【このテーマの目的・ねらい】
目的:
高齢者は健康維持のためにきちんと食事をすることが
非常に重要であることを確認いただきます。
ねらい:
健康寿命を延ばしましょう。
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今回の検討テーマは、こういうことです。
若年層の場合には高栄養・肥満が健康障害として
問題になりますが、
高齢者の場合には、逆に低栄養(栄養欠乏)が問題となるのです。
「ようやく痩せ出した!」と喜んではいけないということです。
學士會会報2014-Ⅲ号 葛谷雅文名古屋大学教授の寄稿
「高齢者における低栄養とその対策」に基づき、
システム企画研修㈱が提供している「丸い三角形」のフレームで
整理をしました。
1.低栄養改善の目的・ねらい
1)本人にとって、「生活の質」を維持する。
高齢者においては,BMI値25kg/㎡以上の肥満に比較しても
BMI値18.5kg/㎡の痩せの方が生命予後のリスクが高い。
2)社会にとって、要介護者を減らし国民の経済負担を減らす。
国民医療費の削減は日本経済の最大の課題といってよい。
2.低栄養状態とは
(1)低栄養状態とはどういうことか
・(明確な定義はないようで)
一般的には全体的な摂取カロリー不足、
またはある種の栄養素の摂取不足により、
健康上何らかの支障がある状態を低栄養といい、
栄養不良、栄養失調と同義である。
( → なーんだ!!)
(2)低栄養状態の症状
・低栄養状態は、虚弱状態(フレイル)を引き起こす。
フレイルは、以下の5項目のうち3項目以上当てはまる場合をいう。
1) 体重の減少
2) 身体機能の低下(歩行速度の低下)
3) 筋力の低下(握力の低下)
4) 主観的疲労感
5) 生活活動度
(注)私の場合は2項目に当てはまり、
その場合はプレフレイル(予備軍)というようです。
・免疫機能の低下を伴い、感染症を引き起こしやすくなる。
主要疾患の治癒を遅らせ、合併症を容易に引き起こす。
・それ以外にも次のような病的な症状に至る。
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高齢者栄養障害に伴う病態
1. 免疫異常(感染症)
2. 褥瘡
3. 創傷治癒の遅延(手術後の回復遅延)
4. 貧血
5. 骨粗鬆症
6. 薬剤代謝の変動
7. 筋萎縮(sarcopenia)
8. 転倒
9. 骨折
10. 呼吸機能の低下
11. 疲労感
12. 浮腫
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(注)転倒には気をつける必要がありますね。
私の周りにも転倒が原因で命を落とした人がたくさんいます。
3.低栄養状態発生の原因
以下は転載です。
(1)社会的な要因
独居高齢者はそれだけで栄養障害のリスクとなる。
日常生活動作(activeities of daily living: ADL)
の障害がなくても、一人暮らしのため十分な食事量を
摂取していなかったり、食事内容が偏ったりする場会がある。
ADL障害がある高齢者は十分な介護力、
適切な介護がなければ、摂取量は確実に減少する。
経済的な問題があり満足に食事を取れない場合も
低栄養の要因になるのは言うまでもない。
(2)精神心理的要因
認知機能障害により、食事をするのを忘れたり、
空腹感を感じなかったりすることはまれではない。
認知症が進行すると味覚、嗅覚の低下が進むことも、
食事摂取量が減少する一つの原因である。
「うつ」は「消化管の問題」、「悪性腫瘍」にならぶ
高齢者の食欲不振・体重減少の原因として頻度が高い。
明らかな食欲不振・体重減少の原因がない場合は
「うつ」の存在を疑う必要がある。
嚥下障害がある場合、誤囃を恐れるため本人、
介護者が食事摂取量を制限している場合がある。
(3)加齢による影響
加齢自体によっても食欲は一般に低下しやすいと言われている。
味覚、嗅覚は食欲に重要な役割を果たすが、
高齢者では味覚機能が低下し
(六五歳以上では約四〇%に味覚障害があるとの報告もある)、
特に苦味に関する感覚が低下する。
また嗅覚の低下も一般的に認められる。
味覚の低下の原因は単に加齢の影響のみならず、
亜鉛欠乏、鉄欠乏、日腔内カンジダ症、
うつなどが起因となっているケースもまれではない。
さらに種々の薬剤によつても
味覚異常を引き起こす可能性がある。
また、高齢者では体重を保つため働く食欲の調節機構が
若年者と異なることが知られている
(急激な体重減少に反応して若年者では
体重をもどすため食欲増加が起こるが、
高齢者ではその調節が起こらない)。
(4)疾病要因
悪性腫瘍ならびに感染症、慢性炎症性疾患の存在、
さらには心不全、呼吸不全、肝、腎不全などは
食欲低下の大きな誘引になる。
さらにこれらの疾患は代謝性ストレスに直結し、
必要エネルギー量は増大し、
食欲低下と相まって低栄養につながる。
腰痛、頭痛、膝関節痛などの疼痛は食欲低下の誘因になる。
歯の問題は咀嚼機能の低下を合め栄養障害を
引き起こす重要な因子である。
特に義歯の不調、口腔ケア不足による歯槽膿漏などは
低栄養の誘因として重要である。
薬剤が高齢者の食欲低下、体重減少に関わっている
ケースは想像以上に多く、高齢者の食思不振の
二五%は医原病によるとの報告もある。
咀嚼・嚥下障害があれば、当然十分な経口摂取は
期待できず、放置すれば短期間で低栄養に陥る。
(5)その他
高齢者では咀嚼、嚥下障害を抱えるケースが多いが、
それに対応した食形態が提供されていない場会がある。
不適切な食形態の提供により、十分な食事が
摂取できないばかりか、誤嚥の要因にもなっている。
若い頃の過栄養に対する食事指導を体重減少が
既に現れている高齢者になっても
引きずっている場合がある。
また医療者も後期高齢者を対象に若年者と
同様の食事指導を行っている場合がある。
4.低栄養状態の対策
(肝心なことですが明確な提言はありません)
サルコペニア(加齢に伴う筋力の低下、または老化に伴う筋肉量の減少)
はフレイルや転倒との強い関連が指摘されている。
低栄養もその要因の一つになっている。
たんぱく質摂取並びに運動介入によりサルコペニアが改善する
との報告が蓄積されつつある。
(注)なーんだ!
最後は(低栄養になる要因に留意して)
「低栄養にならないようにきちんと食べなさい、肉も」
ということなのですね。
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