目的:
現在起きているマーケティングのパラダイムチェンジ
について知っていただきます。
世の中の流れを見るとはどういうことかを感じていただけるのでは?
ねらい:
マーケティングに関心のある方はぜひこの本をお読みください。
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「ウソはばれる」は、
イタマール・サイモンソンというスタンフォード大学ビジネススクール
のマーケテイングの教授と
エマニュエル・ローゼンというマーケティングの実務家が書いた著書の
日本語名です。
原題はAbsolute Value(絶対価値)で、
このえげつないけれども的を射たタイトルをつけたのは
出版社であるダイヤモンド社でしょう。
イタマール教授は、
これまで従来型のマーケティングの論客だったのが、
「もうそれは時代遅れ」と言っているのですから
説得力があります。
この本は最近私が読んだ本の中で、
秀逸に論旨が明快です。
すべての主張に、番号を付けた根拠が示されています。
まず、序文で「これまでのマーケティングの5つの常識」
は時代遅れであると断定しています。
------- その5つとは以下のとおりです。 ---------------------
「企業のブランドは今まで以上に重要である」
「ロイヤルティを築くことがマーケターの日々の大事な仕事」
「顧客はみんな不合理だ」
「過剰な選択肢は人々を麻痺させることがある」
「ポジショニングこそマークティングの最重要課題」
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そのすべてに解説が付いています。
その基本的な理由は、
消費者がネットで豊富な情報を入手できるようになったからです。
商品・サービスの提供者からの情報は胡散臭いのです。
商品・サービス提供者が、
きれいごとを並べて消費者を「ダマシても」
ネットで流れる消費者の情報でその「ウソはばれる」というのが
当書名のゆえんです。
著者は、消費者が購入するに際しての判断情報は、
以下の三つであるとしています。
- Prior・・・・・・・・ その人が前々から持つ嗜好、信念、経験
- Others・・・・・・ 他者つまり他の人々や情報サービス
- Marketers・・・ マーケター
この三つの組み合わせを「影響力ミックス」と称しています。
商品やサービスの種類によって、
あるいは個人の思考によってこのバランスは異なります。
ブランドがステータス・シンボルになる嗜好品の場合は、
Pで決まります。
この場合、従来型マーケティングが通じます。
最近は、ネットによって0の情報が入手しやすくなったので、
胡散臭いMよりも0が重要になったというのです。
以下に、
影響力ミックスについての解説を引用させていただきます。
あなたの顧客の影響力ミックスを割り出してみよう
--ヒントになる7つの視点ーー
マーケターは自分の顧客の現在と将来の影響カミックスを
理解しておく必要がある。
影響カミックスとは、顧客の購入判断にとつて、P、0、Mが
それぞれどのくらいの割合で重要かを指す。
これは製品カテゴリー、願客の特徴
(もちろん顧客セグメントによって異なる)、
ブランドのポジショニングに応じて変わってくる。
影響カミックスは、P、0、Mの3つの情報源の占めるウェイトが
時間とともにどう変化していくか、
それに応じてマークティング予算をどこにどれだけ投じるべきかを
分析するためのフレームワークである。
別の言い方をすれば、影響カミックスはあなたの製品にとって
絶対価値がどれくらい重要かを理解するためのツールだ。
その結果いかんで、従来型マーケティング・フレームワークを
用いるべきなのか、まったく新しい考え方を
採り入れるべきなのかが決まるだろう。
そのためにはこんな疑間について考える必要がある。
現在、顧客は購入を判断するときに、
どれくらい0(具体的な0の種類や要素)に頼っているのか?
将来的には? これは「はい/いいえ」の疑間ではないので、
答えは度合いで表すことになる。
本書で説明しているトレンドがあなたに当てはまるかどうかは、
あなたの顧客がPとM以外の情報源を
どれくらい使っているかで決まる。
あなたの顧客が右端の「Oに依存する」に近ければ近いほど、
本書でお話ししているトレンドは
あなたにとって重要、ということになる。
あなたが左端のまったく「0に依存しない」分野でビジネスを
行っているとしたら、ほとんどの顧客は購入を判断するときに
0にまったく頼らず、0からの情報に触れたとしても、
その情報に惑わされない、ということになる。
たとえば、あなたがハンガーを販売しているなら、
顧客は左端の「0に依存しない」領域あたりに位置する。
一方、反対側の「0に依存する」領域にいるのは、
製品やサービスの購入を判断するときにOの影響を
受けやすい顧客だ。
たとえば、フェイスブックのようなSNSサイトに
加入するかどうかは、ほかの人々(0)に大きく左右される。
そもそもフェイスブックはほかの人々と交流するための
サービスなのだから。ほとんどの企業にとって、
顧客は2つの極端な例のあいだのどこかに位置することになる。
顧客が先ほどのバーのどのあたりに位置するかを決定づける
一般的な要因を7つ挙げておこう。
7つの視点は以下のとおりです。
1)意思決定の重要性 どうでもよいことかどうか
2)質の重要性と質の差 似たようなものかどうか
3)リスクと不確実性 リスクがあると人の意見を聞く
4)そのカテゴリーの変化のスピード 早い場合も人だのみ
5)Oの有用性 Pで決まるものは?
6)ネットワーク効果 みんなが使っているものは無難
7)みんなの前で使う製品 みんなの評価を気にする
なるほど、です。
本題の「絶対価値」というのは、
自分がそれを使って感じる価値ということです。
私たちは「絶対価値」という言葉を、
消費者の体験する製品の質という意味で使っている。
たとえば、レストランでの体験、本を読んだときの楽しさ
(または退屈さ)、かみそりの切れ味、ヘッドホンの聞き心地、
またはカメラの利用価値といった風に。
つまりカメラの「絶対価値」とは、
その技術的仕様や信頼性だけでなく、
そのカメラを所有する感覚や実際の使い心地をも指している。
それに対して相対価値は、
ブランドや宣伝を信じて購入するときの価値観ということのようです。
(明確な定義はありません)
以下についても明快な解説があります。
絶対価値への4つの疑問に答える
情報化社会でブランドが衰退する理由
情報過多で消費者は混乱するのウソ
要約すると、ネットワークの発展により、
SNSなどの口コミ情報や比較サイトの情報によって
消費者が自分で判断するようになってきていて、
今後ますますそうなっていく、ということなのです。
したがって、冒頭の従来型マーケティングは
どんどん活躍の場が狭められていく、ということになります。
従来型、今も主流のマーケテイング手法は
いかに消費者の望むものを見つけ出して相手に提示するかです。
アマゾンが、「この本を買うならこれもいかがですか」とか、
スマホに「ここにいるなら、こんな良い場所がありますよ」とかです。
これらの従来型のマーケティングは「プッシュ型」です。
「売らんかな」です。
上の二つの例は、少しは知恵を出していますが
「これはどうですか」に変わりはありません。
8月18日号の日経コンピュータの特集は、
「今こそデジタルマーケティング」と称して、
その手法を紹介していますが
その大半が「プッシュ型のマーケティング」です。
著者たちが「もう終わるよ」と言っている手法です。
新しいマーケティングは「プル型」です。
「いいものはそれを欲しい人のところに流れていく」
ということなのです。
なお、
「プッシュ型マーケティングからプル型マーケティングへの
パラダイムチェンジ」
という言い方は上野の発案です。
わが社の製品・サービスも
「どうやったら売れるのだろうか」と考えているようではだめだ、
と悟りました。
しかし、プル型になるまではたいへんですね!
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