目的:
「マネジメントの文明史」をご紹介します。
その中に記述のあるエジプトのピラミッド建設がどのようにして
行われたのか(の一部)を知っていただきます。
ねらい:
経営やマネジメントのガイドは、そのベテランから学びましょう。
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本テーマは、
武藤泰明早稲田大学教授著「マネジメントの文明史」のご紹介です。
ねらい:
経営やマネジメントのガイドは、そのベテランから学びましょう。
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本テーマは、
武藤泰明早稲田大学教授著「マネジメントの文明史」のご紹介です。
これは、昨年10月に出版されたものなのですが、
ピラミッド建設が対象になっているようなので今回取り寄せてみました。
ところが、そのピラミッド建設におけるマネジメントについては、
以下のことが書かれているだけでした。
【ピラミッド建設のビジネスモデル】
(前略)
だいたいはっきりしてきているのは、ピラミッドをつくったのは
奴隷ではなく労働者、具体的には農民であったということ。
彼らは今ふうに言えば賃金の支払い
(と言っても貨幣はなかったはずなので何を受け取っていたのか、
これも謎です)を受けていました。
ちゃんと住宅もあったようです。
ではなぜ農民を動員できたのか。
【ナイル川の「定期氾濫」とピラミッド建設の関係】
ナイル川は毎年夏に氾濫していた(この部分は上野が略記)。
氾濫と言っても川から水が周辺に静かにあふれ出すようなもので、
これが農地にもたらされて肥沃になる。
結果として、農業の毎年の生産性が保たれていました。
川が氾濫している間は、農民は仕事ができません。
だから、いわばその「農閑期」に
ピラミッドの仕事をしていました。
日本の出稼ぎと同じだと考えてよいのだろうと思います。
エジプトの労働者は、農閑期に副業で収入を得ていたということです。
【ファラオのマネジメント戦略】
これを国(というよりエジプト王)の側から見ると、
農民を農繁期に集めると、農作業ができないので収穫が減る。
これは今ふうに言えば歳入、
つまり国の収入の低下を意味するのでできません。
賢明な王であれば農閑期にピラミッドを建設したはずです。
昔、日本の公共工事が冬場に集中的に実施されたのも、
前述した出稼ぎ労働力が確保できたことが理由の一つです。
同じことなのですね。
さて、ではこの「ピラミッド建設のビジネスモデル」は、
国(王)による経営と呼べるのでしょうか。
プリンスホテルがしていたことは、経営です。
(上野注:季節によって従業員を繁忙の場所に移動させること)
なぜなら、このホテルは利益を求め、
そのために従業員の稼働率を上げる手段として、
季節による移動を行っていたからです。
エジプトのファラオが行ったピラミッド建設そのものは利益を生まない、
一種の公共工事です。だとすれば経営ではない。
(上野注:この項見出しは後掲のように「王たちの経営」となっています)
とはいえ、労働者を農繁期に徴用すると、
歳入、そしてGDP(農業算出)が減るのは目に見えている。
これを避けるような(人的)資源戦略を採用したという点において、
これはマネジメントと呼べるものなのだろうと思うのです。
著者はこう述べていますが、
事前に「経営」は「マネジメント」の定義はされていません。
したがって、これは経営だ、これは経営ではないがマネジメントだ、
と言われてもピンときません。
いずれにしても、ピラミッドの話はこれで終わりなのです。
ガックリです。
本書では、前座のピラミッド以外に
こういう領域のマネジメントを取りあげています。
1.会社以前
王たちの経営(ピラミッド建設のこと)、ギリシャの植民地経営、
ハンザ、ルネサンスと企業、古代から中世の経営
2.大航海時代と会社の成立
3.英国(産業革命の成立・発展・衰退)
4.ドイツ(大企業と重工業の誕生)
5.米国(マネジメントと経営者の創出)
6.個人によるイノベーションと非営利組織の時代
著者は過去を分析することによって、
今後の経営やマネジメントに対して示唆が得られるだろうと言うのですが、
とてもそうは思えません。
前掲のピラミッド建設の方法から何を学べるのでしょうか?
結局、本書は、経営書やマネジメント書ではなく、
ちゃんと書名に書かれているように
「歴史」を整理している人文科学書なのです。
390頁に及ぶ事実の羅列としてはたいへんなものです。
そういう内容に関心のある方はぜひお読みください。
しかし人文科学書嫌いの私は一部をパラパラ見て読むのをやめました。
「ですます調」と「である調」が混在しているのも読みにくいですね。
別項の阿部紘久さんの「文章作成術」を学んでいただく必要がありそうです。
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