【このテーマの目的・ねらい】
目的:
東大空手部創立90周年イベントで感じた
空手の試合制度に関する課題を提起いたします。
ねらい:
東京オリンピックの空手の競技方法が
「見せる」ものになることを期待します。
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2016年11月26日に東大空手部創立90周年の
記念祝賀会がありました。
関係団体のご招待者80名、
学内関係者200名が参加した盛大なものでした。
大学の運動部・文化部・サークルで
90年の歴史を持つところはおそらく稀有でしょう。
東大空手部は大正末の創立です。
その後、慶応にも空手(唐手)部ができたようです。
当時は「豪傑」も多く結構強い部であったようです。
戦後も「豪傑」を輩出し隆盛を誇りました。
私立大学の強豪と渡り合ったりした時代もありました。
30年前からは女子学生も入部し、
女子が各種大会で優勝ということもありました。
課題
当日、会場で最近の試合のビデオが写されました。
私は何十年ぶりかで試合を見て浦島太郎でビックリでした。
もともと空手の試合制度では、
「寸止め」と言って当たる直前で止めることになっています。
止めなければ相手にダメージを与える打撃であるとなれば、
「一本」または「技あり」です。
「寸止め」できないで当ててしまったら反則負けとなります。
私は学生時代、私立大学の猛者に反則負けをしています。
50キロ台の「痩せ」が巨漢に反則負けなんておかしなものでした。
稽古着に当たっていても寸止めになっているか、
体に当ててしまっているかで判定が分かれるのです。
これは審判でも判断が分かれるところで、
そのためコートの4隅に副審が付きます。
素人には分かりにくく、
一般的な見るスポーツにはなりにくいと思っていました。
ビデオで見た試合風景は昔の試合とは
全く様子が違うのです。
まずグローブを付けています。
まあこれは当たった時のダメージを和らげるという点では
しかたないのかもしれませんが、
空手本来の固いこぶしの握りはできません。
決定的な驚愕は、選手がボクシングのように
立ち姿勢のままピョンピョン飛んでいるのです。
「これは空手ではない」と思いましたね。
この右側の選手のように両者共に棒立ち姿勢でした。
出典:「拳法会報第51号」 (平成25年12月刊)
空手の形を知っている方はお分かりでしょうが、
空手では低い腰の姿勢から全身の力を集中して
腕または脚を繰り出します。
一発勝負なのです。
もともと武道では柔道でも剣道でも、
一発で相手を倒す修練をしています。
空手もそうです。
本来の空手の組手(試合)の姿勢
出典:「新版 東京大学空手技術研究」(平成17年12月刊)
右は、石塚 彰 東大拳法会名誉会長
手数で相手を圧倒するなんてことはありません。
試合のルールを聞くと、一本とか技ありではなく、
手数のポイントを稼ぐようになっているらしいのです。
なおかつ、ボクシングと違って「寸止め」で
相手にダメージを与えないのですから、
見ていても面白くありません。
空手でも、「フルコンタクト空手」と言われる流儀では、
防具を付け相手にダメージを与え倒します
(防具を付けない流儀もあるようですが)。
フルコンタクトに対して寸止め流儀の空手は
ソフトコンタクトと言われます。
防具をつけることに対しては、
本来の空手の「切れ味」を示すのとは異なるもので
邪道だという説もありますが、
分かりやすいルールだという意味では有利です。
ご承知のように、
2020年の東京オリンピックに空手競技が採用となりました。
今や全世界の空手人口は、
野球やソフトボールと同じ6千万人だそうです。
関係者のご努力には深甚なる敬意を表しますが、
心配があります。
東京オリンピックは、
どのようなルールで試合をするのでしょうか。
下手をすると1回限りで面白くない、分からないということで
終わりになる心配があります。
それは、
オリンピック競技として存続するかどうかの問題ではなく
空手ファン自体の減少につながってしまいます。
東京オリンピックの空手はもろ刃の剣です。
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