげました。ご確認ください。


これらの実験は、統計学的手法としては「ランダム化比較実験法」が
用いられていると思われます。


なお、本書は2011年刊行です。
植木さんは多作者でその後もかなりの著書を出しておられます。
私も研究中ですので、あらためて最新情報をお届けしたいと思います。





本書で示されている実証例


第1章 元気になる心理術



名称

実証したこと

実験方法

シロクマ実験


そのことを考えるなと言われたことの方を覚えている


1987年の誰かの実験]

50分程度のシロクマの生活の映像を見せ、3グループに分け、「シロクマのことを覚えておけ」「シロクマのことだけは考えるな」「自由にしろ」と告げ、1年後に確認した。1番克明に覚えていたのは「考えるな」と言われたグループだった⇒考えまいとすることが逆効果になる。


ストレスマグニチュード


ハッピーなこともストレスになる


[米国で行われたストレス研究]

ストレス度は肉親の死100、離婚73、病気53がベスト3だが、結婚50、長期休暇45、家族が増える39、大金が舞い込む38、昇進・出世36、著しい成功28もストレスになる(悪くなることを怖れる)。


 
第2章 頭がよくなる心理術



名称

実証したこと

実験方法

カクテルパーティ効果


自分の関心事には頭が働く


{米国での選挙演説に関する実験}

支持政党と非支持政党の選挙演説を聞いてもらい、内容の理解力、集中力、記憶力を比較した。はっきり差が出た。

宗教者の説教についても同様の結果が得られた。⇒カクテルパーティ効果だけでなく、自分自身の信念や哲学に反するような話は敢えて耳に入れない、理解したくない。



自己愛・ライバル意識


仲間に対してはライバル意識が働く


[どこかの大学での実験]

文学部の学生数十人にある作文を読ませて感想を聞いた。半分の学生にはそれが工学部の学生が書いたもの、残り半分には文学部の学生が書いたものと告げた。工学部と言われた方は高評価で、文学部と言われた方は散々な評価だった。⇒ライバル意識は評価を歪める。



先入観による歪み


誘導尋問は大きな影響を与える。


[どこかの実験]

車どうしの衝突事故の映像を見せ衝突時の時速を当ててもらう。2組に分け一方には「衝突時の時速は?」一方には「激突時の時速は?」と聞いた。答えは前者の平均が60キロ後者の平均が120キロだった。⇒同じものを見ても誘導でこんなに違ってくる。



アナログな記憶の方が強い


超一流のソムリエの記憶は言語化していない。暗記のコツもイメージ化。


[どこかの研究結果]

世界トップクラスのソムリエたちは、ワインを飲んだ時に浮かんだイメージや感覚、感想をその場では言語化しない。平均クラスのソムリエは一所懸命メモを取っている。⇒アナログの方が圧倒的に情報量が多い。



 
第3章 人をコントロールする心理術



名称

実証したこと

実験方法

アメとムチ実験


ムチは必ずしも有効な指導方法ではない(マウスはムチ(電気ショック)の選択肢がある場合は、それを怖れて行動しなくなる)。


{どこかの有名な実験}

マウスをT字の迷路に入れる。Aは左エサ・右電気ショック(アメとムチ),Bは左何もなし・右電気ショック(ムチのみ),Cは左エサ・右何もなし(アメのみ)となっている。最も早く左を選択するようになったのはCのアメのみの迷路であった。



間欠強化


アメを与えるのを時々抜くのがよい(カリスマホスト、宗教団体、魅惑女の手口)。


[どこかの研究]

5回に1回抜くのが期待が最大になってよい。毎回アメがあるとマンネリになる。5回に1回以上抜くと期待しなくなる。


スティンザー効果


着席位置で同調関係が決まる。


[心理学的に実証されている]

向かい合わせは対立的になる。隣同士は同調しやすくなる。意見交換するなら、角合わせに座る、かつ仕切り役なら短い辺の方に座る。



監獄実験


人間は与えられた役割に合った行動をするようになる(上野感想、社長になった方は社長らしい言動をするようになります)


[米国心理学者ジンバルドの実験]

模型の監獄に「あなたは看守、あなたは囚人」として二人の被験者を入れる。数日間の内に二人はその役割の行動をするようになる(看守役がどんどん威圧的・暴力的になる、囚人役は怖れおののく)。


バンドワゴン効果


あおられると乗ってしまう(上野感想、今はそういう傾向は減ってきました)。


[そういうことになっている]

人間はあるモノが流行していると言われるとついそれに乗ってしまう。「内閣支持率が上がっていると言われると支持に回る人が増える。



アンダードッグ(負け犬)効果


人気絶好調は飽きが来るので、一転負け犬になって復活する。


[そういうことらしい]

清純派から汚れ役に、女性アイドルがヌード女優に、ヒラリークリントンの変身の例などが紹介されている。


 
第4章 人をトリコにする心理術



名称

実証したこと

実験方法

ジョハリの窓


「自分が知っていること」「自分が気付いていないこと」と「他人が知っていること」「他人が知らないこと」の組み合わせで気づきの意外性がある。


[ジョゼフ・ルフトとハリー・インガムが提唱した説。実験結果は示されていない]

マリリンモンローに「セクシーですね」「美人ですね」と言っても効果がない、当たり前のことを繰り返し言うと、ウソッポくなる、ことなどが紹介されている。



心理的リアクタンス


人はままならぬ関係であるほど熱狂的で密接な関係性を築き、より離れがたくなる。


[そう言われている。実験結果は示されていない]

「不倫カップル」「禁じられた遊び」「カリギュラ効果」(上映禁止措置が人気を沸騰させた)などが紹介されている。












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