2015年8月13日木曜日

原発事故の責任は誰にある??

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 福島原発事故の責任はどこにあるのか
             あらためて考えていただきます。
 その原因は想定外の津波が来たことではない、
 そもそも必要な対策をとらなかったことにあることを
                      知っていただきます。
ねらい:
 なぜ、このような真実から世間の判断がずれてしまうのかを
  考えていただきたく思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2015年7月末、検察審査会は,
東電の勝俣恒久元社長ら旧経営陣3名を
福島原発事故の刑事責任を追求すべきという判断をくだしました。

この問題では、「福島原発告訴団」が24年6月、
東電や政府の関係者ら計42人について「津波対策を怠った」として
業務上過失致死傷罪などで告発しましたが、
東京地検は25年9月、
「予見は困難で、刑事責任は問えない」
として全員を不起訴としました。

検察審査会は26年7月、
勝俣元会長ら3人について起訴相当を議決し、
議決を受けた東京地検の再捜査でも
3人は不起訴となりました。

そこで、検察審査会が2回目の審査をしていました。
2回に亘って起訴相当の判断が行われると
強制起訴となるのです。

強制基礎が決まったことを報じた8月1日付の日経新聞は
こう報じています。

公判での大きな争点の一つは、
福島第1原発に
全電源喪失が起きるほどの巨大津波が襲来することを
予測できたかどうかだ、としています。

2008年に政府機関の地震予測で、
明治三陸沖地震並みの地震が起きた場合、
福島第1原発に到達する津波の高さは15.7メートルになる
と試算されていたことから、
検察審は「予測できた」としています。

もう一つの争点は、
東電が防潮堤の強化などの対策をとっていれば、
今回の事故は防げたかどうかという点だとしています。

検察審は、
安全対策を検討しその間だけでも運転を停止していれば、
あるいは、
海面から10メートルの敷地上に10メートルの高さの防潮堤を作る、
浸水を前提として小型発電機を高台においておく
などの対策をとれば事故を防げたとしています。


私はこの事故の原因を早くから以下のように決めつけていました。

2011年5月18日水曜日

福島原発の事故およびその被害拡大原因 

1次原因は、そもそも何が悪かったのか、です。
それがなければ事故は起きていません。
こういう原因を品質管理の世界では、
発生原因(もともと起きてしまった悪いこと)と言います。

1次原因は、原子炉の冷却等を行うための予備電源
が使用不能になったことです。
そのために燃料棒が高熱になり
水素爆発等を起こしています。

予備電源が使用不能になったのは、
予備電源が完全防水になっていない
タービン建屋に置かれていたからです。

この時に技術導入した原発はGEのもので、
GEの原発は海岸沿いにはありませんでした。

ついでに言えば、冷却用の海水を取り入れる装置も
密閉状態ではなかったのです。

電源等が回復した福島第2原発では
3月14日19時前に冷却に成功し、
その後何らの問題も起こしていません。


(今回上野記)
ほぼ同じ環境にある第2では全く問題が起きていないのですから、
第1と第2の設備の差が事故原因なのです。

福島原発事故は、
原子炉または原子炉建屋が水をかぶって運転不能になり
事故が起きたのではないのです。

原子炉建屋は全く問題ありません。
予備電源が水をかぶったことが事故原因なのです!!

素人の私が言うことは信用されないかもしれません。
しかし、
2012年7月に大前研一さん(原子核工学科の修士です)が
出された「原発再稼働最後の条件」で
第1と第2の予備電源の差を検証し、
予備電源の不備が致命傷なったことを述べておられます。


第2原発の予備電源は
防水が完全な原子炉建屋に置かれていました。

電源が回復して本来の冷却機能が働けば、
最短で1時間、長くても2時間半程度の冷却で
安全な冷温停止状態にもっていけるのです。

たったこれだけのことができないばかりに
大騒ぎになってしまっているのです。
今回の事故の発端は
予備電源をタービン建屋に設置した、
というそれだけのことなのです。

そうなのですよ!!

こういうことを
「千丈の堤も蟻の一穴から」と言うのでしょう。

2次原因は、
なぜ1次原因がそのまま見過ごされてしまったのか、
という原因です。
品質管理等の世界では流出原因
(発生原因がそのまま外に出てしまった、という意味)
と言っています。

今回の場合の2次原因は、
ほぼ同じ環境(海岸からの距離や海抜高)にある
隣の第2原発の建設時に実行したことを、
なぜ第1原発についても対応をしなかったのか、
ということです。

第2原発では、
予備電源を原子炉建屋に置いたのは、
予備電源の重要性を認識してのことでしょう。
それだったら、第1原発も変更すべき、
と考えるのが常識的判断ではないでしょうか。

どうして放置したのでしょう。
これは解明されるべきです。

おそらく、第2原発の設計検討途上で、
予備電源の発電機を
原子炉建屋内に置くことにしたときに
誰かが、
「第1原発は、今のままでよいのでしょうか」
と発言したのではないでしょうか。

ところが、その時の責任者が、
「いいんだよ。
どうせそこまでの震災が発生することはないんだから」
というような無責任な発言で
その問題提起をもみ消したのではないでしょうか。

この責任者と、第1原発の設計責任者は、
万死に値する重大責任者です。
今のこの大惨事はすべてこの二つのことから
始まっているのですから。

事故が始まってからの対応が多少まずかった、
などは、この二人の責任に比べれば
本当に微々たるものではないでしょうか。

ということからすると、
本当の責任者(ワル)は上記の二人ですが、
2008年頃にでも、その気になれば
予備電源の設置場所の補強ができたはずです。

したがって、「その気にならなかった」ということでしょう。

しかし、2008年に津波の予測情報があったのですから、
その情報がトップに行かなかったのか、
それを無視したのならやはり経営責任でしょうね。

私は、この後、各原発で堤防を作っていることに
「そんな無駄なことをするな!」と異を唱えてきました。

津波を避けるのではなく、
津波が来ても浸水されない設備にすればよいのです。
すでに、
原子炉が入っている原子炉建屋は完全防水なのです。

他の設備の完全防水化などは大したことではないでしょう。
その方がはるかに安くて確実な対策なのです。

なぜそんなことが分からなくて、
世俗的な意見に流されて堤防など作るのでしょうか。
憤慨!憤慨!!です。

誰が悪いのでしょうか?
誰がバカなのでしょうか??

8月に運転再開した川内第1原発の安全対策は、
第2と玄海原発を合わせて3千億円だそうですが、
防水対策が中心のようです。

詳しくは分かりませんが、
福島原発の教訓から学んだと言いますから、
余計なことをしていないことを願います。

今回起訴される旧経営陣の責任がどうなるかは、
法廷での判断次第でしょうが、
福島原発事故は、津波が原因ではなく、
人災(人間の抜かり)であることは間違いないのです。



私の本件に関する意見の集約は以下をご覧ください。

2012年7月31日

福島原発事故の原因-上野見解最終集約

http://uenorio.blogspot.jp/2012/07/blog-post_31.html

2015年8月3日月曜日

新事業創造支援者を育成しませんか!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 ICTを活用した新事業の創造・開発を行う方法と
 そのの支援を行う人材の育成法を知っていただきます。

ねらい:
 この方法をご検討の上、ご採用ください。
 そうすると、その人材をすぐに育成でき、
 新事業のネタを見つけることができます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
インダストリー4.0、経済産業省の「攻めのIT経営銘柄」など、
最新のICT技術(デジタル技術という人もいます)を活用して
新しいビジネスを創造しようという動きが本格化してきました。

しかし、それを担う人材はなかなかいません。
従来のIT屋さんとは、アプローチが違うので、
その人たちはダメ、と言われています。

ではどうすればよいのでしょうか??

その解をシステム企画研修社が
既存の手法を組み合わせて開発しました。

事業部の新事業創造の支援ができる人を
BCKickerと名付け(Business Creation Kicker)、
以下のプロセスで新事業創造を行うのです。
正確には新事業のネタ構想までが対象です。

そのプロセスは以下のとおりです。

1.BCKicker適性者の選定
 弊社の『コンピテンシー系能力評価システム」を使い、
 適性者を探し出します。
 BCKickerは、従来業務の経験は不問ですから、
 専門能力は評価せず、基礎能力だけで判定します。

 したがって極端に言えば、
 適性があれば1年生でもいいのです。

2.先行事例の研究
 既に世界中で100件以上の先行事例があります。
 これを整理して学習します。
 この研修は新開発です。

3.新製品・サービスアイデアの創出
 ㈱Mと当社で開発し実用中である
 潜在能力を活用する「イメージ思考法」を利用して
 アイデア出しを行います。
 この際、2.の先行事例の研究で学習した内容から
 潜在意識で有効なものを引き出すのです。

詳細は以下のURLをご参照ください。
http://www.newspt.co.jp/data/mind-pd/bckicker.pdf

この紹介セミナ(無料)を9月11日に行います。
http://www.newspt.co.jp/data/semina/bcksemi.pdf


お問い合わせをお待ちしています。
mind-pc@newspt.co.jp





「ドイツ帝国が世界を破滅させる」ですって!!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 ドイツがここ5年ほどでたいへんな力を付けてきたことを
  知っていただきます。
 ドイツは、ロシアと対抗しアメリカとも覇を争う形勢にあることを 
  知っていただきます。
 ドイツに対抗するにはアメリカとロシアが組むしかないという
  意見を知っていただきます。
 なぜそんなにドイツが強いのかを考えていただきます。
 そんな情勢の中で日本や中国はどうなるのかを
  考えていただきます。

ねらい:
 ドイツの動きに注目していきましょう。
 日本がどうすべきかを考えていただきます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
凄い内容です。
目を見開かされました。
われわれはヨーロッパに関心が薄いのですね。
著者が中国に関心が薄いのと同様です。

この著者のエマニュエル・トッド氏は
フランスの歴史人口学者・家族人類学者だそうですが、
その観点の研究から以下の「大事件」を予測した方です。



事件

予告

実際

ソ連の崩壊

1976年

1991年

世界金融危機

リーマンショック

2002年

2008年

アラブの春

2007年

2010年~



件名に挙げた書名は、誰が付けたのか知りませんが、
本の中ではそういうことは言っていません。
言うなら「ドイツ帝国が世界を制覇する」でしょうね。

本書の解説は多岐に亘っていますが、
私なりに整理をしますと以下のようになります。

1.ドイツがどれだけ強いか

2.ドイツの軍備

3.ドイツの危険性

4.ドイツが強い理由

5.フランスはどうか

6.ロシアはどうか

7.アメリカはどうか

8.中国はどうか

9.日本との対比

10.これからの予測


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以下、氏の主張をご紹介します。
以下で、
氏の文章は私の意見と区別するために「デアル調」にしています。
原文ではインタビュ記事を文章化したということもあり、
「デスマス調」が基本です。

1.ドイツがどれだけ強いか

1)ここ5年の間に、ドイツが経済的な、また政治的な面で、
ヨーロッパ大陸のコントロール権を握った。

2)その5年を経た今、ヨーロッパは既にロシアと
潜在的戦争状態に入っている。

そしてドイツ政府はかなり前から
経済運営に関するアメリカの諌言を意に介さぬ態度をとっている。

アメリカの力を排除しようとしている。

因みに経済の世界でのドイツ企業の強さはこうなっています。

世界ランクのドイツ企業
業界
ドイツの代表企業
世界シェア
自動車
フォルクスワーゲン
1位を争っている
重電
シーメンス
2位
化学
BASF
1位
医薬
バイエル
2位
ソフトウェア
SAP
4位(注)

(注)マイクロソフト、オラクル,IBMに次ぐ。

最近合意したイラン核協議では、
安保理常任理事国以外で唯一ドイツが参加しています。
常任理事国にならなくても、
「実力」でその地位を確保しているのです。

ドイツの産業界が取り組んでいる競争力強化の動きについては、
別項「インダストリー4.0 第4次産業革命とは」
をご覧ください。


2.ドイツの軍備

エマニュエル氏の著書では、
なぜかドイツの軍事力については触れていません。

そこで、歴史音痴の私が別途確認したところによれば
こうなっていました。

1)ドイツも日本と同じように第2次大戦後、
 武装解除されました。

2)しかし、東西冷戦の進展と共に、
 西側諸国は、西側の武力強化のために
 (ご都合主義ですね!!)
 1955年のパリ協定で、
 西ドイツの再軍備と主権回復を認めました。

 ついでにもう一つの敗戦国イタリアも
 仲間入りしました。

 パリ協定の当事者は、米、英、仏、独です。
 米英仏で決めればよい問題だったのでしょうかね?
 
3)当初は歴史的敵対国フランスは
 ドイツの再軍備には反対していました。
 
 1948年の西ヨーロッパ連合条約の目的でも
 「ドイツ軍国主義の再現の阻止」が、
 「共産圏(ソ連・東欧)からの武力侵攻に対する防衛」
  と並んで入っていたのです。
 
 しかし朝鮮戦争等でソ連の脅威が現実になってきたので、
 賛成に回りました。

4)ドイツはNATO加盟を前提に再軍備を認められましたが、
 ABC規制が課せfられました。
 それは、A原子力、B細菌兵器,C化学兵器の使用禁止です。

5)一般兵役義務法も1956年には成立しています。
 ずい分日本とは違いますね。
 
 因みにドイツは
 これまでに59回憲法(基本法)の改正を行っています。


3.ドイツの危険性

「力を持つと非合理的に行動する」
ドイツの権威主義的文化は、
ドイツの指導者たちが支配的立場に立つとき
彼らに固有の精神的不安定性を生み出す。

歴史的に確認できるとおり、支配的状況にあるとき
彼らはしばしば、
みんなにとって平和でリーズナブルな未来を構想することが
できなくなる。
この傾向が今日、輸出への偏執として再浮上してきている。

毎週のように、
ドイツの態度のラディカル化が確認されるのが現状だ。

イギリス人に対する、またアメリカ人に対する軽蔑、
メルケルが臆面もなくキエフを訪れたこと(14年8月)

自分たちが一番強いと感じるときには、
ドイツ人たちは、
より弱い者による服従を受け入れることが非常に不得意だ。

しかし、ドイツ的なタイプの規律ある上下関係は、
なかなか通用しないだろう。

アングロサクソンの社会文化は、
平等的ではないが本当に自由主義的だ。
平等かどうかは場合による。


最近の危機は、
全面的にウクライナへのヨーロッパの介入と関係している。

近年「西側」のメディアはあたかも1956年頃、
つまり熱くなりかねない冷戦の最中に戻ったかのような
様相を呈しているが、
そのうわ言に引きずられず、
発生している現象の地理的現実を観察するならば、
ごく単純に、紛争が起こっているのは昔から
ドイツとロシアが衝突してきたゾーンだということに気づく。

ウクライナ危機がどのように決着するかは分かっていない。
しかし、
ウクライナ危機以後に身を置いて見る努力が必要だ。

最も興味深いのは「西側」の勝利が生み出すものを
想像してみることである。

そうすると、われわれは驚くべき事態に立ち至る。
もしロシアが崩れたら、あるいは譲歩しただけでも、
ウクライナまで拡がるドイツシステムと
アメリカとの間の人口と産業の上での力の不均衡が拡大して、
おそらく西洋世界の重心の大きな変更に、
そしてアメリカシステムの崩壊に行き着くだろう。

アメリカが最も恐れなければいけないのは今日、
ロシアの崩壊なのである。
(なるほど、そうなのか!上野)

ドイツ帝国が
「支配者たちのデモクラシー」
の一般的な形を取り始めていて、
その中心には支配者たち専用のドイツデモクラシーがあり、
その周りに、多かれ少なかれ支配されていて、
その国での投票行動には何らの重要性もないような、
諸国民のヒエラルキーが形成されている。

自分たちの生活に影響する政治上の決定に対して
ドイツ国民でない周辺国の国民たちは
まったく投票権を持っていない。

そういう意味で
(周辺国民は)アメリカにおける黒人たちよりも
みじめな位置づけなのである。

4.ドイツが強い理由

この項は主として上野としての意見と紹介文です。

ドイツはEUという自由貿易圏という枠組みを活用して、
ヨーロッパの中で圧倒的強みを発揮しだしています。

自由貿易では、強いものが勝ちます。
ギリシャのような怠け者の国は敗者となるのです。
そういう面ではフランスや南欧諸国も同様です。

その意味では、TPPも同様です。
関税などの輸入障壁がなくなれば、
強いものが必ず勝つのです。

EUはドイツの発案ではなく、
また当初はフランスはじめどの国も、
ドイツの1人勝ちになるとは誰も予想しなかったようです。

なぜドイツは強いのでしょうか。
著者は以下の点しか挙げていません。

 家父長制で,、統制を聞く国民性がある。
 → 行きすぎた「個人自由・主義」ではない。
 質倹を厭わない国民性がある。
 → デフレ・賃金抑制を受け入れる。

ドイツではここ数年、賃金が据え置かれたり、
引き下げられたりしています。

ドイツの社会文化には、権威主義的なメカニズムがあって、
国民が相対的な低賃金を甘受するので、
ドイツの政府と経済界はその面を活用し、
ユーロ圏の各国への輸出を政治的に優先したのです。

「アテネからマドリードまで、
群衆は第4帝国(ヒトラーは第3帝国)だと叫び始めている」

私が見るに、
ドイツの強みには以下が追加されると思います。

 ユダヤ人(や日本人)と同じように
  民族の潜在能力の平均的レベルが高い。
    これはドイツ国民自身もそう思っているらしい。
  2014年のフリードリッヒ財団の調査では
  「ドイツ人は他の民族より優れている」
  と思っている国民が4割となっていた。

 攻撃的・ポジティブな性格である。
  (日本人はそんなに攻撃的・ポジティブではないですね)

以下がエマニュエル氏の主張です。

「ドイツというシステム」は、
驚異的なエネルギーを生み出し得る。
日本についても、スウェーデン、ユダヤについても、
同じことが言える。

真の権力中枢はメルケルでなくドイツ経済界である。
彼らは隣国フランスの産業をボコボコにしてしまおうとしている。
それにはまだあと4年はかかる。

5.フランスはどうか

歴史的にドイツの対抗馬であったフランスは、
現在は完全にドイツの軍門に下っている。

フランスのオランド大統領はドイツの副首相だ。
今後はさらに
単なる「ドイツ首相府広報局長」とみなしてもいいくらいだ。

第2次世界大戦の地政学的教訓があるとすれば、
それはまさに、
フランスがドイツを制御しえないということである。

ドイツが持つ組織力と経済的規律の途轍もない質の高さを、
そしてそれにも劣らないくらいに途轍もない
政治的非合理性のポテンシャルがドイツには潜んでいることを、
われわれは認めなければならない。

ところがそれをこの国(フランス)は認めない。


6.ロシアはどうか

 ロシアは現在力の蓄積中で
 クリミア半島でも強くは出れない。
 
 しかし、ロシアは立ち直り始めていて、
 出生率の上昇や乳児死亡率の低下、失業率の低下に
 それは表れている。

 ロシアの成長率は1.4%、失業率は5.5%である。

 ロシアの経済は豊富な地下資源に支えられていて、
 労働力を必要とする工業を迎えたり、
 消費財の輸出産業を発展させたりということは考えにくい。

 その社会では、
 ソ連時代から継承された高い教育水準が保たれていて、
 男子よりも女子のほうが多く進学している。

 また人口の流出よりも流入の方が多いことからも、
 ロシア社会とその文化が、周辺の国々の人々にとって
 魅力的なのだということが分かる。

 私はそれを「権威主義的デモクラシー」と称する。

 早晩軍事力等でも成果が顕著になるはずである。

 アメリカとロシアの新たなパートナーシップこそ、
 われわれ人類が「世界的無秩序」の中に沈没することが、
 現実となる可能性が日々増大している事態を回避するための
 鍵だろうと思う。


7.アメリカはどうか

アメリカとドイツは同じ価値観を共有していない。

 アメリカ:リベラルな民主主義の国
     本当に自由主義だが結果として平等ではない。
 ドイツ:権威主義的で不平等な文化の国
     規律ある上下関係(平等ではない)

 アメリカは白人デモクラシー(だった)
 ドイツはドイツ民族至上主義(ナチスがその典型)

アメリカはドイツに追随してクリミア半島に介入した。

注:日本人も「西側」メディアの尻馬に乗る日本メディアの影響で
悪者はロシアと思いこまされています。

ブレジンスキーが見落としたのは、
アメリカの軍事力がNATOをバルト海諸国やポーランドや、
かつての共産圏諸国にまで拡大することにより、
ドイツにまるまる一つの帝国を用意したということだ。

つまり、
アメリカが自分のためと思って強化した仕掛けに便乗して
ドイツはタダで強くなることができたのだ、
と言っているのです。

アメリカとドイツという二つのブロックは、
それぞれの性質上対立的だということを確認しなくてはならない。

この二つのブロックの間には、
経済規模の均衡の破綻、
価値観の違いなど、
紛争を生みやすいすべての要素が積み重なっている。

ロシアが潰されるか、あるいは周縁化されて、
ゲームの外に排除されるのが早ければ早いほど、
この二つのブロックの間の差異が表面化してくるだろう。

今後の世界情勢に関するもう一つのシナリオは、
ロシア・中国・インドが大陸でブロックを成し、
欧米・西洋ブロックに対抗するというものである。

しかし、このユーラシア大陸ブロックは、
日本を考えなければ機能しないだろう。
このブロックを
西洋のテクノロジーのレベルに引き上げることができるのは
日本だけだから。

(上野コメント:この案は成立しそうもないですね。
インドが中国と組むことが考え難いし、
日本だってそんなブロックに加担しないでしょう。
しかし、ひょっとしたら日本が中国の属国になっていれば、
成り立つのかもしれませんね。ゾーッ!!)


8.中国はどうか

中国についてはほとんど何も触れていません。
ヨーロッパから見ると、アジアは他人事なのでしょう。

「中国はおそらく経済成長の瓦解と大きな危機の寸前にいます」
という記述がありました。



9.日本との対比

【ドイツと日本の類似性】

家族社会学で直系家族と呼ばれる家族形態がある。
長男を後継ぎにし、長男の家族を両親と同居させ、
他の兄弟姉妹を長男の下位に位置づける農村の家族システム
である。

この種の家族はたしかに今ではもはや先進国に存在しないが、
それでも、
長年の間に培った権威、不平等、規律といった諸価値を、
つまり、あらゆる形におけるヒエラルキーを、
現代の産業社会・ポスト産業社会に伝えた。

日本社会とドイツ社会は、元来の家族構造も類似している。
経済面でも非常に類似している。
産業力が逞しく、貿易収支が黒字だということ。

【日独の差異】
日本の文化が他人を傷つけないようにする、
遠慮するという願望に取りつかれているいるのに対し、
ドイツ文化はむき出しの率直さを価値付けている。

この2国は世界で最も高齢化した人口の国である。
人口構成の中央値が44歳である。
フランスではそれが40歳である。

出生率は、フランスでは女性1名当り2人だが、
両国は、1.3人から1.4人の間で揺れ動いている。

出生率のこのような差の背景にはもちろん、
女性の地位の差がある。
フランスでは
女性は仕事と子供の育児を両立させることができるが、
ドイツや日本ではどちらかを選ばなければならないことが多い。

(人口社会学者の意見を尊重すべきです。
女性の社会的地位の向上を図らないと
出生率は上がらないということです)

ドイツに比べ、日本では権威がより分散的で、
常に垂直的であるとは限らず、より慇懃でもある。

こういう記述もあります。

現在起こっている衝突が
日本のロシアとの接近を停止させている。

ところが、エネルギー的、軍事的観点から見て、
日本にとってロシアとの接近はまったく論理的なのであって、
安倍首相が選択した新たな政治方針の重要な要素でもある。

10.これからの予測

このように書かれています。

ユーロは陥落する。
単一通貨には無理がある。
自由貿易は諸国民間の穏やかな商取引であるかのように
語られるが、実際には
すべての国のすべての国に対する経済戦争の布告なのだ。

強者は勝ち弱者は負けて
低いレベルの生活に甘んじなければならない。
それはイヤだろうから(現在のスペインがその状態)、
ユーロからの離脱をし、保護貿易に戻るのである。
それが現実的な解である。

まさにそう理解すべきでしょう。
ユーロ崩壊こそが自然な道なのです。

さあ、もう少し世界のことを考えましょう!!


2015年8月1日土曜日

インダストリー4.0の衝撃!ドイツが製造業の覇権を狙う!

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 インダストリー4.0とは何かを知っていただきます。
 インダストリー4.0の重大な意義を確認していただきます。
 インダストリー4.0を支える人材の育成法を知っていただきます。

ねらい:
 日本はどうすべきかを考えましょう!!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最近のICT活用技術は目覚ましい進歩を遂げ、
あらゆるビジネスのあり方が変わっていこうとしています。

今まで目についているのは、

 ネットを通じての売買(アマゾンや楽天)
 情報流通(グーグル,SNS)
 スマホ・GPSを活用した各種案内
 ビッグデータ・過去実績を活用した販促

など主に消費者向け(B2C)の世界でしたが、
B2Bのビジネスの世界でビジネスへのICT活用が
本格化しようとしています。

その波のうまく乗ろうという動きが世界中で始まっています。
ドイツは、それを製造業の世界で実現しようとしています。
それが、インダストリー4.0(第4次産業革命)です。

産業革命の世代で表現するので、
「第4次産業革命」と言っていますが、
この動きはもはやあらゆる世界で起きている
ICT技術を活用するビジネス革命なのです。

新しいビジネスがどんどん生まれてきています。
その新しいビジネスモデルで、
今までのトップ企業があっという間に凋落するということが
起きてしまうのです。

古くは出版業界、広告業界、電話業界
小売(消費者向け販売)業界
ICT活用と縁遠かった製造業もその仲間に入ってきています。


第4次産業革命と言いますが、これまではどうなっているのでしょう。

 産業革命の世代とリーダ国


内容
リーダ
第1次産業革命

18世紀英国に始まった蒸気機関の利用による機械化

イギリス
第2次産業革命

20世紀初頭に始まった電気エネルギーを活用したフォードのベルトコンベア方式に代表される大量生産方式
アメリカ
第3次産業革命

1970年代に始まったコンピュータ・電子技術(工業用ロボット等)の活用による生産自動化

日本
第4次産業革命
工場内外の生産設備・製品・人間が相互につながるIoT産業革命

ドイツ?
アメリカ?
日本?

ドイツは、製造業の覇権を目指しているので、
産業革命と言っていますが、
この第4次は、もはや産業の革命ではありません。

第3次のトヨタのシステムも企業間連携システムでしたが、
人間が繋いでいるシステムでした。

それに対して、第4次産業革命は、モノとモノは当然として、
企業間も完全に自動でつなごうという考えです。

その結果、第4次の特長は、
マスカスタマいぜーション(個別受注生産でありながら、
自動化大量生産方式を実現する方式)なのです。

ドイツは、下表のように
今でも製造業分野で強みを発揮していますが、
ICT技術で急激に変化していく環境変化の中で
トップ企業の位置を確固たるものにしようということです。

世界ランクのドイツ製造業
業界
ドイツの代表企業
世界シェア
自動車
フォルクスワーゲン
1位を争っている
重電
シーメンス
2位
化学
BASF
1位
医薬
バイエル
2位


以下の表は、2015年5月に刊行された日経BPムック
「まるわかりインダストリー4.0 第4次産業革命」の内容を編集したものです。
ドイツは官民一体でこれに取り組んでいるのです!!

インダストリー4.0の概要
項目
内容
1.インダストリー4.0
の「目的・ねらい」
(1)目的
 インダストリー4.0は、ドイツの製造業が事業競争力強化を目的に打ち出したコンセプトである。

 生産工程のデジタル化・自動化・バーチャル化のレベルを現在より大幅に高めることによりコストの極小化を目指す。
 スマート工場(自ら考える工場)の実現

(2)ねらい
 ドイツは、狭い国土・大きくない国内市場(人口8000万人)・高い労働力(高福祉国家)であるため、高付加価値製品に特化する必要がある。

 現在は東欧の安い労働力を利用している。生産工程の徹底的自動化によって製造業の脱労働力依存を実現するのがねらいである。

 スマートビジネス先進国の米国(アマゾン、グーグル、フェイスブック)に対抗することもねらい。それを自国が強い製造業で実現する。

2.インダストリー4.0
の内容
 工場内外の生産設備や製品、人間が相互に繋がり、「考える工場」を実現する。


3.インダストリー4.0
の対象範囲
 産業革命と言っているが、この革命は工場内に留まらない。サプライチェーンを通じて消費者まで繋がる。

 それは、インダストリー4.0の主導者がSAP元社長であることからしても自然のことである。

4.インダストリー4.0
の実現技術
 ロボット

 M2M(マシントゥマシン。部品や素材にもセンサを持たせ、設備機器・システムと交信できる)

 3Dプリンター(この技術は第3次に属するものであるが、ニーズに合った迅速な試作の実現と材料費の削減にとって非常に重要な技術である)

 IoT(センサー)
 
 人工知能

 その特徴は、サイバーシステムと物理的なシステムの融合体(CPS、Cyber Physical System)である。
 
 「センサーや自ら考えるソフトウェア、機械や部品の情報蓄積能力、相互コミュニケーション能力によって生産工程を高度化する(カガーマン氏)

 ネットによって結合されたサプライチェーンを形成する企業はバーチャルクラスターを形成する。

 このサプライチェーンはほぼリアルタイムで自動化され最適化される(在庫→部品展開→部品発注→生産→移動→在庫補給→決済)

 工場のあらゆる場所に設置されたセンサーが機械の異常やパフォーマンスの低下を検知し自動的に補修する。
 
 これらの技術の活用で、システムの統制が中央集権型から分散型へ移り作業の意思決定が飛躍的に早まる。

5.インダストリー4.0
の開始時期
2009年
 ドイツ連邦教育省は「生産プロセスのデジタル化は個々の企業が進めているが横の連携が撮れていなく標準化が進んでいない」とアピールした。

2011年
 ハノーバーメッセで、経済界、連邦政府、学会の代表が官民一体で研究開発プロジェクトを始める共同声明を発表。その中で初めてイノベーション4.0という言葉を使用した。

6.インダストリー4.0
の創始者・推進者
 ドイツはインダストリー4.0に官民一体となって取り組んでいる。ドイツ製造業の主力企業はすべて参加している。

 ドイツ技術科学アカデミーの会長ヘンニヒ・カガーマン氏(元SAP社長)が立役者

 シーメンスがフォルクスワーゲンと組んでスマート自動車工場を開発中。

 ボッシュではこういうシステムが動いている。

1. Bluetooth端末から「従業員」の情報を「生産ライン」に送る。
2.   「製品」がRFID(ICタグ)で、自分の組み立ててほしい姿を「生産ライン」に送る。
3.   「従業員」のスキルや属性、組み立てる製品の種類に合わせて「生産ライン」が変化する。




米国はインダストリー4.0と言っていませんが、
GE、シスコシステムズ、インテル、AT&T
2014年4月に
インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)」
を立ち上げました。

現在米国が強いICT活用を
B2CからB2Bまで広げようという目的です。

GEのイメルトCEOは日経新聞のインタビューに応じて
こう言っています(日経新聞2015年7月18日)。

選択と集中で金融ビジネスを縮小し(約30兆円売却)
製造業を強化する、という発言のあとこう述べています。

この内容は、本項で言うインダストリー4.0の本質を
簡潔に言い得ています。
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過去20年間、
デジタル革命は主に消費者向けインターネットの分野が
けん引してきた。
企業で言えば、アマゾン・ドット・コム、グーグルなどだ。

しかし、今後10~20年で、
産業の世界にデジタル化による変革の波が本格的に訪れる。

GEはデジタル化により、
強みを持つ産業分野の「能力の拡張」を目指している。
具体的には生産性の向上だ。

我々が提唱している「インダストリアル・インターネット」は
産業機器をネットワークで結ぶことで、
資産効率を高めることができる。

競合はシーメンスや日立製作所だけでなく、
ソフトウェアやベンチャーなどあらゆる企業に広がる。

GEは接続産業企業(connected industrial company)
を目指す。

リアルとデジタルの交差点に立ってデジタル化と同時に
製造業をさらに進化させ、
新たな時代で勝利する。
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中国では「インターネット・プラス」と言って力を入れ出しています。

日本も負けじと経済産業省が、
先進的IT活用を促進しようという意図で
「攻めのIT経営銘柄」を選定しましした。
http://www.meti.go.jp/press/2015/05/20150526003/20150526003-2.pdf

ところが、応募企業が少なく、
それほど先進的ではない事例も含めて
ようやく18社になったという状況です。

この18社の中では、
小松製作所の
建設機械にセンサーを組み込み保守サービスを高度化」
した事例が先進性でダントツです。

アメリカのGEのようなリーダシップある企業が
日本にはないとすると、
ドイツにならって
官民一体の取り組みをもっと進めないといけないのでしょうか。

ほんとうに何とかしないといけません!!


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そこで、その一助になると思われる
インダストリー4.0を支える人材、
より具体的にはICTを活用した新事業の企画のできる人材
の画期的育成法を開発しました。

そこで用いる手法等は既存の練れたものです。
別項「新事業創造支援者を育成しませんか」をご参照ください。

http://uenorio.blogspot.jp/2015/08/blog-post_3.html



シベリア抑留記「生きて帰って来た男」

【このテーマの目的・ねらい】
目的:
 名著「生きて帰って来た男」をご紹介します。
 シベリア抑留に関する情報を多少提供します。
 ソ連はこれまで思っていたほどワルではないことを
  お話しします。

ねらい:
 「生きて帰って来た男」をいろんな意味で、
 読んでみてください。

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小熊英二さん著「生きて帰って来た男」は
主人公の生い立ちから、戦争、戦後のことを記述した
壮大なドキュメンタリーです。

これは素晴らしい本です。
私は三つのことが心に残りました。

シベリア抑留の事実
不当な司法判断
本人の素晴らしい記憶力、著者の文筆力

1.シベリア抑留の事実

飢えと過酷な労働と厳寒を乗り越えて
帰国できたことは奇跡であるように言われてきました。

「生きて帰って来た男」という書名だということは、
生きて帰ってくるのは希少だということです。

「生きて帰って来た男」は、
著者小熊英二さんの実父小熊謙二さんです。
小熊謙二さんは1925年(対象4年)北海道生まれでした。

私の叔父三田和夫もシベリアからの引揚者でした。
叔父は1921年・大正10年生まれで、
大正3年生まれの母とは7年違いでした。

昭和18年、北京大学医学部教授だった父が結核になり、
一家5人は、
世田谷にあった母の次兄の家に居候しました。

本書に登場する「人物」もずい分結核で亡くなっています。
ご承知のように当時は不治の病でした。

その「居候」の頃、読売新聞社勤務を始めた和夫叔父も
その家にいました。

私は5歳くらいだったと思いますが、
その叔父を「トントンおじちゃん」と呼んでいたようです。
叔父が2階に住んでいて
階段をトントンと上り下りしたからです。

その叔父はその後戦争末期に応召したのでしょう。
そして運悪くシベリア抑留のめに遭ってしまいました。

叔父から
詳しくシベリア時代のことを聞いたことはありませんが、
「よく生きて帰ってこれた」という印象は持っていました。

叔父の著書「最後の事件記者」をみても、
シベリア時代の見聞録のようなことは書いてありますが、
重労働で死ぬ思いをしたというようなことは書いてありません。

叔父はソ連のスパイにされそうになったこと、
実際にスパイになって帰国した人がたくさんいたことなどが、
叔父の他の著書「新宿慕情」に書いてありましたが、
本題から外れますのでこれ以上は触れません。

叔父は、ソ連のスパイ活動を命を賭けて取材・スクープした
「幻兵団事件」で一躍有名になりました。
私はこの叔父にはずい分お世話になりました。

多くの日本国民は
ソ連はひどい国だという印象を持っています。

1945年8月9日、
広島原爆投下で日本の敗戦が濃厚となったのを確認して、
宣戦布告し一方的に進軍してきた、と言われています。

たしかにそのとおりですが、
ヨーロッパ戦線でドイツが5月8日に降伏しており、
戦線を日本に向けたという面もあるのです。

敗戦直前の対ソ交渉において、
日本政府や関東軍が捕虜の労役提供を申し出ていたという
資料も発見されています。
(シベリア抑留が起きたのは日本が悪いのではないか!!)

それと、当書の記事ですが、
各国の捕虜等の死亡率が記載されています。

第2次大戦で
ドイツ軍の捕虜になったソ連軍の将兵570万人中
前線での虐殺や悪待遇で200万人~300万人が死亡
死亡率6割  ドイツ最悪!!

ソ連軍の捕虜になったドイツ軍の将兵330万人中
死亡者は100万人で死亡率は約3割

日本軍の捕虜になった英米軍の死亡率は27%、
(日本軍もそんなに悪いのか!)

それに対して
シベリア抑留の日本軍捕虜64万人中、
死亡者は約6万人といわれ死亡率は約1割。

印象では半分くらいが死んだという感じでしたが、
ずい分違うのですね。

当書にも、思いやりあるソ連軍将校の言動が
紹介されていました。
(ソ連にもいい軍人がいるのだなー)

なぜシベリア抑留・ソ連の印象が悪いのでしょうか?

「暁に祈る」事件など、
陰惨な状況があったという報告が
事実を過大に歪曲したという面があったのでしょう。

「暁に祈る」の死に至るリンチ事件があったのかどうかは、
これまた朝日新聞の誤報説もあり定かではないようです。

それと戦後の一貫した米国管理下にあっては、
ソ連は悪者ですからね。

私は第2次大戦の日本の3大悲劇は、

1.沖縄を含む南洋・太平洋諸島での玉砕・敗戦
2.広島・長崎の原爆
3.シベリア抑留

だと思ってきましたが、
それほどでもなかったのですかね。

2.不当な司法判断

戦後、紆余曲折あり、
シベリヤ抑留者に対して「慰労金」を出した際に、
国は日本人以外の請求を認めなかったのです。

戦争中、日本に併合された朝鮮や中国満州人が
日本軍に徴兵されシベリア抑留のめにも遭っています。

ソ連軍の捕虜になった朝鮮人元日本兵は
約1万名いたとされているようです。

ところが、当書の主人公も加担した韓国人らの損害賠償と
国の公式謝罪の請求に対して、
日本の裁判所は以下の理由で認めませんでした。

1)損害賠償については
 「国民のひとしく受忍しなければならなかった戦争被害」
 だから補償できない。

 日本政府は、
 国民に対しては戦時補償は一切行わない
 という方針を貫いてきました。
 「戦争の被害は、国民が等しく受忍すべきものである」
 という考えからです。

 しかし、韓国人など外国人の場合は
 ひとしく受忍しなければならない国民に該当するのでしょうか。
 その後もその人たちに日本国籍を認めていないのですよ!!
 この論理はおかしいです。

 答えありきの司法判断は情けないですね。
 頭が悪すぎます。

2)公式陳謝の要求については「立法府の裁量的判断である」
 と判決しました。
 これはそうかもしれません。

3.本人の素晴らしい記憶力、著者の文筆力

本書の記述の確からしさ、文章の素晴らしさにはビックリです。

著者小熊英二さんはシベリア抑留の当事者のご子息で、
著者が父上謙二さんから聞き取りをした内容が
本書の内容になっています。

謙二さんは引き上げ後、職を転々としたあと、
スポーツ用品店を経営しそれなりの生活ができるところまで
成功されました。

 
そのご子息英二さんは東大農学部を卒業され、
東大大学院総合文化研究科国際社会科学専攻で
博士課程を修了されています。
現在は慶応大学の総合政策学部の教授です。

謙二さんもそれだけの潜在能力をお持ちの方なのです。
シベリア時代のことを記憶だけを頼りに
英二さんに対して語り部になっているのですから。

ここでは詳しくご紹介しませんが、
戦前戦中戦後の生々しい「事実」が記述されています。

その一つは、ご長男を不慮の事故で亡くされたことです。
会社の慰安旅行に奥様(英二さんの母親)と英二さんが同行し、
その間に高校受験で同行しなかった長男(英二さんの兄)が
武蔵村山市の2階建自宅屋上から転落して意識を失い、
厳寒の2月だったために凍死してしまったのです。

奥様はしばらく鬱状態になられたようですが、
ご本人はこういうことにもめげずに立ち直られています。
死に目に遭った人は強いな、と感じるものです。


20歳前後は記憶力がピークなのですが、
それを最近まで覚えている記憶ぶりには脱帽です。
驚嘆です。

謙二さんは19歳の徴兵検査時には、
第2乙種合格の「虚弱児」だったのですが、
90歳でご健在です。

この本は結構長編ものですが、
たいへん詠み易くまた、整理もよくされていて
最近読んだ本の中では記述法は最高です。