2019年10月28日月曜日

「『家族の幸せ』の経済学」

[このテーマの目的・ねらい]
目的:
 家族に関わる多くのテーマの「真偽」を確認いただきます。 
ねらい:
 家庭の運営、家庭での行動の
               参考にしていただくことができます。
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本書は、山口慎太郎東京大学経済学部准教授
(ウィスコンシン大学で博士号をとっておられます)の力作です。
「家族」に関わる数多くのテーマについて、
日本をはじめとする各国のデータで検証し解説をしておられます。
その着眼の多彩さにつきましてはまったくビックりです。


本書の構成はこうなっています。
第1章 結婚の経済学
 1.人々は結婚に何を求めているのか
 2.どうやって出会い、どんな人と結婚するのか
 3.マッチングサイトが明らかにした結婚のリアル


第2章 赤ちゃんの経済学
 1.出生体重は子どもの人生にどのように影響を与えるのか
 2.帝王切開は生まれてくる子どもの健康リスクになるのか
 3.母乳育児は「メリット」ばかりなのか


第3章 育休の経済学
 1.国によってこんなに違う育休制度
 2.お母さんの働きやすさはどう変わる?
 3.育休と子どもの発達を考える
 4.「育休3年制」は無意味、1年がベスト


第4章 イクメンの経済学
 1.日本は制度だけ「育休先進国」
 2.育休パパの勇気は「伝染」する
 3.育休で変わる家族のライフスタイル
 4.では、夫婦の絆は深まるのか


第5章 保育園の経済学
 1.幼児教育の「効果」について考えてみる
 2.家庭環境と子どもの発達
 3.保育園は、母親の幸福度も上げてくれる
 4.無償化よりも待機児童解消を急ぐべき理由


第6章 離婚の経済学
 1.「3組に1組が離婚している」は本当か?
 2.離婚しやすくなることは、不幸だとは限らない
 3.離婚は子どもたちにどう影響するか
 4.共同親権から「家族の幸せ」を考える


皆様はどれに1番の関心を持たれましたか?
私は、太字の分について関心を持ちましたので、
以下にその内容をご紹介します。
他のテーマにご関心の方はぜひ本書をお読みください。


人々は結婚に何を求めているのか
 厚生労働省の第15回出生動向基本調査(2015年)によると、
 男性の8割、女性の9割が「人柄」を重視している。
 「家事・育児の能力を重視する」 男性の5割近く、女性の6割近く
 「経済力を重視する」女性の4割近く
 「自分の仕事を理解してくれることを重視する」女性の5割近く


 マッチングサイト(詳細不明)では
 背の高い男性は女性に好まれるが、背の高い女性は不人気
 太っている男性はやや好まれるのに対して、太った女性は不人気
 収入は男女とも高い方が人気があるが、女性の方がその傾向が強い
 
 学歴は男女とも自分と近い人を好むが、
 女性は男性により学歴を求め
  男性は学歴のある女性を避ける傾向がある。


出生体重は子どもの人生にどのように影響を与えるのか
 働く女性の子どもは低出生体重児になりやすい
 (母体に負担があるから)。
 低体重で生まれると中年期以降に糖尿病や心臓病になりやすい
 低体重で生まれた子どもは、幼少期の問題行動が多く、
  学力面で問題を抱え、成人後も所得が低くなりがち。
 
 ノルウェーの双生児の研究では、
  出生体重が重いほど、
  出生時の健康状態はよく生後1年間の生存率も高い
  その後のIQや高校卒業率、所得にも影響がある。


育休と子どもの発達を考える
 育休が長いと子どもがお母さんと一緒の時間が増える。
 ヨーロッパの研究では、生後お母さんと一緒に過ごした期間の長さは
  子どもの将来の進学状況・労働所得などにはほぼ影響を与えていない。
 子どもを育てるのはお母さんでなく保育士でもよい、ということらしい。
  ノルウェーで保育制度がないときの調査では、
  お母さんが働くことの影響があるという結果となっている。


家庭環境と子どもの発達 
 家庭環境によって子どもの発達に影響があることは容易に想定できるが、
 家庭環境を客観的に測定する方法が困難なので、
 当分析では母親の学歴で代用した。
 調査元データは厚生労働省の「21世紀出生児銃弾調査」
  (8万人の子どもを追跡調査している)


 母親の4大卒と高卒未満で比較
  言語発達はごくわずかな差があるだけ
  多動性(落ち着きがない)は偏差値で3.1の差がある。
  攻撃性は偏差値に3.3の差がある。



「3組に1組が離婚している」は本当か?

 当年の離婚件数を結婚件数で割って算出すると35%となっています。
 しかし、年々結婚件数が減少してきているので、
 この数値で結婚する人の3割が離婚と言うことはできない。
 厚生労働省の人口動態調査ではここのところ16%で安定している。
 

離婚しやすくなることは、不幸だとは限らない
 各国の離婚に対する条件緩和(離婚法改正)が進んでいる。
 離婚がしやすくなった結果は、離婚が増えるだけでなく、
  DVの減少、妻の自殺、夫婦間の殺人が減少していることが、
  各国のデータで示されている。


離婚は子どもたちにどう影響するか
 アメリカの調査では、離婚法改正前後で
  子どもたちの大学進学率が低下し、
  大人になってからの所得にもマイナスの影響があった。
  子どもたちが暴力犯罪に関与する確率が10%高まった。
 
 しかしこれは親の離婚そのものが子どもに悪影響を及ぼしているのか、
 離婚が生み出し貧困が子どもの発達に悪影響を及ぼしているのか、
 は不明である。
 後者であれば、社会的な救済措置は可能である。

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