2023年8月24日木曜日

運動部の連帯責任はいかがなものか!??

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 日大アメフト部事件の顛末について考えてみましょう。
ねらい:
 日本社会の思考法も、
 個人の主体性・責任を重んずる方向に進めなければいけません、
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8月9日の日経新聞スポーツ面に、
以下のような北川和徳氏の「日大問題、連帯責任は過剰」
という寄稿がありました。



















こういう内容です。
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日大アメリカンフットボール部の部員が違法薬物の所持で逮捕された事件で、日大はアメフト部を無期限活動停止処分とした。
中略
真面目に練習に取り組み、何も知らなかった部員もいるはずだ。
彼らは今どんな気持ちでいるのかを考えてしまう。

部員1人の行為で部全体の活動を停止するのは過剰反応だと思う。
中略
日本の学生スポーツ界では問題が発覚すると、
当事者でなくても「連帯責任」でチーム全体が責任を負うのが
当たり前になっている。

先日も
東農大ボクシング部が部員の違法薬物所持で活動停止処分となった。
すでに解除されたが、
明大と慶大のアメフト部も20歳未満の部員の飲酒で
活動停止処分を受けていた。
高校野球のあまたの事例は説明するまでもないだろう。
(注:上野はこのような事件が起きるたびに、
活躍の場を失う若者の無念を思っていました)

学生スポーツは教育だから仕方ないという意見もある。
だが、連帯責任を負わせてどんな教育的効果があるのか。
場合によっては、
何も悪いことをしていない若者の未来の可能性を閉ざす可能性がある。
「かわいそうだが仕方ない」で済ませては、教育とはいえない。

法大アメフト部OBで
大学全日本選抜チームの主将も務めたドーム創業者の安田秀一氏が
先日の日経電子コラム「SPORTSデモクラシー」で、
スポーツ界のガバナンス確立のためにも連帯責任の撤廃を訴えていた。

安田氏によると、米国では刑事事件が起きたら、
チームも学校もすべて警察に任せることで解決する。
日本では想像できないが、
事件の当事者以外は監督も選手も日常は何も変わらない。
逮捕者も贖罪が済めばチームに戻ることもできる。
あくまで法を根拠に人を裁き、
それ以上の罰を求めないのが法治国家の正しいガバナンスなのだという。

この事件では、日大のガバナンスが問われているそうだ。
世の中の空気を読んだ処分や謝罪などは必要ない。
日大がすべきことは、違法薬物所持の捜査は警察に任せ、
隠蔽の疑いについては、何があったかを徹底的に調べて明らかにする。
そこでも犯罪行為があれば、法で裁かなければなならない。
それが組織を正しく機能させ、信頼を回復する第一歩となる。
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そのとおりです。
なぜ、日本が過剰な連帯責任状態になっているのかを考えてみました。

私は、日本の伝統的思考法(≒国民性)は、
長い農耕生活と孤立した島国であったために、
以下のような状況である、と主張しています。
(出典:「価値目標思考のすすめ」(2004年、NTTデータ出版))


「前例・みんな主義」と称していますが、
前例重視、慣例重視、仲間意識、和の重視、あつれきを避ける、ーー
すべて集団指向の思考法なのです。
そういうことからすると、連帯責任制も当然の帰結ということになります。

これは、日本の伝統的思考法で、これから脱却すべきであることは、
至るところで主張されています。
今回の北川氏の寄稿もその流れです。

前掲の寄稿の文章の中に、米国の例が紹介されていました。
日本の集団指向と異なり、個人指向です。
個人の主体性・責任を重んじます。
それこそが、個を活かす社会の指導原理です。

北川氏の主張は正論です。

実はその後のこの事件の解明で、
関わっている人間が追加されているようですが、
その個人およびそういう状態を放置した管理者は糾弾されるべきですが、
無関係のメンバがトバッチリを受けることは断固避けるべきですね。

4 件のコメント:

師田卓 さんのコメント...

江戸時代の五人組が発祥なのか知らないが戦前の隣組や軍隊や社会組織に組み込まれてきた連帯思想につながるものだろう。
親の不始末ないし子供の不始末が子供や親にも責任追及がある社会慣習は廃絶させなければ人間の進歩は期待できない。
マスメディアが積極的に活動していい分野ではないのか。

上野 則男 さんのコメント...


師田さん
メッセージありがとうございます。
なるほどそういう「5人組」や隣組などの流れに繋がっているのですね。
納得ができます。
私は、隣組は日本的で好ましい活動形態だと思いますが、連帯責任はダメですね。

上野 則男 さんのコメント...


私の友人FJさんからのメッセージです。

大学や高校の運動部員が事故を起こした場合の社会の取り扱いについては、
事の内容にもよりますが、
一般的には個人の起こした事件や事故について、
部員全体、あるいは学校全体が批判を受けるのはおかしいと思います。

ただ、日大のアメフト部が近年起こした違法のタックル事件は、
監督自体が絡んだ事件であり、
アメフト部への批判から大学自体のガバナンスの在り方までが批判され、
その同じアメフト部で生じたこの度の一件は、
個人だけではなく部活、あるいは、
学園グループののガバナンスが問われても仕方がないのではないかと思われます。

学生スポーツの範疇で最近の明るい話題は、
甲子園で展開された夏の甲子園(全国高校野球選手権大会)で優勝した
慶応義塾高校の森林監督が、
新聞やTVの面談に登場して、明るく爽やかな新風を巻き起こしている、ことである。

これまでの高校野球にまつわるイメージはいまだに厳しい練習で
「根性」とか「特訓」とかが通用する古い世界だと思っていたが、
選手個人の自由意思を尊重して明るい練習風景を思い浮かべることができる、
そんな気風のチームが「王者」になったことを喜びたいと思います。

上野 則男 さんのコメント...


FJさん
言われるとおりです。
日大アメフト部のマネジメントや大学全体のガバナンスは当然追求されるべきものです。
それと無関係の部員が巻き添えになることは別のことですね。
どんなに大学や部が糾弾されてもトバッチリが行ってはなりません。

慶応の優勝は「大事件」でしたね。
107年ぶりと言えば、おそるべき関東大震災よりも前なのですからね!!

こうやって喜べることが多く起きてほしいですね。