目的:
東北大震災とか東南海大地震とか地震を怖れ、
その対策に巨費を投じています。
富士山が大噴火を起こしたらたいへんなことになるのですが、
対策の話は聞いたことがないですね。
それでいいのでしょうか。
少し研究してみませんか?
ねらい:
対策を準備しましょう。
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本稿は、
学士會会報2016-Ⅰ号掲載 巽好幸神戸大学海洋底探査センター教授
の「火山列島に暮らす覚悟」と
同誌2016-Ⅳ号掲載 藤井敏嗣東京大学名誉教授・
気象庁火山噴火予知連絡会会長の「日本の火山の今を知るー
富士山も噴火するのか」からのご紹介です。
太字は原文のままの転載です。
1.噴火とは何か?
火山は当然ながら噴火が怖いのです。
噴火を起こすのは活火山です。
活火山の定義をご存じですか?
昔、学校で習ったときには、
活火山、休火山、死火山という区分がありました。
今はそういう区分はないのですね。
気象庁のホームページにはこう書かれています。
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以前は、現在噴火または噴気活動を続けている火山を活火山、
現在は活動していないが
歴史時代に活動した記録が残っている火山を休火山、
歴史時代の活動の記録がない火山を死火山と分類していました。
しかし、年代測定法の進歩により火山の過去の活動が明らかになり、
数万年に一度噴火する火山もあることが分かってきました。
歴史時代だけで今後の噴火発生の有無を判断することは難しいので、
近年は休火山や死火山という分類はなされていません。
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現在国際的には、活火山は
「1万年以内に噴火したことがあるか、現在も活発に噴気活動のある火山」
と定義されているようです。
日本では110が活火山に指定されています。
当然ながら富士山も入っています。
活火山を定義するのは、
将来噴火する可能性のある火山を見分けるためです。
活火山の中でも、
気象庁がマークして24時間体制で監視している「常時観測火山」が
47あります。
噴火には以下の種類があります。
爆発するのは、水(水蒸気)なのですね。
マグマだけだと流れだすだけで、被害は周辺に限られます。
非爆発的噴火
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マグマ噴火
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マグマが約千度の溶岩流になって流れ出たり、火口周辺に盛り上がって溶岩ドームを形成したりする。
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爆発的噴火
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水蒸気噴火
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地下水がマグマで熱せられて高温の液体状態の熱水が何らかの状況で気化して膨張し爆発する際に周囲の岩石などを吹き飛ばす。
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マグマ噴火
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マグマに数%含まれる水が急激に気化して膨張し爆発を起こす。
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マグマ水蒸気噴火
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約千度のマグマが海水や地下水と接触すると水が急激に気化して膨張しマグマと共に爆発する。
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噴火に伴う現象は以下のとおりでこれが被害を齎すのです。
太字のものは、速度が速いので逃げ遅れの危険性が高いものです。
降灰・噴石
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2000年の有珠山噴火では、アパートの屋根に火山灰が降り積もり、その上に1m超の噴石が降って天井に穴を開けた。
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火砕流
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1991年の雲仙普賢岳噴火では、高温の火山噴出物が火山ガスと混合し時速100キロ以上の高速で山を流れ下りた。
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溶岩流
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1986年の伊豆大島噴火では、吹き上げたマグマが溶岩流になって斜面を流れ下りた。
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融雪型火山泥流
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1923年の十勝岳噴火では、火砕流の熱によって雪が融け、大量の水が発生し、土砂や岩石を巻き込み泥流となって流れ下りふもとの集落に大被害を齎した。
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土石流
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桜島噴火のように、火山灰が多量に堆積したところに雨が降ると土石流が発生する。
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火山ガス
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2000年の三宅島噴火では、二酸化硫黄を多く含む火山ガスが噴出し続け、島民は4年半に亘って帰島できなかった。
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2.噴火はなぜ起きる?
では、噴火はなぜ起きるのでしょうか。
噴火の直接原因はマグマですが、
そのマグマに何らかの変化が与えられた時に噴火が起きるのです。
何らかの変化とは地殻の変化です。
地殻の変化で起きるのは地震です。
ということは大きな地震が起きている時は、
マグマにも大きな力が加わっていて噴火を発生させる可能性が高いのです。
世界の事例を見ると、
M9の地震が起きた数日~数年後に近隣の火山が噴火しています。
2004年のスマトラ沖地震の6年後、スマトラ島のシナブン火山が
千年ぶりに噴火した例があります。
今のところ、
明確に東北地方太平洋沖地震に誘発された噴火は起きていません。
(上野注:ということはこれからが危ないということです)
しかし、地震に誘発されて噴火が起きるのではなく、
地殻変動の結果で地震も噴火も起きると考えるのが正論でしょう。
「9世紀に日本では地殻が不安定化し、
その影響で地震と噴火が頻発した。
現在再び地殻が不安定化している」
と主張している学者がおられるようです。
9世紀には貞観大地震の数年前に富士山の貞観大噴火が起きています。
(噴火が先です)
9世紀の地震
中越地震(863)、貞観地震(869)、南海トラフ地震(887)
9世紀の噴火
神津島(836)、新島(856)、富士山(864-6)
21世紀は、東北大震災などの地震に続いて大噴火が起きる
9世紀同様の危険な時期なのです!!
3.富士山はいつ噴火するのか
富士山は過去3200年で少なくとも100回噴火しています。
平均して30年に1回です。
しかしここ300年は噴火していません。
(今のところ予兆はないようですが)、
いつ噴火してもおかしくない状況です。
アメリカのスミソニアン博物館による
世界中の火山の調査では
「噴火間隔が100年を超えると、爆発的かつ大規模な噴火が起きやすい。
逆に噴火間隔が短いと小規模噴火が起こりやすい」
ことが分かっています。
そうすると、次の富士山噴火は宝永噴火(1707)のような
爆発的大規模噴火になる可能性が高いと言えます。
では、予知は可能なのでしょうか?
まず中長期的な予測は不可能ということです。
富士山は、
奈良・平安時代には数十年に1回のペースで噴火していますが、
江戸時代以降では300年間噴火していません。
明治~現在までの浅間山の年間噴火回数は
1940年ー60年頃年に数百回噴火していましたが、
現在は約10年に1回程度、ごく小規模の噴火をするだけで
規則性が見られません。
しかし、直前には地震発生や表面地形の変形が起きるので、
どの程度の噴火が起きるかは正確には予測不能ですが、
地震よりは事前に把握できるのです。
現在、前掲の常時観測火山については
24時間体制で監視していますので、
予兆は掴めるはずです。
逆に言えば、監視センターから何らの情報もないということは、
今すぐに噴火が起きるということはないと言えるのです。
富士山もそうです。
しかし、予知についてはまだまだ改善すべき点があるようです。
2014年9月の御嶽山噴火では、噴火の2週間前から
50回超の地震がありました。
11分前にも火山性微動が観測されたのです。
それでも気象庁は噴火警戒レベルを上げませんでした。
この噴火では63名の犠牲者を出しました。
5人は今もって行方不明のままです。
【噴火予知に関する日本の課題】
水蒸気噴火の場合、火口のすぐそばに観測点を置いて
二十四時間監視しない限り、前兆を把握できません。
一方、マグマ噴火の場合、地震や地殻変動観測により、
多くの場合前兆を把握できますが、完璧ではありません。
霧島新燃岳の噴火(2011)のように、
マグマの火口への接近を検知できないことがあるからです。
噴火予知研究は未だ発展途上です。
火山の活動年代は数十万年~百万年にわたるのに、
地震計などの観測装置が発明されたのはわずか百数十年前だからです。
日本固有の問題点もあります。
日本の火山は、気象庁を中心に、国立大学法人、国土地理院、
海上保安庁、産業技術総合研究所、防災科学技術研究所が
役割分担をして観測しています。
そして集まった観測データに基づいて火山噴火予知連絡会が
総合的に判断し、気象庁が発表しています。
良く言えば多機関の協同体制、悪く言えば烏合の衆で、
司令塔がありません。
他の火山国は、先進国だろうと発展途上国だろうと、
地震・地殻変動観測、火山ガス観測、マグマ研究など各分野の
専門家が技術者集団と共に単一の国立機関に一元化されています。
イタリアもかつては日本と同じ状況でしたが、
1980年代に一元的組織に変革し、
それ以降、イタリア火山学は大きく進展しました。
「日本も直ちに一元化すべき」と主張していますが、
一向に進みません。
4.噴火するとどうなる?
宝永噴火の時の火山灰・礫の堆積状況を現在の地図と重ねると、
以下のようになります。(図をクリックすると拡大します)
出典「日本の火山の今を知る」
降灰は、東海道新幹線の一部区間で20センチ超、
東名高速道路の御殿場付近で1m超です。
噴火中は飛行機は飛べず、羽田と成田は閉鎖されます。
都心でもかなりの降灰があり、
主要な幹線道路や鉄道も止まります。
つまり、すべての交通機関がストップし、
流通経済は破綻し、食糧不足に陥ります。
火山灰による広域停電、電波障害、電子機器の被害も
予想されます。
その後も降雨によって、積もった火山灰の土石流被害が発生します。
平成16年、内閣府は富士山大噴火の被害総額を
二兆五千億円と想定しましたが、相当の過小評価だと思います。
5.巨大カルデラ噴火
これは巽教授の論稿です。
富士山噴火は大噴火なんぞという生易しいものではない
巨大カルデラ噴火が起きるというのです。
巨大カルデラ噴火は
直径20キロメートルにも及ぶ窪地地形を作るほどの
威力があるものです。
過去12万年間に限っても
少なくとも列島で10回の巨大カルデラ噴火が起こっている。
もっとも最近のものは7300年前に、
南九州縄文人を絶滅へと追いやった鬼界カルデラの噴火である。
最近になってこのタイプの噴火は
今後100年間に約1%の確率で発生することが判ってきた。
たいへんなことです。
今の段階では、国民はどのような備えもできません。
早く予測技術を革新させてほしいですね。
6.私の対策
さあ大変です。
しかし巨大カルデラ噴火は諦めて、
富士山大噴火に備えましょう。
宝永噴火並みの降下火山灰があるとすると、
品川区の我が家では10センチほどとなります。
これが屋根の上に積もるとすると、
概算で7トンの重さがかかることになります。
我が家は比較的堅牢な作りではありますが、
築70年の2階建て木造家屋です。
7トンの重さには耐えられない可能性があります。
そこで早速、夏休みの余裕時間を利用して、
屋根に降り積もる火山灰を即刻降ろす準備をしました。
くわのようなT字型の灰降ろしを作るための2メートルの棒と
命綱用のロープ200メートルを買いました。
命綱の張り方も決めました。
いざとなればすぐに準備に取り掛かれる
段取りをしたということです。
その後、自家製の下ろし器具の破損に備えて、
先が四角のスコップも買うことにしました。
これが「役に立たなかった」となればいいのですが。
あるいは、そのときには屋根に登れる人はいなかった、
ということになるのかもしれません。
それでもやはり「備えあれば憂いなし」です。
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