【このテーマの目的・ねらい】
目的:
中東に関心を持っていただく。
中東について知識を増やしていただく。
ねらい:
中東の動向を正しく理解して諸活動に反映していただく。
中東との縁を深められないか考えていただく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2012年9月24日の日経新聞に、
イランの核開発にイスラエルが危機感を抱き、
核兵器が完成しないうちに先制攻撃をするかもしれない、
という記事が載っていました。
周りをほとんど敵に囲まれているイスラエルの緊張感は
想像を絶するものだと同情いたします。
ですが、石油関係者以外の日本人は
どのくらい中東について知っているのでしょうか。
国の名前くらいは知っているでしょうが、
地図を書ける人は凄いですね。
どういう生い立ちの国か、
今国内情勢はどうなっているのか、
敵味方はどうなっているのか、
ほとんどの人はあまり知らないでしょう。
歴史・地理の苦手な私は、
それらについてほとんど知りません。
そこでこの際少し整理をしてみました。
中東の定義
中東の国家
中東の地図
1.2011年までの勢力構成
2.「中東の春」
3.現在の中東の危機
4.中東の国家事情 ユースバルジ
国民の幸福への国家体制の影響度
多くの情報源は、学士會会報2012-Ⅴ号の
山内昌之東大名誉教授の講演記録「中東危機の現状」です。
中東の定義
Wikipediaによるとこうなっていました。
「了解!」ですね。
中東は、19世紀以降にイギリスなどがインド以西の地域を植民地化するに当たって考え出された概念である。元来はイラン・アフガニスタンおよびその周辺を指す概念であり、現在の中東に含まれる地中海沿岸地域は、バルカン半島とともに近東と称されていた。しかし、中東と近東の概念を混同した中近東という概念の登場を経て、第二次世界大戦中にイギリス軍によってはじめて現在の中東の概念が使用されるようになった。
以降、欧米諸国では、「中東」はほぼアフガニスタンを除く西アジアとアフリカ北東部の国々を指す概念として用いられ、具体的には、アラブ首長国連邦(UAE)、イエメン、イスラエル、イラク、イラン、エジプト、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、シリア、トルコ、バーレーン、ヨルダン、レバノンの諸国、及びパレスチナ自治政府の管轄地域がその概念の中に含まれている。
日本における中東の概念は、欧米とはやや異なり、イスラム教の戒律と慣習に基づく文化領域の概念として極めて広域に用いられることが一般的である。具体的には、北アフリカのエジプト以西のマグリブ地域(リビア、スーダンを含む)、またはソマリアなどを含めたり、西南アジアのパキスタンやアフガニスタン、場合によってはヨーロッパのキプロスや旧ソ連領の中央アジア諸国を含めたりする場合がある。その為、日本における中東の地域概念の広がりを厳密に定義することは困難である。
このような不確かな概念にも係わらず、日本で中東の概念が広く用いられているのは、広大な範囲に広がるイスラム教国の中から東南アジア・南アジア・ブラックアフリカなどイスラム以外の宗教と入り乱れてまとまった地域を形成している国々を除外し、逆にイスラム教国に取り囲まれているがイスラム教国ではないイスラエル・キプロスなどを組み込んだ地域を「イスラム」という言葉を用いずに表現するのにもっとも適当な概念だからであろう。特に地理的にはアフリカに属すが、政治的・文化的には西アジアのアラブ諸国と同じマシュリク(東アラブ)に属すエジプトを西アジアと一体の地域として扱うためには非常に便利な地域概念と思われる。
中東に属する国名、人口 共和国・王国等の区分、
どのグループに所属するかを以下の表にまとめました。
Wikipediaの「中東」の情報に基づきます。
イスラム教のシーア派はイスラム教の2番めの多数会派ですが
(1番めはスンナ派)、
イスラム教の中での勢力争いも、中東紛争の材料です。
中東の国の位置関係を、
Googleの検索で掲載されていたもので示します。
ペルシャ湾岸の国についてあまり知りませんね。
1.2011年までは以下の構図でした。
1)アラブ穏健派 アメリカがバックアップ
エジプト(ムバラク大統領)
サウジアラビア(アブドゥラー国王)
湾岸協力会議(GCC)参加各国
(首長制または王制の国で、イラン対抗の色彩が強い)
サウジアラビア(実質リーダー)
クウェート
カタール
アラブ首長国連邦
バーレーン 国民の多数はシーア派
オマーン
(加盟準備中?)ヨルダン王国
(イスラエルと平和条約締結している)
2)イスラム急進派同盟 2004年結成
シリア共和国 アサド大統領の長期政権
イラン共和国
1979年イラン革命でシーア派ホメイニー師が王制を打倒
現在はシーア派最高指導者ハメネイ師と
アフマネディジャド大統領の権力争い
3)イスラエル
僅か700万人強の人口で、イスラムを敵に回している。
4)トルコ共和国 NATO正式加盟国
エルドアン首相 イスラム原理主義→中道穏健主義
人口も多く中東の強大国になっている。
イランに対抗している。
2.2011年に「アラブの春」と言われる体制変革が
雪崩を打つように発生しました。
1)イラク
フセイン後、シーア派政権になり、
シーア派イランを喜ばせた。
2)平和的体制変革
チュニジア共和国
2011年1月 民主化運動でベンアリー大統領亡命
23年間の独裁政治に幕
エジプト共和国
イスラエルと平和条約締結している。
2011年2月 29年間続いたムバラク政権崩壊
3)暴力的体制変革
リビア共和国
2011年2月~内戦状態へ。
サウジのアブドウラ国王の采配で
反カダフィーでカタールとUAEの軍隊を派遣、
NATOも軍事支援
2011年10月カダフィー大統領殺害
シリア共和国
アサド父子2代40年の独裁への反発で民主革命爆発
内戦状態で毎日80―100人の非武装の市民の死者
産業は荒廃状態
イエメン共和国
2011年1月反政府デモが激化内戦状態に
2011年11月GCC諸国が肩入れしてサーレハ大統領逃亡
バーレーン
イランのてこ入れでシーア派が暴力革命意図
しかし、GCCの派兵で終息した。
これもサウジのアブドウラ国王の采配
3.現在の中東の危機はイラン、イスラエル、シリア
1)イラン
国内政情不安を抱えている。
北朝鮮から軍事技術支援を受けて核開発している。
シーア派の勢力伸長をねらい各国に影響を及ぼす。
(紛争の火種となる)
イスラエルの最大の敵である。
2)イスラエル
エルサレムの聖地争いでイスラム教各国と長い戦いを続けている。
現在のイスラム教代表のイランとは
強い敵対意識を持っていて一触即発状態である。
3)シリア
アサド大統領が、権力維持のために市民殺戮を強行している。
これに対して国際世論の批判は強いが、
イスラエル、ロシアと中国の勢力圏、NATOの勢力圏が
交差しているところで、各国は均衡の喪失を恐れて
中途半端な介入ができない。
ロシアと米国の直接対決になりかねない。
それで、目下のところ大殺戮行為に対して静観となっている。
4.「アラブの春」の背景は「ユースバルジ」
「アラブの春」はパレスチナ問題や「アラブの大義」といった
イデオロギーから生じたわけではありません。
独裁政権下で長年強いられた貧困、暴力、屈辱的扱いに耐えかね、
人間性の回復を求めて立ち上がったことから生じました
(原文のまま)。
背景には「ユースバルジ」の問題、すなわち
「過剰なほど人数が多い若者世代」の問題があります。
人口の6-7割が25歳未満
人口の4割が15歳未満
失業率は24-25%で世界一高い
上野注:そんなに若者が多いとはうらやましい限りです。
中国との取引を止めて中東と連携したらどうでしょうかね。
最後に、興味深い指摘がありました。
王政が悪く、共和制はよいという考えは一方的である。
共和国のイラン、シリア、リビア、エジプト、レバノン、
イエメン、チュニジアで
長期独裁政権が国民を不幸にした。
これに対して、
サウジアラビアなど君主国では、
深刻な暴力的反抗は起きていない。
それは、恐怖や抑圧が効果を挙げているからではなく、
これらの国の市民は民生や所得で満足感があるからだ。
(上野注:産油国で富裕国家ということもあるでしょう)
サウジアラビアのアブドゥラー国王の言動を見ると、
よい成果を上げられるかどうかは制度や形式ではなく、
やはり最後は人だ、という感じがしますね。
ことの成否は優秀なトップに依存するのです。
日本航空の稲盛さんの采配は見事でした。
日本の政界も早く優れたリーダにでてきてほしいものです。
0 件のコメント:
コメントを投稿