目的:
日米同盟の両国のコスト負担を比較してみました。
メリットとの相対比較ですから単純にどちらが多いとは言えない
ことが分かります。
ねらい:
この先どうなるのが妥当なのか考えましょう。
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この項は、學士會会報2020年Ⅱ号掲載
武田康裕防衛大学校教授の
「日米同盟のコスト 在日米軍駐留経費をめぐる交渉の行方」
のご紹介です。
これは、トランプ大統領の「過去に拘らない」無茶振りで
多くの国民の関心事となったテーマです。そのコスト負担実態はあまり知られていませんでしたので、
有効な情報でした(少なくとも私にとって)。
以下に筆者の論旨を要約して示します。
一般に同盟のコストとは、
1)経費の分担と
2)任務の分担で構成される 「防衛コスト」
3)主権の制約と
4)駐留経費の負担で構成される 「自律性コスト」
からなる。
日米同盟では、
米国が「防衛コスト」を過大に分担する一方で、
日本が「自律性コスト」を過大に負担する
非対称な状況となっている。
2)と3)は金額換算がされにくいので
1)と4)で対比されてきている。
日本が負担する2018年度の在日米軍関係経費
費目
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負担金額
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①
在日米軍の駐留に関する経費
内数 HNSサポート
施設借料、周辺対策費
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3789億円
(1968億円)
(1820億円)
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②
SACO(沖縄施設。区域特別委員会)関係経費
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51億円
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③
米軍再編関係経費
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2161億円
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合計
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6001億円
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一方日米同盟によって日本が享受する便益は、こうなる。
項目
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内容
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①
米国の拡大抑止機能が提供する弾道ミサイル防衛
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ミサイルの探知・追尾、発射前の抑止と無力化、発射後の迎撃
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②
シーレーン防衛
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千海里以遠の輸送ルートの安全
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③
島嶼防衛
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南西諸島への攻撃に対する阻止・排除・奪還
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自衛隊がこの機能を代替した場合のライフサイクルコストを年間換算すると
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1兆7千億円
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つまり、日本にとっての費用対効果は現状で1対2.8となります。
日本の便益の中では、島嶼防衛が現実的なものとして大きいと思われます。
在日米軍のにらみがなければ、尖閣諸島問題は中国の言いなりでしょうね。
米軍にとっての在日米軍基地の費用対効果
項目
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金額
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①
インド太平洋軍に対する質の高い保守・点検機能、
②
大量の燃料及び武器・弾薬を貯蔵する後方支援機能
③
グローバルな戦略を支える情報収集機能の提供
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空母打撃群の母港である横須賀海軍基地がなければ、同じプレゼンスを維持するのに最大で9個空母打撃群が必要で、そのコスト試算は144億ドル(約1兆6千億円)
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在日米軍基地は、米国の在外基地面積の24%を占める。
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その資産価値は、総額982億ドル(10兆8千億円)に相当する。
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2018年度の米国負担在日米軍経費は、年間53億ドル
(人件費29億、作戦維持費18億、軍事建設費2億、家族住宅費4億)
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横須賀基地のメリットは
その2.7倍
参考値:在日米軍基地の資産価値は年間経費の19倍
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武田氏の意見では、米国の方がメりットが大きいのです。
また、現状の日本の経費負担割合は、米軍人件費を除けば約70%
その人件費を入れても約50%で、応分の負担をしています。
昨年11月からの米側の主張は、
HNSサポートの4倍(すなわち駐留経費全額の5割増し)の日本負担です。
そうなると日本の全体負担は現行の2倍になります。
経費総額の5割増し負担のの意味は、
日本のメリットを想定してのことらしいです。
確かに、上述のように日本のメリットはあります。
アメリカ国民は、日本の防衛費の国家予算中の少なさを問題にし、
日本国民は、
経費負担だけでなく広大な米軍基地提供に不満を持っています。
決着は容易でないでしょうね。
武田氏の意見は、
日本がもっと防衛コストを増加させ、
日本の自律性コストの負担軽減につながることをしたらよい
(たとえば、米軍基地の日米共同使用を通じて、
米軍機能を肩代わりする)、というものです。
この辺りは防衛関係者の意見として
割り引いて聞く必要がありそうですが一案ではあるでしょう。
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