目的:
人間の性生活が他の霊長類からどのように進化(変化?)してきたのか
を知っていただきます。
どこが違うのかを再認識していただきます。
ねらい:
それでどうしましょう。ご自分に都合のよい活かし方がありますかしら?
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この件名は、
カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授、進化生物学が専門の
ジャレド・ダイアモンドの書かれた書名です。
なんとこの方は、1937年生まれです。まだ現役の先生なのでしょうか?
人類進化の総論書が多い中で、
特定のテーマで掘り下げた非常に興味深い内容です。
他の動物と比較すると、
人間の「性」はずいぶんユニークなのですよ、
ということを、いろいろな側面から解説しています。
その内容を表に要約してみました。
人間固有の
性的特徴
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状況の説明
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そうなる
メリット
(想定を含む)
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他の動物
での例
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排卵期が認識できない
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一般の動物は、性器のまわりが赤くなる、強烈な匂いを発する、鳴き声を上げる、かがんで性器を見せる、などで生殖可能な時期が分かる。
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いつでもオスを誘えることで、優秀な子孫を残す機会を増やす。
男に自分の子供だと思わせて子育てに参画させる。
進化生物学の結論では、はじめは乱婚で自分の子供かもしれないと思わせて子殺しを避け、そのうちの一部の進化が子育てを確実にする一夫一妻に進んだ、となっている。
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霊長類68種のうちオランウータンを含む32種(10種は一夫一妻制)は排卵のサインを出さない。
ゴリラを含む18種はわずかなサインを出す。
残りのヒヒやチンパンジーを含む18種(うち14種は乱婚)が明確なサインを出す。
乱婚のベルベットモンキーは、群れのすべてのオスに子供たちが自分の子かもしれないと思わせている。
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楽しむためにセックスをする
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一般の動物は、メスが交尾を誘うのは受精の可能性のあるときだけ。それ以外の時は拒絶する。
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オスを自分の元に留めおくのに「いつもできる」ことが有効なのでしょう
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ボノボ、イルカも。
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オスが子育てに参画する
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動物界で多数派ではない。
オランウータンは普段単独で暮らしていて交尾の時だけ一緒になり、オスは一切子育てしない。
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そうなる根拠は、本文に記述。
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シギの一種やある種の魚(タツノオトシゴ、トゲウオ)や両生類(サンバガエル)もオスが子を育てる。
一夫多妻のシマウマやゴリラ。一夫一妻のテナガザル。一妻多夫のセマダラタマリンもオスが子育てをする。 |
女性に閉経時期がある
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ある時期になると妊娠できなくなる。
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人間の乳幼児は手がかかり、保育に手助けが必要である。女性が一生産み続けるよりも孫の世話をする方が種族の存続にとって有効である。続き右欄へ。
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野生の哺乳動物には閉経はない(衰えることはある)。
(ヒトの子供は10歳くらいまで大人の手を借りないと生きられない。頭が大きくなり未熟状態でないと産道を通れないからそうなった)。
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人目を避けてセックスする。
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一般の動物はセックスを隠さない。
生物学的には、自然な行為なので隠すという意識は生まれない。
動物が隠すのは、得た獲物をとられないように隠すということぐらい。
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人間は恥を知っているからで、隠すメリットがあるから隠すのではない。
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チンパンジーはオスと発情したメスが2匹だけで数日間過ごすことはあるが、その後すぐに人前でセックスするので、人目を避けるということではないようだ。
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授乳期間が始まる前に女性の乳房が発達する
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セックスアピールで一般的に言えるのは
男性の筋肉、両性ともの顔の美しさ(そのとらえ方は人種によって千差万別)、女性の脂肪である。
上野注:女性の体の魅力を一般化すると脂肪であるというとらえ方に感心。
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女性の脂肪の魅力を発揮するのは、乳房(これは授乳能力が大きいという見せかけだという→乳の出る乳腺と脂肪は別)と臀部(安産を期待させるがこれも見せかけ→臀部の大きさ=産道の広さではない)である。
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他の動物のことには触れていませんので、おそらくそういうことはないのでしょう。
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男性の性器が長い
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一般的に13センチといわれる。
男性のセックスアピール点である筋肉の一部である。
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2足歩行をして前面対峙するようになり、「正常位」を実行するには長さが必要である(上野の推定)。
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勃起状態でゴリラは3センチ、オランウータンは4センチしかない(それでも15分間もつそうだ→平均的アメリカ男性4分間)。
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要約しきれない2点を本文で記します。
まず、オスとメスの性行動・生活行動の違いについてです。
オスもメスも、自分の子孫が残せるような、
種族の維持に有効となるような行動をとります。
その一面である産んだ子を放置せずに育てようとするかどうかは、
以下の3点で決まるというのです。
その1 自分が子供にどれだけの投資をしたか
胎生動物の場合、メスは胎内で子を育てている。
大きな投資である。
これに対してオスは精子を放出しているだけである。
メスの投資がはるかに大きい。
その2 子育てをすることで失う機会損失
子育てをするより、子育ては相手に任せて
他の異性を相手に生殖行為をした方が自分の子孫を残すチャンスが多い
ならそうする。
メスは性交のあと妊娠すると子を産み授乳期間が終わるまでは、
別のオスを受け入れても新たに子を作ることはできない。
子育てに専念することが利に適う。
オスは次のメスと性交することで自分の子を残す機会が増える。
その3 自分が親であることを確信できるかどうか
メスは自分が生んだ子は自分の子だと確信できるのに対して、
オスは状況証拠でしかそれを確信できない。
ということで、一般の哺乳動物はメスが子を育てることになるのです。
次は、オスとメスの生殖戦略の違いの典型的な例です。
人間の場合の原型であると考えられ、非常に興味深いので
長文になりますがそのままご紹介します。
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父も子育てに参加する哺乳類や鳥でさえ、
オスは世話をどこまで小さく手抜きできるかを見極め、
できるだけ母親に任せて子供を無事に育てさせようとする。
さらにオスは、ほかのオスの配偶者とも交尾を行なおうとするので、
不幸にして配偶者を寝取られたオスは、何も知らずによそのオスの
子供を育てることになる。
オスが自分の配偶者の行動に病的なほど疑い深いのももっともである。
両親共同でする子育てに組み込まれたこうした緊張関係は
マダラヒタキと呼ばれるヨーロッパ産の鳥で
くわしい調査が行なわれている。
ほとんどのヒタキ科のオスは一羽の配偶者しか
もたないとされているが、複数のメスを求めるものも多く、
かなりの数のオスがそれに成功する。
ふたたび人間の性的特徴をテーマにした本書の数ページを割いて
鳥の例を紹介するが、それには意味がある。というのも、
(これから説明するように)ある種の鳥の行動は人間の行動と
驚くほど似ており、しかも人間とは違って倫理に反するといった
怒りを買うことはないからだ。
マダラヒタキの場合、
一夫多妻婚は次のような仕組みになっている。
春になると、オスは快適な巣穴を見つけ、
その周辺に縄張りを構えて、メスに求愛し、交尾を行なう。
メス(第1のメス)が産卵すると、
オスは受精に成功していたことを知り、今や抱卵に忙しいメスが
他のオスに興味をもつことはなかろう、どのみちメスは一時的に
不妊の状態にあるのだと確信する。
そこでオスは近くに新しい巣穴を見つけ、別のメス
(第2のメス)に求愛し、交尾を行なうのである。
第2のメスが産卵すると、
オスはふたたび受精に成功したと確信する。
このころには第1のメスが産んだ卵が孵化しはじめる。
オスは第一のメスの巣に戻り、労力のほとんどをつぎこんで
雛に餌を1えるが、第2のメスが産んだ雛にはめったに、
あるいはまったく餌を運ぼうとしない。
数字がこの残酷さを物語っている。
オスが第一のメスの巣に餌を運ぶ回数は一時間に平均一四回だが、
第二のメスの巣に運ぶ回数はわずか七回なのだ。
巣穴が見つかりさえすれば、ほとんどのオスは第二のメスを求め、
そのうち39パーセントのオスが首尾よくメスを獲得する。
明らかにこのシステムからは勝者と敗者が生まれる。
オスとメスの個体数はほぼ同じであり、メスは配偶者を
一羽しかもたないのだから、重婚のオスがいればその分、
一度も交尾できない不運なオスがいるに違いない。
最大の勝者は、(二羽の配偶者の分を合わせて)毎年
平均8.1羽の雛の父親となる一夫多妻のオスである。
一方、一夫一妻のオスは、平均5.5羽の雛しかもてない。
一夫多妻のオスは、
非交尾のオスにくらべて年長で身体も大きい傾向があり、
最良の縄張りを構え、最良の生息域に最良の巣穴をもつことができる。
その結果そうしたオスの雛は、他の雛より体重が10パーセント近く重く、
他の小さな雛より生き残る確率も高い。
最大の敗者は、不幸にして一度も交尾できなかったオスである。
一羽もメスを獲得できず、子孫をまったく残せない
(少なくとも理論の上では――詳細は後述)からだ。
第2メスも同じく敗者である。
第1メスよりよほど必死に餌を探して
雛を育てなければならないのだ。
第2メスは一時間に20回も巣に餌を運ぶが、
第1メスはたったの13回だ。
こうして第2メスは体力を使いはたし、
早死にしてしまうのかもしれない。
第2メスがどれだけ必死になったところで、
ひとりで集められる餌は、第1メスがオスの協力を得て
労せず集める餌の量にはおよばない。
そのため飢え死にしてしまう雛もおり、
第1メスの雛にくらべると生き延びるものが少ない
(平均して3.4羽。第1メスの雛は5.4羽)。
そればかりか、無事に成長を遂げたとしても、
第1メスの雛にくらべると身体が小さく、冬期や渡りといった
過酷な環境を生き延びることが難しい。
上の数字からも過酷な状況が見てとれるが、
なぜメスは「第二夫人」という運命を受け入れるのだろう。
生物学者たちが従来推測してきたところによると、
第2のメスがその運命を受け入れるのは、
たとえ放っておかれるにしても、
優れたオスの配偶者になるほうが、
劣悪な縄張りをもつ冴えないオスの唯一の配偶者になるよりましだからだ
ということだった
(人間の社会でも、
同じ理由から裕福な既婚男性の愛人になる女性がいる)。
しかし実際には、メスはその後の運命を承知のうえで
第2のメスるのではなく、
オスにだまされているだけだということがわかった。
一夫二妻のオスがメスをだますときのコツは、
第1の巣穴から200~300メートルほど離れた錫所に
第2の巣穴をつくることである。
二つの巣穴の間には、
いくつものほかのオスの縄張りをまたぐことになる。
驚くことに、第1の巣穴の近くに何十ものよさそうな巣穴があっても、
オスはそこでは第2メスに求愛しようとしない。
二つの巣穴の距離が近いほうが行き来の時間を節約できるし、
雛に給餌する回数も増やすことができる。
それに行き来の最中に
配偶者を別のオスに寝取られる危険も減るだろう。
このような不利な条件にもかかわらず
第2の巣穴を遠くに構えるのは、第2のメスを欺き、
すでに配偶者があることを隠しておくためだとしか考えられない。
子供を残すという切迫した問題の前では、ヒタキのメスは
とくにだまされやすくなっている。
卵を産んだあとでは、オスに別の配偶者がいることを
知ったところで、もう手の打ちようがない。
卵を見捨てて新しい配偶者を探し、
それが前のオスよりましであることを願うより
(どのみち新しいオスにしてもその多くは重婚オスだろう)、
すでに産んだ卵を育てたほうがましである。
マダラヒタキのオスにはもう一つ戦略がある。
男性の生物学者たちはこの戦略に倫理に反さないように聞こえる
「混合繁殖戦略(Mixed Reproductive Strategy 略してMRS)
という名前を付けた。
この戦略は、すでに配偶者のいるヒタキのオスが
別のオスの配偶者とこっそり交尾を行なおうとするものだ。
よそのメスが一時的に単独で巣にいるのを見つけると、
オスはそのメスと交尾をしようとし、成功することも少なくない。
メスに近づくときには大声でさえずることもあるし、
静かに忍び寄ることもあるが、後者のほうが成功率は高い。
オスのムナオビエリマキヒタキはほかのオスが
(餌を探しにいくなどして) 一時的に配偶者のもとを離れた場合、
平均して10分以内にその縄張りに侵入し、3.4分の隙があれば、
巣にいるメスと交尾を行なってしまうのである。
観祭によれば、マグラヒタキが行なったすべての交尾のうち
29%がペア外交尾(Extra-Pair Copulation略してEPC)
だとわかっており、
雛の24パーセントが「非嫡出子」であると推定されている。
またほかのオスの巣に侵入してメスと交尾を行なうオスは、
近接する縄張りの主であることが多い。
配偶者を寝取られたオスにとってはEPCやMRSは
進化がつくりだした災難だ。
短い一生のなかの繁殖シーズンをまるごと一つ無駄にして、
ほかのオスの遺伝子を受け継ぐ雛に餌を与えつづけたのだ。
逆にEPCを行なったオスは大きな成功を収めたかに見えるが、
少し考えてみると、オスのバランスシートの計算は
見かけほど単純でない。
あるオスが巣を留守にしてメスをくどいているあいだに、
別のオスがやってきて自分のメスと交尾を行なって
しまうこともあるからだ。
配偶者がメスから10メートル以内の距離にいるときには、
EPCは滅多に成功しないが、
それ以上離れると、成功率は急激に上昇する。
ということは、別の巣で過ごすことが多く、
ニカ所を行き来するにも時間がかかる重婚者のオスにとって、
MRSはとくに危険な戦略なのである。
重婚オスは自らもEPCを試み、
平均25分おきに別のオスの巣に侵入するが、
その間自分の巣にも11分おきに別のオスが忍び込み
EPCをはたそうとしているのだ。
つまり、よそのメスを求めて巣を離れているまさにその最中に、
自分の配偶者もまた別のオスに必ず狙われているのである。
このような統計からすると、マダラヒタキのオスにとって
MRSはどうかと思うような戦略だが、
彼らもリスクを最小限にする知恵はそなえている。
配偶者が妊娠するまでは、巣から2、3メートル以上は離れず、
ひたすらメスを守り、メスが妊娠してはじめて、
巣を離れて別のメスを探しにいくのである。
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こんな悪知恵は、
人間のオスだってなかなかそこまでいかないようなレベルです。
たかだか小鳥がアタマで考えてそういう行動をするとは思えません。
本能はそんなに凄いものなのでしょうか。
犬が脱糞後に後ろ足で砂か土をかけようとするのだって
凄い本能だと思っている私には信じられません。
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