【このテーマの目的・ねらい】
目的:
チンパンジーがどういう特性を持っているか
を知っていただきます。
ねらい:
なぜ、人間がチンパンジーと違ってしまったのか
を考えていただきます。
人間の特性を活かして行動しましょうか。
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本稿の中心は學士會会報913号(2015-Ⅳ)掲載
松沢哲郎京都大学霊長類研究所教授の講演録
「創造するちから」を基にしています。
先生は日経新聞でも「チンパンジーと博士の地の探検」
という連載をしておられます。
以下太字部分は転載です。
サルの仲間は「霊長類」と呼ばれ、
人間も含めて約220種類います。
霊長類(人間を除く」は、
中南米、アフリカ、インド、東南アジア、日本に生息しています。
北アメリカとヨーロッパにはいません。
これは不思議ですね。
人類がアメリカ大陸に棲んでいるのは、
アリューシャン列島経由でアジアからアメリカ大陸に渡り、
南米の先端まで南下したことは知られています。
中南米の霊長類は北米経由ではないということは、
もっと大昔にアフリカから直接南米に渡ったのでしょう。
陸続きだった頃でしょうか(いい加減な想定です)
でもヨーロッパにいないことは不思議です。
どうしてなのでしょうか。
欧米人は「サルは熱帯の動物」と思っているので、
「ニホンザルは雪の中で暮らしている」
と知ると非常に驚きます。
日本はサルが生息する唯一の先進国であることから、
霊長類の研究の最先端の地となりました。
へーー、そうなんですね。
人類は「ヒト科ヒト属ヒト」なのですが、
ヒト科には、
ヒト属 ホモ・サピエンス、ネアンデルタール人(絶滅)
オランウータン属 1200万円前分岐 東南アジアに生息
ゴリラ属 800万円前分岐 アフリカに生息
チンパンジー属(チンパンジー、ボノボ(ピグミーチンパンジー))
500万年前分岐 アフリカに生息
チンパンジーのゲノムは98.8%ヒトと同じということですが
1.2%でこんなに違うものなのでしょうか!
松沢哲郎教授たちは、1986年からギニアで
野生のチンパンジーの観察を始めました。
チンパンジーの研究をすることによって、
人間の特性を把握しようという「アウトグループ」研究の意図を持っておられました。
永年の研究の結果得られた人間の特性は以下の3点です。
1)心
チンパンジーの親から子への教育は教えない方式で、
子は親のまねをして学んでいく。
石で木の実を割ることは4―5歳でできるようになる。
「親や大人と同じことをしたい」ということが動機づけになっている。
人間の場合は、教える、手も貸す、そうして褒め、認める。
「人間の教育の本質は”認める”にある」という結論に達した。
2)言葉
チンパンジーは瞬間的な直像記憶を持っている。
実験の結果、一瞬で見たものを記憶してしまう。
人間にもいますね、数十ケタの数字を一瞬で覚えてしまう人、
テレビにもでてきたりします。
こういう人はチンパンジーと同じ能力を持っているということです。
この能力は何のために必要なのでしょうか。
なぜ人間はその能力が退化してしまったのでしょうか。
チンパンジーは漢字も覚える。
赤、青とかの漢字を見てその色のカードを取り出すことができる。
しかし、逆に色のカードを見て漢字を導くことはできない。
たしかに、色はアナログで一意に色(漢字)と結び付くわけではない。
人間はそこにあいまいな推論を入れているのだ。
チンパンジーの方が厳密に論理的だ。
そのためにチンパンジーの言語的な連想は限られている。
人間は推論のおかげで、言葉の使用が可能になったのではないか。
なるほどです。
しかしなぜそうなったのでしょうかね。
この解明には仮説が必要です。
3)絆
ニホンザルの母親は子供に手助けをしない。
チンパンジーは子供が要求すると手助けをする。
親分格が他を保護することもする。
類人猿の出産間隔は長く、子供が成長しないと次を産まない。
その代り、女性は死ぬまで出産能力を持っている。
人間の場合は出産間隔が短いので母親だけでは育てられない。
そこで出産能力のなくなったお婆さんが育児を手伝うようになっている。
人間の場合、出産能力がなくなってから20年は生きている。
そうして一族みんなで子育てをする。
それによって家族の絆が生まれている。
このことは別項「進化生物学から見た少子化」でも触れられています。
まとめ
チンパンジーは現実しか見ない、想像することはできない。
例:チンパンジーの似顔絵で、目や鼻口のないものを示すと
顔の周りをなぞるだけで、中に目鼻を書こうとはしない。
人間も2歳まではチンパンジーと同じだが
3歳くらいになると目鼻を書くようになる。
その点から、人間は「今この世界」だけでなく、
遠く離れた過去や未来に思いを馳せたり、
地球の裏側の人に思いを寄せたりします。
そんな「想像するちから」を持つから
明日を信じて希望を持つことができます。
それが人間なのだと分かりました。
因みに、チンパンジーは重い病気になっても悲観はしないそうです。
悪い結果を想像したりできないからです。
この結論を我々はどう活かせばよいのでしょうね。
それではここで少し脱線して類人猿にあやかった
類人猿診断をやってみましょう。
この診断の発明者は誰なのか定かでないのですが、
「けっこう当たる」と評判です。
たった二つの質問によって、
その人がどの類人猿に該当するかが決まります。
類人猿の特性がこうだとなっていますので、
その人がどういう特性を持っているかが判明する、
というものです。
出典:(株)エブリイホーミイホールディングス ホームページ
このような2次元4分類の性格判定は、
これまでにもいくつかありますが、
質問が2問だけというのはこれだけです。
判定結果は基本的には同じです。
たとえば、「麓暢の人間診断―自分の持ち味を活かす法」の著者
である麓暢氏の持ち味診断は30問の質問に回答した結果で
冷静型、明朗型、共感型、敏感型の区分をします。
ほぼ、
冷静型 = オランウータン
明朗型 = チンパンジー
共感型 = ボノボ
敏感型 = ゴリラ
にほぼ対応しています。
ある営業方法の研修・指導をしている著名なコンサル会社が
用いている相手を見分ける区分は、
1軸め:言動が抑制的か、開放的か
2軸め:断言する傾向が強いか、問いかける傾向が強いか
で4分類します。
抑制・断言 = 直截指向(ドライバー)
開放・断言 = 開放指向(エクスプレッシブ)
抑制・問いかけ = 観察指向(アナリティカル)
解放・問いかけ = 温順指向(エミアブル)
となっています。
この分類と類人猿診断は目的が違いますので
必ずしも一致しません。
それにしても、
類人猿診断が優れているのは、
たった二つの質問で、人間を4分類してしまうことです。
「簡潔で役に立つ」は方法論の永遠の目標です。
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