目的:
「ブラックバイト」という状況が起きていることを知っていただく。
なぜそんなことが起きているのかを考えていただく。
どうすればブラックバイトから逃げられるかを考えていただく。
周りにそういう学生がいたらアドバイスしてあげてください。
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「ブラックバイト」とは、この本の著者今野晴貴氏によると、
以下にもありますように学生を「使い漬す」アルバイト
のことを言うようです。
この「ブラックバイト」がどんな内容であるかを
同書「はじめに」をそのまま転載させていただきますので
ご覧ください。
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2016年1月、目を疑うようなニュースが配信された。
アルバイトの男性が、
労働災害(おそらく過労による精神疾患だろう)
になるほどの長時間労働を強いられていたというのだ。
うどん店やラーメン店を全国展開するエイ・ダイエング(東京)が
昨年四月、アルバイト店員に長時間労働をさせたとして、
川崎南労働基準監督署(川崎市)は12日、労働基準法違反の疑いで、
当時の男性社長(38)ら2人と、法人としての同社を書類送検した。
送検容疑は昨年4月、
時間外労働や休日労働に関する労使協定を超え、
20代男性に110時間の時間外労働や体日労働をさせ、
休憩を与えないまま最大一六時間の労働もさせた疑い。(共同通信)
アルバイトであるにもかかわらず、過重労働で倒れてしまう。
実は今、そんな事態が日本全体で急速に広がっている。
おそらく、多くの読者は理解に苦しむことだろう。
アルバイトとは、気楽なものではなかったのか。
「フリーター」という言葉が近年流行したように、
「自由を求める」働き方のはずだろうと。
ところが、右にあげたような事例はけっして例外的な事件ではない。
外食、小売り、学習塾のチェーン店では、日常の光景になっている。
数万円にものぼる商品の買い取リノルマ、体みなしの10日連続勤務、
体日出動や他県への出張命令……。
大企業が組織的にアルバイトの過重労働を利用していることもある。
アルバイトに過重労働が広がったことによって、
もっとも重大な被害を被っているのが高校生・大学生たちだ。
学校のテストや授業よりも、アルバイトを優先するように強制され、
「単位が取れない」
「留年してしまった」
「進学をあきらめた」という問題が、
全国で一斉に吹き出している。
そして、今では学生を「使い漬す」アルバイトは、
「ブラックバイト」と呼ばれるようになっているのだ。
最近で学生の親からの労働相談が絶えない。
「子どもが家に帰ってこない、学校にも行っていないようだ」
「アルバイト先に運日の出動を命じられて大学を退学してしまった」
「高校生の子どもが、アルバイト先でうな重を10個も
買わされて帰ってきた」
私は若者の労働相談を受け付けるNPO法人「POSSE」の
代表として、学生たちの労働相談に関わってきた。
これまで、1000件を超える高校生・大学生の労働相談に、
私たちは対応してきた。
また2013年からは弁護士、学者、労働組合の関係者でつくる
「ブラック企業対策プロジェクト」の共同代表を務め、
アルバイトの実態調査や政府へ中の提言も行ってきた。
私たちの相談活動や調査結果からは、
問題の背後に産業界の変化、学生の貧困の拡大、
教育の変化など、さまざまな要因があることが見えてきた。
さらに、私たちの訴えかけを受けて、政府・厚生労働省も対策に
乗り出し、学生向けの労働条件の「自主点検表」を公開した。
違法行為が横行していた個別指導塾の業界には、
異例の業界全体への指導が出された。
しかし、問題はまったく収束の気配を見せていない。
この労働問題は、一過性の問題ではなく、日本社会の根底を
揺さぶるような、根深く巨大な社会構造に関わるからだ。
本書では、「ブラックバイト」がなぜ今、
これだけの猛威を振るっているのかを、さまざまな視点から考える。
まず、学生を雇用する「企業の側の事情」を
膨大な事例から読み解いていく。
この作業を通じ、なぜ企業が学生を酷使せぎるを得ないのか、
その理由が見えてくるだろう。
次に、学生側がどうして「ブラックバイト」に
絡め取られてしまうのか。
彼らの経済状況や学校の実情、そして変化する
「若者の意識」の観点から分析を行う。
そのうえで、今、私たちに何が求められているのかを
間題提起する。
本書で使用した資料は「ブラック企業対策プロジエクト」の
調査結果に加え、NPO法人「POSSE」の労働相談の記録
(個人が特定されないように記述している)と、
私が授業を行った大学でのアンケートの内容
(学生の承諾は得ている)、
さらに、私が関係している労働組合
(「ブラックバイトユニオン」および「個別指導塾ユニオン」)の
事例を主に用いている。
企業名が明記されている事例は、当事者に配慮して、
事件が紛争化し公になっているものに限っている。
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ブラックバイトの事例
本書で実名でブラックバイトの状況を記載された事例は
以下の4社です。
外食 「しゃぶしゃぶ温野菜」
コンビニ 「ファミリーマート」
学習塾 「スクールIE」
牛丼チェーン 「すき屋」
いずれも苛烈な状況が生々しく伝えられています。
ブラックバイトの発生状況
2014年7月に著者たちの行った全国の学生4702人の調査によると、
以下のようです。、
アルバイトのために授業を「たびたび欠席する」もしくは
「ときどき欠席する」学生は8.3%、
「シフトを会社の都合で勝手に変えられることがあるか」は
26%が「よくある」「ときどきある」としている。
「シフトに入りたくないのに入れと言われた経験」は32%
「シフトを削られた経験」34%
いずれも「よくある」「ときどきある」
この数値は、「たびたび」と「ときどき」が一緒になっています。
一般には「ときどき」などゆるい方は、
「たびたび」などきつい方の4―5倍あります。
ということは問題が大きいのはそれほどはなく、
ブラックバイトが一般に「蔓延している」ということではない
と思われます。
ブラックバイトの状況
本書の帯には、
ブラックバイトの状況として以下の10項目が示されています。
自分がいないと職場が回らない
過重な責任
長時間・深夜勤務、遠距離へのヘルプ
急な呼び出し、シフトの強要
最低賃金割れの賃金、残業代不払い
偽装求人
罰金、ノルマ、自腹購入
責任感から辞められない
契約違反・損害賠償で脅す
脅迫、暴力
ブラックバイトの発生原因(著者見解)
業界の事情
ほとんどがサービス業で業務が単純化・マニュアル化され
アルバイトで担当可能
比較的参入容易なので競争が激しい
経営環境が厳しく、
働く者に対しても厳しい条件で対応せざるを得ない。
アルバイトに対してだけでなく
社員に対しても厳しくブラック企業でもある。
利用される「責任感」と「やりがい」
多くのアルバイトは厭ならすぐ辞める無責任さが売りである。
まじめで責任感のある者。辞められなり気の弱い者が
そのしわ寄せを受ける。
人が少なくなれば残った者に負荷がかかるのは当然である。
社員の分の負荷まで負わされたりする。
それでも辞められない。
塾などの場合「やりがい」に訴えられたりする。
希薄な法規範と権利意識
「辞めたりすると契約違反で訴える、損害を請求するぞ」
などと脅されると、信じてしまう。
休みを取る権利が保証されているなどということも知らない。
学生の貧困と奨学金
家庭も貧困で仕送りに依存できずアルバイトをせざるを得ない
奨学金の返済のために少しは蓄えておこうということもある。
劣悪なアルバイトでも簡単に辞めるわけにいかない。
ブラックバイト発生の根本原因(上野見解)と対策
著者の分析はそのとおりでしょう。
基本的には「弱い者いじめ」なのです。
気の弱い者が付け込まれています。
しかし、その底辺にはその企業の事情があります。
酷い事例は、コンビニ、外食産業、塾、
いずれも競争が極めて激しい業界です。
事例で取りあげられているのは、
その業界のトップ企業ではありません。
ファミリーマートは、
コンビニ業界でセブンイレブン、ローソンについで3番手です。
コンビニ業はシステム産業です。
知恵も必要ですがシステム開発投資は規模によらず一定です。
ということは大規模有利です。
生きのびるにはどこかで無理をしなければ
トップ企業に太刀打ちできません。
私はこれまで、
ファミリーマート以下はどうやって生き延びているのだろうと
不思議に思っていました。
「すき屋」は牛丼チェーンでは断トツの1位ですが、
外食業界は、各種の外食との競合だけでなく、
弁当チェーンなどとの競争もあります。
昔の一般的な勤め人の昼食は800円程度でした。
それが今は500円ですものね。
厳しいですよ。
「しゃぶしゃぶ温野菜」は全国で350店舗を構えます。
「すき屋」とは違う夜中心の居酒屋系です。
安い居酒屋チェーンは我々利用者にはありがたいですが、
ワタミが不振のように勝てている企業はあるのでしょうか。
ワタミはブラック企業の汚名を着てしまいました。
そういうことでもないと、
とてもこの業界の店は生き残れないでしょう。
高成長企業がありますが、収益力は高くありません。
そんなマジックはないですよね。
学習塾のスクールIEも同じ状況でしょう。
つまり、共通して言えることは、
個々の企業や個々の店舗のマネージャの問題ではないのです。
日本の成熟市場を供給過多状態で取りあうことをしているから
陰でいろいろな問題を起こしてしまっているのです。
2番手、3番手が1番手とは違うビジネス展開ができれば
厳しい競争を避けることができるのですが。
しかしよしんばそれができたとしても、
サービス業の場合はすぐに真似をされるので
その戦略は難しいですね。
1番手もダントツの1番手でないと
高収益の確保は難しいでしょう。
つまり、競争の激しい業界では、
どこかにしわ寄せが行くのです。
どこかというのは弱いところです。
では弱い者がいじめられないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。
著者の対策は、
1)あらかじめ職場を観察しておく
2)先輩や友達の働き方を確認する
3)「契約企業」を見極める(フランチャイズの場合)
4)契約書がきちんと発行されるかを確かめる
などを挙げておられます。
しかし、組織ぐるみのワルさはしないはずですから、
たまたまその店舗や事業所で問題が起きるのですから、
1)や2)はあまり参考になりません。
私はやはり、先ずは業界1番手を選ぶことですね。
それが難しければ、その次は契約書だと思います。
名のある企業が作成している契約書は、
一方的に弱者をいじめるような
いい加減な内容ではないはずです。
契約書を要求して提示されなかったら、
それは危ない企業です。
事業所名の契約書も当てになりません。
著者たちは、相談窓口(駆け込み寺)や
労働組合(ユニオン)を結成したりもしているようです。
手っ取り早いのはテレビでこの話題を取りあげ、
(この本「ブラックバイト」を読んでもいいのですが、
こういう人たちは本を読まないでしょう)
「困った状況になった駆け込み寺に行きなさい」
ということを周知することです。
非正規労働を減らすとか、同一労働同一賃金のように
社会全体の仕組みを変えないとできない、
ということとは違って解決は容易と思われますが、
いかがでしょうか。
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