2024年2月26日月曜日

「ガラパゴス化した国会の改革」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日本の国会がガラパゴス化しているという主張を知っていただきます。
 それとの関連で今回の「裏金」問題も考えていただきます。
 その解決策を考えていただきます。
ねらい:
 経済が上向きつつありますので、政治も上向いてほしいですね。
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私は政治問題は好きではないのですが、
自民党の「裏金」問題の世間マスコミの大騒ぎをみて、
疑問に思い、棚上げにしていたこの論文を取りあげてみました。
今回の「裏金」問題は、
確かに政治資金規正法に反して、
政治資金収支報告書に記載しなかったのは問題ですが、
その資金は国からの給付金=税金ではないのです。
党や議員が民間から集めた「パーティー券代」です。
それを裏金にしてしまったことは関係者の抜かりではありますが、
お国に迷惑をかけることではない、という意識だったと思われます。

私は、こんなことで騒いで、
大事な政策検討がおろそかになることを心配します。

今回の件名は、学士會会報2024ーⅠ号に掲載されました
野中尚人学習院大学法学部教授の寄稿文名です。


氏によりますと、ガラパゴス化とは
自己改革、ないしは適切な環境変化への対応を行わない結果、
妥当な進化・変化に背を向けた状態に陥ることをさしている、
のです。

1.あるべき国会の状態
妥当な進化とはこういうことだそうです。

1.第一に、政府の統治機能、多数派の利害の反映、
そして少数派ないしは反対派の権利として批判し
政府・多数派とは異なる見解を表明する権利
という三つの互いに対立・矛盾しかねない権利・権限を共存させる
ことである。
そしてこれらが、一定のルールに基づき、議会内部での行動として
行われるようになっていることである。

2.第二に、議員間あるいは政党間での討論機能を充実させることである。

3、第三に、政治的なメカニズムの強化である。
議会による行政府監視はむろんこれに含まれる。
それだけではなく、政党を軸として、
政治アクター同士が互いに監視・牽制す路ことが不可欠である。

2.国会のガラパゴス化の現状
これに対して現状はこうなっている。
第一に、議会内での重要な主体別の行動をみると、
野党・少数派の行動は活発である。
政府立法への掃討に緻密な精査と
スキャンダル等への批判を通じて行われている。

それに対して、与党グループは、
特にその中核である与党自民党の活動は極めて弱い。
自民党議員は、政府の立場。つまり大臣や副大臣の立場から
一定の発言量があるのは事実である。
しかしそれは、三権分立の統治メカニズムの中では
あくまで行政府としての見解の表明であり与党としてのものではない。
この点は、他の民主主義国では頻繁に行われている
与党による政府法案の修正が、日本の国会では皆無という
事態に象徴的に表れている。

自民党議員の国会(衆議院)での発言量は1割を少し超える程度でしかなく、
議員一人当たりでは圧倒的に少ない。
共産党に比較すると20分の1から30分の1である。
この状態を、「与党の国会からの退出」と呼んでいる。

こう指摘すると返ってくる答えは
「自民党は与党事前審査を通じて活発に討論している」である。
しかし、それは大問題である。
その与党事前審査は非公開である。
密室で、重要な討議されているのである。
政権党と官僚機構が公的なルールに基づく監視という原則を
踏みにじっていることで、癒着・汚職の温床になっている。

第二の議員間の討論の消滅は、
与党の国会での発言の忌避から生まれていて、
鳴り物入りで始められた党首討論はいつの間にか実施れなくなった。

第三の政治責任の強化については、
重要施策に対する首相・大臣の答弁軽視や説明の拒否は、
もはや見過ごせないレベルである。

たとえば、
対ロシア外交方針や異次元金融緩和などの大きな政策方針の前提や
戦略的な判断の根拠は何だったのか、
国会においては極めて不十分にしか語られていない。

これでは、政策の事後評価などできようはずもない。
官邸が一言「適材適所」と言うだけの人事対応も言語道断であるが、
国会でも適切な説明は行われていない。

3.ガラパゴス化の原因
国会対策がほとんど進んでいない原因は以下である。
戦後日本の長い一党優位体制、政権交代のない政治システムの下で、
与野党間、そして政府を挟んで特殊な役割構造が形成され、
固定化されたことである。

この仕組みは、戦前から継承された話し合い重視という規範の下、
与野党間の影響力をバランスさせるべく合意された慣行によって
構築された。

問題を特に複雑にしたのは、
戦前制度の継承と一党優位体制の形成という条件の下で、
国会では野党の影響力が相対的に強められ、
その一方で中選挙区制の影響で党内の凝集力を失った自民党が、
国会から退出することを余儀なくされてことである。

党内からの造反リスクを抱え込んだ結果、
野党の力が強い国会ルールの下で政府法案を安定的に成立させることが
できなくなったのである。

4.国会の脱ガラパゴスの対策
この対策はほぼ唯一の対策しかない。
それは政権交代である。
与野党が交代することで、
双方が固定化された役割構造の縛りから解放されることによって
新しい均衡と刷新が可能となる。

5.上野の見解
このテーマに関して、私はこう考えます。
政権交代がどうなるかは、2009年の政権交代の結果が示しています。
何もいいことはありませんでした。

ガラパゴス化を脱して、政治とカネの宿痾を断ち切るには、
以下の対応が必要です。

1.与党事前審査制度を廃止する。
  著者が指摘するように密室の交渉を廃絶します。

2.国会の委員会制度を活性化する。
  それに代わって
  正規の国会での検討を行う委員会制度の運営を強化して
  そこで前向きの検討をしていただだきます。
  現在、衆議院には常任委員会が17あります。
  必要に応じこれ以外の特別委員会も開催可能です。

3.派閥を全面解消する。
  覇権を目指し金権を握る派閥を一掃します。

4.自民党本部機能を強化する。
  派閥に代わって政治を動かすのは党本部です。
  党本部の力は事務局ではなく、党のトップです。
  「自民党をぶっ潰す」と言った
  小泉純一郎さんのようなリーダシップが必要です。
  4条件の中では、この条件が最も難題でしょう。
  どなたができそうでしょうか?

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