【このテーマの目的・ねらい】
目的:
あらためて人類のサステナビりティの検討です。
ねらい:
筆者の言われるように、人類一人ひとりが意識・行動改善して、
良い地球環境を後世に残さなければなりません。
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この項は、學士會会報2020年Ⅱ号掲載
石井菜穂子(国際機関)地球環境ファシリティ議長兼CEOの
「人新生におけるグローバル・コモンズ」のご紹介です。
私は、ここのところ「2030年ショック」という言い方で、
2030年の重大事を取りあげています。
一つはAIとロボットが9割の人の仕事を奪うデジタルショックで、
もう一つは中国が世界一のGDP大国になることです。
9割の人の仕事がなくなっても、
人がいる限りその衣食住は必要であり誰かが供給するのです。
その収入をベーシックインカム制度で
9割の人に分配すれば済みます。
中国が一番かどうかは人間社会の序列です。
いくらなんでも中国だって
自分に従わない国民を一方的に殺したりはしないでしょう。
そういう意味ではこのショックは内輪もめのレベルです。
ところが、石井さんの述べられる2030年危機は
そんなものではないのです。
地球存亡の機というのです。
英語ことばで言えばサステナビりティの危機なのです。
現在は、地球の地質学的世代では新生代の第4紀完新生
(約1.2万年前から始まっている)ですが、
地質学者たちは、今や人新世に入ったと言っているそうです。
筆者は冒頭でこう述べています。
2020年代に入った。
これからの10年は、人類社会の持続可能性(サステナビりティ)、
運命をを決める極めて重要な10年である。
2030年に向けた世界的取り組みは二つある。
193カ国が合意しているSDGs、
温室効果ガス排出量の半減を目指すパリ合意
しかしいずれも進捗がはかばかしくない。
以下、著者の主張をご紹介します。
一部、上野の要約部分もあります。
「人新世」とは、
人類が、登場して初めて地球システム(生物圏)の機能に
支配的な影響を及ぼす時代になった、という意味である。
これまでは、
人類の活動が地球システムに与える影響は限られていた。
地球は大きく人類は小さかったのである。
しかし、産業革命、特に20世紀半ば以降、
経済活動は加速し、地球システムに大きな負荷をかけている。
そして1980年以降は、
地球が本来持っていたレジりアンス(回復可能性)が
限界に達しつつある兆候が明らかになっている。
上野注:
産業革命以降の200年が問題だとすると、
地球45億年の歴史からするとほんの僅かな期間です。
富士山の標高3776メートルに例えると、
ほんの0.2ミリくらいのものなのです。
そんな短期に地球が崩壊されつつあるのです。
北極圏の氷の融解の加速は海面上昇を招くだけでなく、
それ自体が太陽熱の反射を減らし吸収を増やして、
温暖化をさらに加速している。
アマゾンやオーストラリアなど世界各地で激化する山火事、
沿岸部の都市を襲う水害は
人類と生態系に甚大な被害をもたらしている。
気候システムの安定や生物多様性にかけがえのない
アマゾン熱帯雨林は乱開発され、
これまでのカーボン・シンク(吸収)から
カーボン・ソース(排出)になる日も近いと言われる。
わが国でも、一昨年、昨年と、
台風や豪雨、猛暑で多くの命や財産が失われ、
復興も追いつかなくなりつつある。
地球システムは、不可逆的に臨界点に近づき、
異常が当たり前になりつつあるのだ。
人類は、
地球システムを壊し続ける今のやり方をいつまで続けられるのか、
地球の限界はどこにあるのか?
2009年にヨハン・ロックストローム博士を中心とする科学者たちが、
この点に重大な警鐘を鳴らした。
彼らは、
地球システムの安定を支える主要な構成要素(サブシステム)として、
気候システム
生物多様性(それを支える熱帯雨林等を含む)
土地利用
海洋
リンや窒素(栄養素)の循環
など9つを特定し、
地球の安定のために超えてはいけないそれぞれの限界値を
具体的数値で示した。
その後、事態は悪化を続け、
特に生物多様性、リン・窒素循環、気候システム、土地利用では
我々はすでに限界値を超えたか超えつつある。
このような地球環境の危機は、
産業革命から今に続く経済・社会システムに原因がある。
このシステムを根本的に変えない限り、
我々は遠からず地球の限界を超え、不安定で予測不能な、
しかし明らかに「完新世」よりは棲みにくい「人新生」の環境を
生きていかねばならない。
たいへんなことですね!!
そんなに深刻な状況とは思っていませんでした。
ではどうすればよいのでしょうか!!
筆者はこれから10年が大事だ、と言っています。
エネルギーシステムでは、
供給面の化石燃料脱却、需要面の効率化で急速な脱炭素化、
都市システムでは、
2050年までに世界人口の7割が都市に住むと予測される中
いかにコンパクトでリジリエントな都市をつくるか、
食料システムでは、
脱現状(食糧生産に伴う排出、農地拡大が森林を破壊)
直線的な生産・消費システムを循環型に転換する、
製品のライフサイクルを通じて資源が循環されるように、
当初のデザイン・設計段階から考えると共に、
生産・流通・消費に関わる全ての主体が
その取り組みに参加することが必要である。
こうした抜本的なシステム転換を成功させるには、
政策、ビジネス、消費者・市民活動などの
様々な分野におけるリーダーシップが重要になる。
そこには
多くの利害対立や技術的経済的な困難が伴うからである。
上野注:
小泉環境大臣には
もっともっと頑張ってもらわなければなりません。
一方で我々一人ひとりが、
ライフスタイルや価値観を変えられるかどうかも
成功のカギとなる。
それらの課題を実現していくためには、
その仕組みが必要である。
現在はそのガバナンスの主体がないために
地球環境の後退が続いているのである。
気候、生物多様性、土地、海洋などは、
人類全体の共有財産である。
共有財産は、「共有地の悲劇」という状態が起きる。
すなわち、放っておくと濫用され荒れ果ててしまうのである。
今こそ世界レベルで地球システムを守る有効なガバナンス、
各国・各主体の目先の利害を調整して人類の未来のために
経済・社会システムの転換を進める仕組み、
Global Commons Stewerdshipが必要である。
その動きは出始めている。
RE100(再生可能エネルギー)
TFA2020(熱帯雨林)
RACE(循環型経済)
AEPW(プラスティックゴミ)
そこでは、
目標ごとに、政府、産業・企業、金融,CSO、アカデミアなど
多様な主体が国を超えて連携し、
コミュニティや市民も参加する。
専門家や経済・政治リーダに任せきりにせず、
有権者・消費者・投資家である我々一人ひとりが
覚悟を決めて転換の原動力にならなければならい。
「デジタル革命の可能性と責任」につても付言しています。
デジタル革命は世界を大きく変える可能性を持つ。
それが既存システムを強化するだけに終われば、
地球環境と人類社会の衝突を加速するだけである。
これからの科学技術の開発と利用は、
地球のサステナビりティに向けたシステム転換を実現する
ものでなければならない。
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人類の歴史を決める10年に入った。
Global Commons Stewerdshipを
地球上のすべての局面で進めなければならない。
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